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異世界ものづくり商会記 〜趣味だった「YouTube真似してものづくり」の経験を活かして快適に暮らそうと思います〜  作者: 積と和〝


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領地の視察

数日後。


エリックは馬車に揺られていた。

木製の車輪がゴトゴトと音を立てる。

道は舗装されておらず、振動がそのまま体に伝わる。


隣にはシェリー。

少し不安そうな顔で外を見ている。


向かいにはリオ。

腕を組み、いつも通り冷静な表情。


護衛の騎士が口を開いた。

「もうすぐ到着します」


少し間を置いて。


「ここが、エリック様の領地……男爵領です」


馬車がゆっくりと止まる。



扉が開いた。


三人は外に出る。


そして――


沈黙。


風の音だけが聞こえる。


シェリーがぽつりと言った。

「……何もない」


エリックも周囲を見渡す。


荒野。

乾いた土。

まばらな草。


遠くに小さな村。


近づいて見れば――


家はボロボロ。

屋根は崩れかけ。

壁もひびだらけ。


リオが淡々と言う。

「人口、ざっと300くらい」


「少な……」

シェリーが小声で呟く。



村人たちが遠巻きに見ている。

ざわざわとした空気。

やがて一人が恐る恐る近づいてきた。


年老いた男。

杖をついている。


「……男爵様、でしょうか」


エリックは一瞬だけ考え――


すぐに笑った。

「エリックでいいよ」


村人たちがざわつく。

「え……?」

「様付けしなくていいのか……?」


村長らしき男が深く頭を下げた。

「この村の長です」


「よろしく」


「……この村は貧しくて」


声に力がない。



エリックは改めて周囲を見る。


水場は見えない。

井戸も少ない。

畑は小さい。


作物もまばら。


道は土。

雨が降ればぬかるむのがすぐに想像できる。


シェリーが小さく言った。

「これ……かなり大変そう」


リオも頷く。

「インフラがほぼゼロですね」



だが。


エリックは――


笑っていた。


「最高じゃん」


シェリーとリオが同時に振り向く。


「え?」

「は?」


エリックはニヤリと笑う。

「何もないってことは」


二人が首をかしげる。

「?」


「全部作れるってことだろ」


一瞬の沈黙。


リオが小さく言った。

「……始まりましたね」


シェリーがため息。

「まただよこの人」


エリックは楽しそうだった。



最初の会議。


場所は村の集会所。

古びた木造の建物。


テーブルも椅子もガタガタ。


集まったのは――

エリック。

シェリー。

リオ。

そして村長。


数人の村人も後ろで見ている。



村長が口を開いた。


「まず……一番の問題ですが」


少し間を置く。


「水です」


エリックが頷く。

「やっぱり」



村長が説明する。


井戸の数が少ない。

しかも浅い。


水量が安定しない。


「水場は遠くの川まで行くしかなくて……」


村人が補足する。

「往復でかなり時間がかかります」


別の村人。

「毎日、水を運ぶだけで半日潰れます」


シェリーが驚く。

「そんなに……?」



エリックは少し考えて。


すぐに言った。


「水道作ろう」


一同。


「?」


完全に止まる。


村長が聞き返す。

「すいどう……?」


シェリーも首をかしげる。

「水道ってあの水道?」


リオだけが反応した。

「ああ……水を引くのか」


エリックは頷く。

「そう」



「山に川あったよな」


村長がすぐに答える。

「はい、あります」


「じゃあそこから引く」


村人たちがざわつく。

「そんなこと……」

「できるのか?」

「水が流れてくるってことか?」



エリックは軽く言った。

「いけるいける」


自信満々。


「YouTubeで見たし」


シェリーがすかさず突っ込む。

「またそれ!?」


リオが小さく呟く。

「出ました、謎の知識源」



山。


少し登った先。


川が流れている。


透明な水。

流れは安定している。


エリックが指差した。

「ここから取る」



作業開始。


竹を切る。

木を削る。

簡単な管を作る。


中をくり抜く。

繋げる。

延ばす。


村人たちも手伝い始める。


最初は半信半疑。


だが――


「こうやるのか」

「面白いな」

「水が流れる道を作るのか」


少しずつ理解していく。



リオは地面を見ながら言う。

「勾配、大丈夫です」


「高低差は十分」


「自然に流れます」


エリックが親指を立てる。

「ナイス」



シェリーは資材を運ぶ。

汗を拭きながら言う。


「これ……結構大変だね」


エリックが笑う。

「でも夢あるだろ」


「まあね」

少し笑う。



数日後。


村の広場。


簡易的な蛇口のような装置。


周囲に村人が集まる。

ざわざわ。

「本当に出るのか?」

「いや無理だろ……」

「でもここまで繋がってるぞ」



エリックが前に出る。


「じゃあ、開けて」


村長が震える手で木の栓を握る。

一瞬ためらう。


そして――


引き抜いた。



次の瞬間。


ジャー……


水が流れ出した。


全員、固まる。


音だけが響く。


子供が叫んだ。


「水だ!!」


別の子も走る。

「水が出てる!!」



村人たちが一斉に近づく。


手を伸ばす。

触る。

「冷たい……」

「本物だ……」

「ここで水が……」



村長が震えていた。


目に涙。


「こんな……こんなことが……」


「奇跡だ……」



シェリーが感動した顔で言う。

「すごい……本当にできた」


リオも静かに頷く。

「インフラ整備、第一段階成功ですね」


エリックは満足そうに笑った。


「よし」


そして言う。


「次は石鹸」


村人たち。


「???」


完全に理解が追いついていない。



リオが補足する。


「衛生環境の改善です」


「病気の予防になります」


シェリーも言う。

「手を洗うってすごく大事なんだよ」


村人たちは顔を見合わせる。


「手を……洗う?」

「水は飲むものでは……?」


エリックはニヤリと笑う。


「ここからが本番だ」

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