クロスボウ量産計画
今日の4話目です。
読み飛ばしにご注意ください。
エリックは机に向かっていた。
静かな部屋。
外の音は遠い。
意識を集中する。
紙を広げる。
何枚も。
炭のペン。
指先が黒くなる。
迷いなく動く。
描いているのは――
武器。
線が増える。
形になる。
「これがクロスボウ」
シェリーが覗き込む。
顔を近づける。
「弓?」
首をかしげる。
「弓より強い」
エリックは答える。
「ほんと?」
疑いの目。
リオも見ていた。
腕を組む。
興味深そう。
「構造は簡単」
エリックは説明する。
紙を指でなぞる。
弓を横向きに固定。
台座に乗せる。
引き金で発射。
力はいらない。
誰でも撃てる。
狙いも安定する。
シェリーが言う。
「それ強いの?」
まだ半信半疑。
エリックは頷いた。
はっきりと。
「訓練なしで弓兵と同じくらい」
「……そんなに?」
シェリーの目が揺れる。
リオが言った。
「それ軍隊が欲しがる」
少し笑う。
現実的な声。
エリックも笑った。
「だから量産する」
重い内容だが、さらっと言う。
シェリーは不安そうだった。
手を握る。
「武器作るの?」
声が小さい。
「今回は仕方ない」
エリックは止まらない。
次の図を描く。
猫人族の村。
頭に浮かぶ。
焼け跡。
壊れた家。
襲われた。
突然。
人がさらわれた。
叫び。
恐怖。
放置できない。
絶対に。
エリックは言った。
ペンを止める。顔を上げる。
「助けに行く」
言葉は静か。
だが強い。
シェリーの耳が震えた。
ぴくりと動く。
目が潤む。
「……ありがとう」
小さな声。
でも確かに届く。
リオが横から言う。
「で、いつ行く?」
現実的。
エリックは答える。
「準備ができ次第」
即答だ。
「急ぐぞ」
紙をまとめる。
設計を重ねる。
必要な材料。
木材。
弦。
金具。
矢。
やることは多い。
時間は少ない。
シェリーが拳を握る。
「私も戦う」
決意の声。
エリックは少しだけ見る。
そして頷く。
「頼りにしてる」
短く。
リオが笑う。
「なんかワクワクしてきた」
軽い口調、だが目は真剣だ。
空気が変わる。
準備の時間。
戦いの前。
静かな熱。
救出と復讐のための戦いがゆっくりと、
そして確実に動き出していた。




