2.相変わらずの
【登場人物】
レイル・スプリッター ……主人公
フランメ ……愛馬♀
ソノラ ……男の娘
村長 ……村長
無事村に着き、井戸前の広場で獲物を下ろした。
デカさに驚いてんのか、俺に驚いてんのか……こそこそ話ながら人が集まりだした。人だかりの中から前に出た老人、白髪が増えちゃいたがいちばんの知った顔だ。
「やっ!村長、久しぶり」
「んっ?うん?誰?」
云年ぶりの帰省とはいえ、毎年村長宛に寄付金とか物品やら贈ってるはずなんだが……やはり見た目か。
この村を出たのが14の時、あの時の若々しさと輝かしさはない、と……知ってるわ!
「レ、イ、ル!……レイル・スプリッター!牛飼いマティーニの拾い子のっ!」
「え〜〜〜〜っ!すっかりおじさんになったもんだの?!」
「そりゃ25年も経ちゃそうだって……同じ様に年食ってるだろ村長も!」
「はっはは!変わり果てた姿に驚きじゃなぁ!」
おい村長、変わり果てた姿っつうのは、大体が死人に言う言葉なんだよ、やめてくれ。
「ふむ……」
実家に行く前に、村長の家で森での出来事の報告をすることになった。浮かない顔をする村長……もちろん、美少年のソノラも顔を伏せたままだ。
「あの大きさは確かに大人でも骨が折れる獲物じゃが……しかし……どうしたものか……」
高齢化が進んでいる故郷の村。
健康な子供で、元素の素質持ちの子が生まれたのは、奇跡的なことだったらしい。
蝶よ花よと、村人みんなに愛情を注がれながらも甘えず、わがままにもならず、強く真っ直ぐに育ったソノラ。
「なぁ、村長。俺ですら14の時だったんだ、ソノラにゃまだ早いんじゃないか?」
「おじ様……でも……」
「そうもいかん」
な、なんだ?のほほんとしてると思ったら村長のやつ、急に睨んできて……。
「小さいが……近くにダンジョンが出来たんじゃよ。ちょうど祭りも近い、ならば、元素使いの初仕事としてやってもらおうと思って早めたのじゃ」
「はぁっ?!」
これは、キレていい。
「俺は知らねぇぞ!元素神殿への報告義務はどうした?!」
「や、ほら……レイル、お前を輩出した村の人間ならあれくらいは……いけるじゃろ?」
勢いよく、割れんばかりの力でテーブルに拳を叩きつけた……過信が過ぎる。
「ダンジョンってのはな?『元素神』の障りからできた場所だぞ?!素人が単独で乗り込んだところでただ死にに行くだけ……ソノラを殺す気か!」
その障りを祓うために、俺が幾度ダンジョンに潜ったと思ってるんだ。見た目の大小なんて、関係ない。森にいる獣相手なんかとはまったく違う、凶悪な魔物の巣窟なんだ。
そこに、ソノラを向かわせるつもりだった?
ふざけるな。
「俺が祓う。場所を言え」
「おお!それはありがたい!守護騎士様が対応してくれるなら安心じゃ。ソノラ、すまんかったの」
「いえ……僕も簡単に考えていました、ごめんなさいおじ様……」
うっ……村長が考え無しなのは昔から変わらないのは、どうしょうもないが……ソノラまでその影響を受けてしまうのは遺憾だ。
だが、このまま俺が言葉で責めても、変わらんだろうな。期待し過ぎている大人の勝手の餌食になって、駄目になる。
それに、理由はどうあれ獲物を盗ったのは俺である事は、事実。と、すれば……これくらいの譲歩はしてもらわないとな?
「村長、ソノラを連れて行く。ダンジョンを祓い鎮めることをもって、元素使いとしてのひとり立ちを認めてくれ」
思っても見なかったんだろう、村長もソノラも驚いてる。
「それは、さすがに……村のしきたりが……」
「報告義務を怠ったこと、忘れてんじゃないだろうな?元老院の爺さんたちに報告してやってもいいんだぞ?」
はは!さすがに苦い顔したな?そりゃそうだろう、長としての義務、元素を宿せなかった人間の義務を黙ってたんだ。実質的な権力を持っている元老院に知られれば、村はもちろんだが、自分の立場も当然危うくなる。
「そんな脅しのようなことをいうて……さすがに、故郷を売るようなことをするつもりはないじゃろ?だから自分から申し出た。さすが我が村の誇りじゃな……いいじゃろう。ソノラよ、レイルと共に行ってきておくれ。無事に帰って来ることで、認めることとしよう」
「……はいっ!」
手八丁口八丁……自分の非を認めず、よく言うな?
私利私欲で、我が物顔で、傲慢ないやらしいさを分かりやすく表に出す人間じゃないが、したたかに自分の権力を誇示したがり、自分の我を通そうとする。表向きの優しさが、そのままの優しさであればいいのに……こんな子供にゃ、村長の狡猾さには気付かないだろう。
かく言う俺も、騙された口だ。
だからこうして、有望かもしれない元素使いの希望に満ちた輝く瞳を、俺は沈ませたくはない。
【豆知識②】
元素神
四大元素を司る神様の総称です。
この世界を維持している力の根源を大地に根付かせ創造した神聖な存在とされ、崇められています。
元素神殿《エレメテンプル厶》
根源の形はそれぞれの元素で変わりますが、いずれも神殿に納められています。年に一度、神殿の門が開かれ、お参りができます。目に見えての信仰があることで元素神の力が保たれているというわけですね。




