3.期待値爆上がりの
「よし、フランメはここで待っていてくれ」
「……ヒィン」
「そんな顔しないで?僕、ちゃんと帰ってくるから」
か〜〜っ!そんなかわいい顔で撫でられたら、俺だってデレデレになる!
「にしても……川沿いとはな」
「なにか、まずいのですか?」
ダンジョンができる場所やその構造には大体の決まりがある。『元素神』……神と呼ばれてはいるが、そう呼んでいるのは人間。神も人間と同じ構造を模しているものだと想像してるせいで理由は単純に定められた。
病気やケガをしていれば『深層洞穴型』の地を潜るダンジョンができ、精神的苦痛やストレスを強く受ければ『階層上昇型』の突出したダンジョンが出来上がる。
いずれも同じ『障り』であることには変わりがないが、難易度としては後者が上。今回目の前にあるのは、前者の『深層洞穴型』なのだが……できた場所があまりにも悪い。
「本来なら火の元素の障りだけになるはずのダンジョンが、川……つまり、水の元素の力の影響がある場所にできたここは、内部の魔物も変化していて手強くなってるはずだ」
「ゴ、ゴクリ……」
く〜〜っ!声に出してゴクリとか言うことあるのか?!可愛いが過ぎるぞソノラ!
「そうおびえることはない!なにせ、守護騎士であるこの俺がいるんだ、心配ないし、無理はさせない」
俺がやると言ったからな、確実に全うはする。
「が……少しは手伝ってもらうからな?」
「もちろんです!助けていただきっぱなしでは、僕としても申し訳なく感じています……がんばります!」
短剣を構える姿も可愛い。少し不思議さを感じさせるのは、右眼を隠している布のせいだろう。触れていいものなのか……でも、当たり障りない理由なら、外した方が視野が広がる。
「ソノラ、その目隠し布はなんだ?」
「あ、えっと……小さい時に火傷をして、痕が残っていて……」
「そうなのか……きゃわいい顔に……かわいそうに」
「きゃわ……?」
頭を撫でてやった。さぞ痛かっただろう……辛いことを思い出しさせてしまっただろうか。
片目であることのハンデがあるのに、よくその年で狩猟に名乗り出たものだ。礼を損じない口ぶりと態度……村の人間に囃し立てられ、そそのかされたってわけじゃなさそうだし。
ソノラ自身、自分の元素の力に自信が――……ううっ……心の声とはいえ、オヤジギャグが自然に出るようになったのか俺は……。
「んっぅゔん!ソノラ、元素使いの勉強はどの程度しているんだ?」
「えっと……ほとんど独学なんですけど、体内元素の放出までの工程は毎日練習しています。基礎攻撃法も……まだ案山子以外に試したことはありませんけど……」
「あ〜……オオイノシシで実践のつもりだったか……すまん」
「いえ!助けていただけなかったら轢き殺されて僕がメインディッシュでしたし!」
なかなかグロいことを言いなさる。まぁ、その機会を奪ったのなら、ダンジョンを祓う事になった今、この時……試すにはちょうどいい。
「お、おじ様っ!」
曲がりくねった暗い洞穴の先に光る眼光。まだ低層とはいえ、ふたつの元素が混ざった魔物は能力も上がり、気性も荒く、攻撃的に進化する。例えそれが、ダンジョンに生息する最弱であろうとも。
「慌てなさんな……独学だろうとなんだろうと、吸収した知識のすべては己の糧となる。自信を持って前に出ろ、火の元素使いとしてこの地に立とうとするつもりがあるなら……それは最低条件だ」
頷いて、今度は口に出さず息を飲み、ソノラは向かって来る魔物に向かって構えた。
「ふぅ……ひとつずつ、確実に……よし!」
俺は後ろで待機……少し震える背中を支えるつもりで迫る敵を威圧する……頼む、怯んでくれ。
「……いきます!【死を隠す業の炎】!!」
「はぁーーーーっ!?」
基礎攻撃法って言ったよな?!俺でも滅多に使わねぇんだぞそんな恐ろしいヤツ!俺が怯んだわ!
「進行方向もついでに……ってあれ、おじ様?僕……やりすぎましたか?」
【死を隠す業の炎】はその名の通り、死体すら残さず焼き尽くす高威力の攻撃法だ。
基礎ではない。
それ、基礎じゃない、ソノラ。
「あ、はは……凄いけど、な?今度から使う前に教えてね?こういう狭くて道が入り組んでいるところで使うとそれ、危ないから」
「あ……ごめんなさい」
誰から教わったんだ?独学と言えど、参考にしたもんがあるはずだ。
「え?マティーニさんから貰った本にあったんですけど……」
師であり、育ての母である元守護騎士補佐、牛飼いのマティーニ……豪快で大雑把な女性。元素の素質を見出すことには長けている。
かく言う俺も、彼女に押し出されたからこそ、今がある。
つまり。
「素質は十分ってことか」
驚きはしたが、同じ元素使いとしてこの素質……心躍らない訳がない!
【豆知識③】
守護騎士
元素神殿に従事し、守る者たちの事を指します。リーダーとしての立場に立つのは元素神から祝福を受けた者(元素神馬を貰った者)。
レイルがそれにあたり、元老院側(人の間での)からの呼び名は代表守護騎士。単純に体内に宿している元素量から選ばれてる感じです。
部下に当たる守護騎士は各神殿に200人前後いたりいなかったり。
主な仕事は『障り』から発生するダンジョンを祓うこと。時に別の元素の守護騎士と協力して祓ったりします。




