燻製肉という革命
石鹸は売れた。
びっくりするほど売れた。
雑貨屋の店主が言った。
「兄ちゃん、もっと作れ」
「そんな売れました?」
「一日で完売だ」
エリックとシェリーは顔を見合わせた。
「すごい」
「すごいな」
だが問題があった。
「油が足りない」
石鹸には油が必要だ。
肉屋の脂だけでは追いつかない。
そこでエリックは考えた。
「じゃあ別の商品作ろう」
「また何かあるの?」
「ある」
エリックはニヤリと笑った。
「燻製」
シェリーは首をかしげた。
「くんせい?」
「煙で保存する肉」
「干し肉じゃないの?」
「もっと美味しい」
⸻
肉屋に行く。
「安い肉あります?」
店主は奥から持ってきた。
「この硬い肉なら安い」
「買います」
「料理できるのか?」
「たぶん」
「たぶん?」
⸻
街の外。
エリックは木箱を作っていた。
シェリーが見ている。
「何それ」
「燻製器」
「料理なのに家具作ってる」
「料理は科学だから」
「意味わからない」
⸻
箱の中に肉を吊るす。
下に火を置く。
湿った木を入れる。
煙が出る。
「おお」
煙が充満する。
数時間後。
肉を取り出す。
いい香り。
シェリーの耳がぴくぴくした。
「いい匂い」
「食べてみ」
一口。
シェリーは固まった。
「……」
「どう?」
「なにこれ」
「美味しい?」
「すごく美味しい」
目が輝いていた。
「干し肉より柔らかい!」
「保存も効く」
「これ売れる!」
⸻
市場。
肉屋の前で売る。
「燻製肉!」
誰も知らない料理だった。
客が一人来た。
「なんだこれ」
「煙で熟成させた肉です」
「怪しい」
「一口どうぞ」
食べた。
客の目が見開いた。
「うまい」
すぐ売れた。
次々売れた。
一時間で完売。
肉屋の店主が言った。
「兄ちゃん」
「はい」
「うちと組まないか」
「え?」
「肉は出す」
「いいんですか」
「こんな売れるならな」
シェリーが小声で言う。
「商会っぽくなってきた」
エリックも思った。
順調すぎる。そして異世界テンプレは、
だいたいここで来る。




