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異世界ものづくり商会記 〜趣味だった「YouTube真似してものづくり」の経験を活かして快適に暮らそうと思います〜  作者: 積と和〝


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香水

エリックは山に入り、ただ花を摘んでいるわけではない。

どの花がいつ咲き、どの時間帯に香りが最も強くなるのか記録していた。

だがすぐに報われることはなかった。

摘んできた花を束ねて売っても、山奥の村では大した値にはならない。


ある日、ふとした思いつきのようにエリックが口にした。


「次は香水だ」


唐突な言葉に、シェリーは思わず眉をひそめた。

「なんで?」


「貴族向けだ。花より、香りの方が長く残るし、運びやすい」


本当に作れるのか。シェリーも、リオも半信半疑だった。


最初の試みは失敗だった。

鍋で花を煮ただけでは、香りはすぐに飛ぶ。

残ったのは色の抜けた花びらと、どこか青臭い水。

期待していたような芳香とは程遠い。


「やっぱり無理なんじゃ…」


シェリーが呟くと、エリックは首を横に振った。


「違う。やり方があるはずだ」


何度も試行錯誤を繰り返した。

火加減、水の量を調整、花の種類を組み合わせる。

山に入り直しては新しい花を採り、また失敗。


エリックは、水蒸気で蒸す方法にたどり着く。

道具を組み合わせて即席の蒸留器を作り、慎重に火を入れる。


立ちのぼる蒸気が冷やされ、ぽたり、ぽたりと液体になって落ちる。


「これが…?」

シェリーが瓶を覗き込む。


エリックは静かに頷いた。

「精油だ」


透明な液体を小さな瓶に詰める。

三人は顔を寄せ合い、恐る恐る香りを確かめた。


ふわりと、甘く柔らかな香りが広がる。

「甘くていい香り…!」


シェリーの表情がほころぶ。

リオも驚いたように目を見開き、すぐに笑みを浮かべる。

「王都に流せば大ヒット」


だが、順調にいくかと思われた矢先、別の問題が浮かび上がる。

香りが安定しない。

日によって微妙に違い、強すぎたり弱すぎたり。


「商品にするなら、毎回同じ品質じゃないと」


エリックはそう言って、さらに研究を続けた。

花の配合、抽出時間、保存方法

——細かな調整を重ね、納得のいく香りにたどり着く。


そして最後に残ったのは、名前だった。


「名前、どうする?」


リオが尋ねると、エリックはしばらく考え込む。

山の朝露、陽だまりの温もり、風に揺れる花々——そのすべてを閉じ込めた香り。


シェリーがぽつりと呟いた。

「山の記憶、みたいな香り」


エリックは小さく笑う。

「いいな。それにしよう」


山の花から生まれた香水は名を与えられ、やがて王都へと運ばれていく。

“ヒット”するかどうかは、まだ誰にも分からない。

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