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事件、王宮へ2

「おお・・・・我が君・・・我が王・・・・」

傍に居る王弟の姿を完全に無視し魔女ガルーナは、目の前に立つ己の父にして

最愛の主の存在に酔いしれた。

「おお・・・父よ魔王・・・我の愛しい人・・・・。」

空中からスイッと魔王の傍に近付くと、その首に腕を絡めた。

魔女の腕に触れた、魔王の首筋の髪が、サラリと音をたてて

一筋背中に零れる。


間近に迫る魔女の紅い艶めいた唇に何の反応さえも返さない魔王に、

魔女は、口付けを落としながら

首筋、腕・・・胸へと、愛おしげに、愛する魔王の身体をその手の平で弄ってゆく。


「・・・・離れろ・・・・」

自らの身体を絡み付けるように魔王に絡めていた魔女は

頭の上からする低く小さい美声を聞いた。


「・・・・・!!・・・・どうして・・・?あんなにも我の事を慈しんでくれたでは

ありませんか・・・・我が君・・・あの人間の女が現れてから、あの子供が生まれてから

我を愛してはくれなくなった・・・・あんな子供より我の方が・・・・」


「能無しはいらない・・・・」


「我の方が王を愛して居ります!!・・・・我の方がまだ勝てる!!

例え潜在的な魔力の量で我より上の才能を示したとしても・・・・

あんな人間交じりよりも我の方が、お役に立てまする・・・!」


「・・・・お前に言い渡しておく・・・・ここに来ているサフラの姫には手を出すな・・・

後は好きにしていい・・・・」

必死の魔女の言葉に、眉を動かす事すらなく、

まるで、何も聞かなかったかのようにただそれだけを言って

魔王はその場を立ち去ろうとした。


「!!・・・サフラ?!・・・またもやあの人間の国に・・・あの女の国に執着ですか?

・・・・そういえば!!・・・・再びあの国の姫を娶ると・・・・あの子供ような物をまた

作られる気なのですか?!」


・・・・ふと・・立ち去りかけていた魔王の足が止まる。

自分の言葉が聞き届けてもらえたのかと

魔女は微笑みを浮かべ近付こうと一歩進む・・・

それが魔女ガルーナの、そして傍で忘れられていた王弟の最後だった。


「能無しは能無しなりに役に立つと思いわざわざ警告しに来たものを・・・・

・・・あの子供は本当に役に立つ、私の力と、巫子の血を受け継いだ

最高傑作・・・そしてサフラの姫は必ず手に入れる・・・・

私のかわいい小さな花嫁・・・・・」


自らが消し去った娘への慈しみをカケラも見せる事無く

だた、自分の作り上げた『最高傑作』と、

『サフラの小さな花嫁』に対して、最後に小さく微笑みながら

魔王はその場を立ち去った。









師、シアリス=イーズは教えてくれた。

世界の何処の国よりも魔族に対して鉄壁の守りを持つ

巫子王国サフラの王宮で、ルナとサラの両親である

王と王妃の身体は焼け焦げ、肉片となってしまったものが、

血溜まりの中に散らばっていたと・・・・

恐らくその仕業は世界中にでも何人居るかという

魔族の王クラスの力によってだろうという事。





「俺が殺したんだよ・・・・殺したかったから・・・・殺したんだよ・・・

サラ・・・・」

妹姫の無事を父と母に祈る幼き女王サラ・ルージュ=サフラの横で

小さくルイドはそう囁いた。


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