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7.旅立ちの

 翌朝、ソノラに最終確認を取る。


 これからしばらく、代表守護騎士を目標として日々修練を受け、師と共に生活を送る事になる。これは、どの元素の使い手であってもおそらく同じだ。


 だが、ソノラの体内には火の元素と水の元素が存在している。今現在、自在に感じ取り、操作できるのは火の元素である事はダンジョンで確認済み。


「俺が師になるってことは、火の元素を極めなければならない。そうなると、ソノラの中にあるだろう水の元素がどう影響するのかを知らなきゃならん」

「はい……」


 影響と聞いて、そっと自分の右眼に触れるソノラ。


 風呂での出来事、目に走っただろう痛みはなぜ起きたのか……湯とは、水と火の元素の融合の代表と言ってもいいくらい、わかりやすく身近なものだ。


 ソノラの体内にある元素と同じ状態、理論上は、馴染みはすれど、反発はしない、はず。


「このまま普通の修練をしようとは考えていない。俺にとっても、初めての弟子で初めての存在だ、大事にしたい。だから本格的に始める前に、水の元素神殿(エレメテンプルム)に行って専門家に話を聞こうと思ってる、いいかな?」


 専門なんて言ったが、水の元素の代表守護騎士のことで、ハーフの専門家というわけではない。だが、両元素の代表が意見を交換し合うことで、ソノラにとっての最善がなにかひとつでも、見つかればいいと思っている。


「お師様……やはり、あなたは優しいお方ですね」

「騙されんじゃないよ〜ソノラ?この年まで女っ気も無い、ましてや子供を育てたこともないんだ。なんにも知らなくてどうしたらいいかわからないよぅ〜〜って昨晩あたしに泣いてすがってきたんだよ?」


 助言は乞うたかも知れないが、泣いてもないし、すがってもない!


「マティーニさんの事を、ママとしても師としても大切に思っているからできることですね?ふふ」

「……ふんっ」

「ママも、ソノラには勝てなさそうだな?」

「うるさいね!ソノラ!出発前に体を診てあげるからこっちにおいで!」


 ママは元補佐守護騎士。補佐という肩書がある様に、体内の元素の状態を見たり、正す技術を持ち合わせ、手助けをするのが得意。

 もちろん、あの性格を見ればわかるが、戦闘もお手の物。口調に違わず、豪快で爽快にこなしてきたらしい。


 俺も、その正す技術で助けられたことは何度もあったからな。その手は優しくて、温かくて……本当の母の様だと、熱く感じたものだ。


「レイル、ちょっといいかい」


 ソノラをフランメに預け、ママの話を聞く。


「7:3だね」

「バランスが崩れてるってこと?」

「今すぐどうこうじゃないとは思うがね……あたしが診た限りでは、あまり良い状態ではないのは確かさ」


 火の元素が7とすれば……俺がダンジョンで見せた、沸騰させる状態に近くなりかけているかも知れない。


「目以外にも、痛みがある可能性がある。なのに、頑なに大丈夫としか言わないのさ……それを強さとは言わないというのに。レイル、できるだけ早くここを出るんだ」

「ママも診ることだけしかできないってことはそういうことってわけね」

「中がダメなら外から。多少なり楽になるはずさ……行っておいで」


 幸い、ここは境目に近い。少し歩けばすぐに水の元素に満ちた大陸に入るだろう。


 フランメと戯れて、楽しそうに笑っているソノラ。


「わ?!」


 背後から近寄り、思わず抱きしめてしまった。


「めいっぱい、笑えるようにしてやるからなソノラ」

「は……い……?あっ!ふふふふふ!!」

「ゥブルルゥッ!」

「……痛いよフランメぇ〜」


 確かにな?小さな子に背後から近寄って抱きつく様なおっさんが安心安全な人物にゃ見えないだろう。だからって、頭にかぶりつくこたないじゃん。


 噛み跡とヨダレまみれの頭を布で拭いながら、出発の準備を整える。

 村に戻ってから着替え以外の荷解きをしていなかったからな、手間はなかった。食料に関しては、ママが用意してくれたし……ではでは?


「別れの挨拶は?」

「マティーニさんに伝われば大丈夫です!」

「はは!わかった、すぐに駆けるからしっかり掴まってるんだぞ!」

「はい!マティーニさん!いってきまーす!」


 元気いっぱいに、見送るママに声をかけて手を振るソノラ。


 力いっぱいに駆け出したフランメの蹄鉄が地面を叩き、軽やかなリズムをとって風を切る。どんどん村が小さくなるにつれ、俺の体を掴むソノラの力も強くなった。


「不安か?ソノラ」

「い……え……少し」

「そりゃそうか……よし、いずれ帰る場所だ!焼き付けるのも悪くないか?フランメ!」

「ヒィィン!!」


 手綱を軽く引き上げ、フランメに伝える。


「いいかソノラ。あの村もまぁ、出来た人間ばかりがいる訳じゃないが……それでも、俺もお前も、あそこが故郷で、待っていてくれる人がいる……ほら、見てみろ?さみしくなんかないだろ?」


 フランメの頭上に転輪が浮かび、胴の両側に炎の翼が美しく羽ばたき、空を駆け上がった。

 地上の道では屋根しか見えなくなっていた……だが、上空からなら、まるっと村の全てが見渡せる。


「スゴイ!スゴイです!!」

「ソノラ……?」

「フランメってスゴイ!!」

「ちょ、暴れない……あぶっ!あぶないから!!」


 寂しいは寂しいのだろうけど……それよりも、フランメが空を飛んだことの驚きと衝撃と興奮の方が勝ったのかな?やっぱ男の子なんだね?


 ……カッコつけた俺、恥ずかしい。

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