盗賊団襲来
猫人族の村に戻った。
被害は大きかった。
あちこちで家が壊れている。
屋根が崩れ、壁が割れ、生活の跡がむき出しになっていた。
子どもたちが不安そうに寄り添う。
大人たちは黙って片付けている。
誰もが悔しさを噛みしめていた。
村長が重い声で言った。
「盗賊は30人、また来るだろう」
空気が沈む。
エリックは考える。
こちらは村人20人。
しかも戦える者はさらに少ない。
武器もほとんどない。
これは普通なら勝てない。
だが。エリックは顔を上げた。
「罠を使う」
リオが笑う。
「出た」
「YouTube戦術」
シェリーが首をかしげる。
「何するの?」
エリックは指で数えながら説明する。
・落とし穴
・警報ベル
・クロスボウ隊
・誘導ルート
「誘い込む、決して正面からは戦わない」
村人がざわつく。
「そんなことできるのか?」
「相手は30人だぞ」
不安が広がる。
シェリーが一歩前に出る。
「戦うのか、じゃない」
「守るために戦うの」
その声は強かった。
村人は顔を見合わせる。
そして、ゆっくりと頷いた。
猫人族は弱くない。
ただ、これまでは武器がなかっただけだ。
戦い方を知らなかっただけ。
エリックは言った。
「準備開始」
その一言で、村が動き出した。
⸻
昼。
落とし穴を掘る。より深く。
鋭い杭を仕込む。
子どもたちも石を運ぶ。
大人たちは木を切る。
リオはベルを設置する。
糸を張り巡らせる。
「これで全部鳴る」
シェリーはクロスボウの扱いを教える。
「引いて、狙って、撃つ」
「焦らない」
エリックは全体を見る。
配置を決める。逃げ道も用意する。
「絶対に無理はするな」
「生き残るのが最優先だ」
村人が頷く。
恐怖はある。
だが、それ以上に守りたいものがあった。
⸻
夜の森。
風が止まる。
盗賊団が来た。30人だ。
リーダーが笑う。
「また猫人族だ」
「今日は当たりだな」
「女は売れる」
下品な笑いが広がる。
シェリーの目が冷える。
怒りが静かに燃える。
その瞬間。
カラン!
ベルが鳴る。
森に響く音。
盗賊が止まる。
「なんだ?」
「誰かいるのか?」
ざわつく。
次の瞬間。
ズボッ
一人が落ちた…落とし穴だ。
「うわああ!」
「罠!?」
混乱が広がる。
そして、エリックが叫ぶ。
「撃て!」
クロスボウ一斉発射。
バシュ!
矢が闇を裂く。
盗賊が倒れる。
「弓兵!?」「どこだ!」
だが、まだまだ多い。
盗賊が怒鳴る。
「突っ込め!」
一斉に前進。
その瞬間、第二の罠。
丸太が転がる。
ドン!
「ぐあっ!」
何人も吹き飛ぶ。
隊列が崩れる。
シェリーが飛び出した。
「猫人族なめるな!」
素早い動き。
短剣が光る。
一人。また一人。
リオが叫ぶ。
「左!」
クロスボウ。
バシュ!
正確な射撃。
村人たちも戦う。
震えながら。
それでも撃つ。
「守るんだ!」
「ここで止める!」
盗賊のリーダーが怒る。
「ガキども!」
「調子に乗るな!」
突っ込んでくる。
その時。
エリックが静かに言った。
「最後の仕掛け」
油と地面に撒かれた線。
火。
ドン!
炎の壁が立ち上がる。
赤い光。
熱。
盗賊たちが後ずさる。
「なんだこれ!」
「退け!」
逃げ始める。
統率が崩れる。
エリックが言う。
「追うな」
「ここまででいい」
やがて森は静かになった。
残ったのは倒れた盗賊。
焦げた地面。
そして。
村人の歓声。
「勝った!」
「追い払った!」
誰かが泣く。
誰かが笑う。
シェリーが息を切らして言った。
「勝った…」
「本当に…」
手が震えている。
エリックは空を見た。
煙の向こう。星が見える。
「YouTubeすごい」
リオが呆れる。
「普通の感想じゃない」
少しの沈黙。
そして、三人は笑った。
村に、久しぶりの笑い声が広がった。




