王様からの呼び出し
勝てる。
そう思った瞬間、強く扉が叩かれる。
急ぎということか。
リオが振り向く。
「誰?」
返事はない。
もう一度。
叩く。重い音だ。
エリックが頷く。
リオが扉を開ける。
兵士がいた。
王宮の紋章を付けている。
息が荒い。
「至急だ」
空気が変わる。店のざわめきが止まる。
兵士が言う。
「国王陛下がお呼びだ」
早い、予想より早い。
エリックは肩をすくめる。
「仕事かな」
兵士は首を振る。
「それだけじゃない」
不穏。
シェリーが小さく言う。
「何かあった?」
兵士は周囲を見る。
客も猫人族いる。言葉を選ぶ。
「外で話す」
外に出た、風が冷たい。
人通りは多いが声を潜める。
兵士が低く言う。
「北で問題が起きた」
リオが眉をひそめる。
「北?」
辺境の開拓地だったはず。
エリックが聞く。
「猛獣の群れが村でも襲ったか?」
兵士は首を振る。一度ためらう。
そして。
「人だ」
沈黙、短いが空気が重い。
シェリーが息をのむ。
「戦?」
兵士は答えない。だが否定もしない。
代わりに言う。
「トラップの納品を前倒しする」
急ぎ、最優先。そして王命。
エリックは頷く。
「わかった」
迷いはない。
兵士が続ける。
「発射装置もだ」
量。
質。
どちらも要求される。
限界。
だがやるしかない。
リオが口を開く。
「ガラスは?」
兵士がちらりと店を見る。
人だかり。売れている。
価値がある。そして言う。
「それも使う」
意外に思った。
エリックが目を細める。
「どう使う?」
兵士は短く答える。
「視るためだ」
窓。
望遠。
観測。
意味が繋がる。
エリックが小さく笑う。
「なるほど」
使い道が増えた。ただの商品じゃない。
道具、戦の道具。
シェリーが不安げに言う。
「大丈夫?」
誰に向けた言葉かわからない。
エリックは答える。
「大丈夫じゃなくてもやる」
それだけ。とてもシンプルだ。
兵士が頷く。
「すぐ来てくれ」
王宮への呼び出し。
エリックは振り返る。
店。工房。
猫人族たち。
みな忙しく動いている。
止められない。
リオが言う。
「ここは任せて」
強い目でこちらを見ている。
シェリーも頷く。
「作る。いっぱい!」
頼もしい限りだ。
エリックは歩き出す。
兵士と並んで、そして王宮へ。
石畳に靴音が響く。
頭の中で考える。
トラップ。
発射装置。
ガラス。
組み合わせ。
新しい形。
戦い方を変えられる、かもしれない。
王都の空に煙が上がる。
工房の煙が増えている。
国が動く。
その中でエリックも動く。
止まらない。止まれない。
王宮の門が開く。
新しい、大きい何かが始まろうとしていた。




