6.祭りの後の
【登場人物】
レイル・スプリッター ……主人公(おじ様)
フランメ ……愛馬♀
ソノラ ……男の娘
マティーニ ……ママ
「ソノラの狩猟の成果!まごうことなきひとり立ちの証じゃ!皆、心して食し、祝うのじゃぞ!」
盛り上がってるねぇ……ま、祭り自体は、ソノラを祝うものじゃなく、火の元素神の聖誕祭なんだけどな。縁起がいいだろうって、村で巣立ちの時期を合わせ、期間中にやってるんだ。
にしても……ダンジョンの話を出さないあたり、村人にも黙っていたみたいだなこりゃ……ソノラ、気まずいかもしれないが、少しだけ耐えるんだぞ。
「ソノラ!こっちこっち!」
「は、はい!ふふふ!」
ひと通り顔見せと挨拶を終えたソノラをこっそり呼び出し、肉の皿を持って人混みから離れた。
「ヒィンヒヒィンヒィン!」
「はいはい、ほら」
「フ、フランメって肉食なんですか?」
「そうか、家畜の馬しか知らなかったか。フランメは元素神馬だからなんでも食うぞ」
野生馬や家畜として飼われている馬とは違うフランメは、元素の塊の様なもの。元素神に捧げられる供物に該当するものであればなんでも食べる。
珍しい光景に口を開けたままのソノラは、フランメを見つめたまま動かなくなってる。
「ソノラも食べな?」
「あ、はい!」
「もちろん元素神を祝うものでもあるが、元素使いとしてのひとり立ちを許されたソノラを祝うものでもある、腹いっぱい、食べなきゃ損だ」
「あい!」
頬張っちゃってかわいい。フランメも同じ意見らしい、自然とこぼれる笑みが重なった。
「そういえばおじ様、代表守護騎士なんですよね?今の期間は忙しいんじゃないんですか?」
「そんなことないだよな……式典で色々走り回ると思われがちだが、代表守護騎士ってのは飾りとして突っ立ってるだけなんだよ」
「飾り……おじ様はそんなところに収まる玉じゃないと思いますけど……」
実力ありきで収まってはいるけどね?こういう催事ごとになると、お偉いさんの指示に従うだけ。大人の世界ってのはそういうもん。
「そうだソノラ、風呂での話の続きをしよう」
「……はい!」
「はは!そんなにかしこまるなって」
さて。
元素使いとして、村でのひとり立ちを許されただけでは生きていくことは難しい……と、いうか、やれることがありすぎる。
あの場の勢いで俺について行くと言ったのであれば、俺はソノラから離れる事を選ばなければならない。
「俺が暇を貰ったのは、跡継ぎになる優秀な人材を見つけるため……ソノラ、お前にその覚悟はあるかい?」
「ダンジョンでのおじ様の背中を見て、僕はもう決めていました。断っても、こっそり、ついていっちゃいますからね?」
「〜〜〜っ!その覚悟やよし!どんっと任せなさい!」
おかしいな?俺の方がチョロいような気がしてるが……違うよな?傾げながら柔らかく笑うソノラにゃ誰も敵わんだろ?
「ということは……僕はおじ様の弟子になったってことですよね?」
「一応、そうなる、か?」
「ならおじ様は失礼かも……お師様、ですかね?」
……敵わんわ。
「ヒィン!ヒィン!」
「あは!フランメも嬉しい?僕も嬉しいよ!」
「なんだろうな……歳のせいで涙もろくなったのかな……目の前の光景が尊すぎて直視できない」
美少年と美しい赤いたてがみの白馬が戯れる姿を目に焼き付けた後、実家に戻りママに弟子として、ソノラを預かることを伝えた。
「そいつはいいね、ソノラはお前に並ぶくらいの素質がある」
「実際にダンジョンで見たよ。けどママ、基礎攻撃法無視して上位の攻撃法の本を渡すのは違うんじゃない?」
「え?」
え?って。
無言で立ち上がり、本棚を物色……茶色の表紙の本を持って動かなくなった。
「……問題無い無いだろう?」
「大ありだって……それ、ママがいちばんわかってるはずじゃないか」
「ま、なに?もうお前の弟子になったんだろ?お前が正しく教え直しゃ済むだけの話さ」
「ママ……」
「なんだいその顔?まさかできないっていうんじゃないだろうね?」
圧……俺はどうしてもこの圧には耐えられない。
「やるにはやる……けど、気がかりなことがある」
「水の元素が混ざってることかい?」
「スパッと言うね?まぁそりゃ、知らないはずないか……」
今日のダンジョン同様、ソノラには火と水の元素が体内に存在している。
広い世界だ。気付かれていないだけで、何処かでは稀な存在として生きているだろう。俺だって、実際見たのは初めてだ。
「あたしが知ってる範囲でだがね?ハーフの子に、身体的特徴が出ているのを見たことがない……それに加えてあの元素量だ、なにかあるのかも知れないねぇ」
「女の子みたいなのもそのせいか……」
「それは関係無い」
「はい」
このまま基礎を教え直すにしても、湯に触れただけで片目が痛んだんだ、体内の水の元素が悪さをしない保証は無いだろう。
「火の元素の攻撃法は問題なく使えているのは、ソノラ自身が体内の水の元素を抑えているおかげか?それとも知らずに……違うな、詳細は聞いていないが、あの子は自分の出生を理解している……」
正しい道が見えない。ソノラの体を生かすも殺すも俺次第なんて……最初の弟子としては重すぎる。
「一度、水の元素神殿に行ってみちゃどうだい?あそこもまだ代替わりしてないだろ?お前と同期なら、この話もしやすいだろ?」
ナイスな助言だ!さすがママ!
【豆知識⑥】
報酬
ダンジョンを祓い終えたことへのご褒美です。
なにが出るかはお楽しみ。
ダンジョンの規模が大きい程、その報酬は豪華になります。今回レイルが祓ったダンジョンは小規模であったものの質が良かった為、高価な宝石が与えられました。
基本的に報酬は元素神殿の運営の為の財源や守護騎士たちの賃金として使われる事が多いですが、特別な力を宿した遺物はそのまま使用したり、加工して遺物武具にしたりします。レイルも持ってます。作中、この時点ではまだお披露目してません。




