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皇子リュクシス2

「女王と、姫様は、まだおもどりにならないのか?」

西のエーティアの南東、東のモルドルからでは南西

国土の十分の一にも及ぶ美しい湖を中心に持つ

ここ巫子大国サフラの王宮では、

主の居ない王座の前を落ち着き無く行ったり来たりする

一人の白髪白髭の老人が、在った。


クスクス・・周りでは、妖精達が、その様子に、

微笑みを浮かべながら

飛び交っている。


「・・・あの・・・」

王座に続く階段の下に控えていた騎士の一人が、

一歩前に出ると、スッと跪きもう一度呟く


「あの・・・よろしければ・・・私が、・・私が、

お迎えにあがりたく思うのです・・・が・・・?」

静かにそう言葉を発すると照れたように

謁見の間の床に敷き詰められた深緑の

絨毯へと、瞳を落とした。

その動きに沿ってその騎士の

青味を帯びた柔らかい髪が、風を含んで

フワリと揺れるのを見ながら老人は、考え込んだ。


「ふむ・・・」

しばらくその白く長い自分の髭を触っていたが、


「・・では、・・近衛第11部隊筆頭、

シアリス・イーズよ・・・そなたに女王と姫様の

お迎えを命ずる。」


「ありがたき幸せ」

感極まるといったシアリスの様子にまさか

下を向いたまま舌を出しているとは思わずに

老人は、満足そうに頷いた。







(なんなんだろう・・・)

ルナは、困り果てていた。

リュクシス皇子が、何の為に話し掛けてきたのが

さっぱり分からなかった。

まさか私の正体が、ばれて?

姉上の元婚約者であるリュクシスの兄は、ものすごく

プライドの高い、皇国の正室腹に生まれた自分に

誇りを持っている人物だと聞いた。

私何か仕返しされるの?


「見事な太刀筋でしたね・・・。」

2人は、競技場から少し離れた

控え室の建ち並ぶ建物の廊下で、

肩を並べ、窓際から見える、場外の植木をしばらく見つめていたが、

突然のリュクシスの声に、いろいろ想いをめぐらしていたルナは、


「・・え・・・?」

と、慌ててそちらを見る。

リュクシスは、金の髪を風に乱されながらもそのままに

マリンブルーのその瞳でじっとルナの方を見つめていた。


「美しい・・・太刀筋でした。」

褒められたからか、それとも澄みきった瞳で

リュクシスにじっと見つめられたからなのか

思わず覆面の下で顔が熱くなるのを感じながら

ペコリと礼だけはした。


「やなかんじ~ぃ~ルナの馬鹿~ん。」

リュクシスの反対側で、ルナの隣の壁にもたれ掛かっていたカルは、

リュクシスに見つめられて俯き加減になっている

ルナの横顔をチロッと見ながらカルは、

口を尖らせしかめっ面をしてボソッと呟くと、ソッポを向いた。

いちようリュクシスには、聞こえないように小声ではあるが、


「よろしければ、もう一度見せては

いただけないでしょうか?・・ルーサ殿・・・」

癖なのか又、顎に手を当てると申し訳なさそうに

リュクシスは、そう呟く。


「わ・・・わ・・オレで良ければ・・

よろこ・・」

喜んで、そう答えようとしたその時





「姫様ー!!姫様ー!!」

ルナを探している青味を帯びた黒髪の青年の姿が

目の端に飛び込んできた。


「カイルここで、姫様って呼ぶのは駄目よ。」

側には、姉上のサラまで付いている。


「お忍びの鉄則は身分を隠して時には

偽名なんて使ったりする事なのよ。」


「そうでしょうか?私は、その場所が、

何処であろうと姫様は、姫様であらせられし、

女王は、女ぉ・・」

思わずカイルの口を両手で塞ぐサラ。

今まで指一本も触れていなかったとまではいかないが、

不用意にここまで接近することはなかった。

そのサラの柔らかく美しく育ちつつあるその指、手のひら、

近くにある不思議な色合いの鳶色の瞳、とても神秘的な・・・。

風に吹かれてサラの艶やかな長い髪が、

カイルの伸ばしきった手の甲を掠めてゆく。


ドキドキドキ・・・カイルの心臓が、激しく脈打っていた。






「姫・・・様・・・?」

リュクシスの何が何だか分からないというような

ルナは、声に慌てて視線を戻し、


「これは・・・あの・・・」

ルナは、つい必死で言い訳しようとしてしまった。


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