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再会、深紅の騎士! カイザーの『理想の食卓』

※生きることは、食べることという物語です。

リナの貨物船が、カリー・ハーンで手に入れた

高出力のジャミング装置を作動させ、

敵の誘導ミサイルを次々と明後日の方向へと逸らしていく。


「分かってる! 軌道エレベーターのゲートまで、

あと三〇〇メートル!」


シオンの視線の先、雲を突き抜ける巨大な鋼鉄の門が、

ゆっくりと重低音を響かせて開き始めた。


だがその奥から、守備隊とは比較にならないほどの

不吉な「圧」が溢れ出してきた。


「……来たわね……。マスター、味覚センサーが最大級の『拒絶』を感知……。

無味無臭の、完璧なる死の香りがします」


セラの警告が終わる前に、ゲートの奥から一筋の深紅の閃光が放たれ、

シオンたちの進路を真っ赤に焼き払った。


ゲートの奥から立ち昇る陽炎の向こう側、

深紅の装甲を纏った天使装甲イプシロンが静かに浮遊していた。


その手に握られた十字架型の長槍は、高出力のエーテルを纏い、

近づく者すべてを分子レベルで分解する殺気を放っている。


「久しぶりだな、シオン。そして、出来損ないの管理端末セラ」


カイザーの声が、バベルの巨大な空間に反響した。


その声に以前のような激情はなく、ただ冷徹な使命感だけが宿っている。

そして、何故かタナトスは連れていないようだ。


「『お袋』の揺り籠を壊し、世界にあじを撒き散らした罪は重い。

今や地上はスパイスの刺激と甘ったるいソースの脂で汚れきっている」


彼は続けて。


「私はレグナス・コアと直結し、

この星に『真の静寂』を取り戻す契約を交わした」


「……。マスター、呆れ果てて言葉も出ません。

この男、宇宙うえにあるメインフレームに意識を半分預けた結果、

ついに自らの味覚中枢を完全にオフにしたようです」


セラが怒りに震える。


「美味しいものを「汚れ」と呼ぶその貧相な感性、

……もはや人間というより、ただの不具合バグの塊ですね」


セラのノイズが激しくなる。


彼女の本体がレグナス・コアに近い場所にあるため、

敵のシステム干渉が強まっているのだ。


「セラ、無理すんな!

……カイザー! お前、まだそんなこと言ってんのか」


シオンは説得する。


「味のない世界がどれだけ寂しいか、

カリー・ハーンの奴らの顔を見れば

もう十分分かったはずだろ!」


「……。今さら不要なのだ」


なぜか、カイザーは自嘲気味に笑う。


「喜びも苦しみも、すべては均衡を乱すノイズ……。

見よ、これが宇宙が求める、完全なる無機質の美学だ!」


カイザーの叫びと共に、

イプシロンの背中から無数の深紅の翼が展開された。


それは一つ一つが独立した遠隔攻撃端末であり、

シオンたちの周囲を瞬時に包囲する。


「システムに魂を売ったか。見返りは何だ?無味無臭の、深紅の死神よ……。

お前の。凍てついた、心に今一度、……情熱の油を……。注いでやろう!」


グリードが〈オメガ〉の出力を上げ、シオンの前に躍り出た。


だが、イプシロンの翼から放たれたレーザーの一撃が、

〈オメガ〉の重装甲を容易く貫通し、砂漠の砂を溶岩へと変えた。


「グリード! 下がってなさい! 相手はレグナス・コアのエネルギーを

直接引き込んでるのよ、まともに当たったら消滅するわよ!」


リナの貨物船が限界以上の回避機動を行いながら、シオンを鼓舞する。


「シオン! ここはあたしたちが食い止める! あんたはセラを連れて、

エレベーターの中央シャフトへ走りなさい! 宇宙うえへ行って、

その『お袋の根源』をテリヤキでぶん殴ってこなきゃ、全部おしまいよ!」


「リナ……。分かった! セラ、全エネルギーを加速に回せ!

カイザー、決着は宇宙でつけてやる!」


シオンはセラフィオンのブースターを点火した。


深紅の翼が放つ光条の雨を縫うように、少年と天使は虚空へと

伸びる鋼の塔の内部へと突入していく。


軌道エレベーターの中央シャフト。


周囲を流れるエーテル・ラインが激しく火花を散らし、

セラフィオンを乗せた昇降プラットフォームは、

爆発的な加速度で成層圏を突破した。


「重力が……、体が……っ!」


急激なG(重力加速度)にシオンの視界が歪む。


だが、それ以上に深刻なのは、隣に実体化しているセラの異変だった。


『……。マスター。……レグナス・コアとの距離が縮まったことで、……。

私の制御権(アクセス権)が、……向こう側に……いいですか……。

バカな……あなたの……その熱いだけの……脳味噌に……刻みなさい。……』


続ける。


『このまま……同期が完了すれば、……私は、あなたの……

テリヤキを「不適切なデータ」として……消去……することに……』


言語野を支配され始められたのか、

言葉が途切れ途切れだ。


セラの体から青いノイズが噴き出し、

その瞳からは意志の色が抜け落ちようとしていた。


彼女は自身の消滅を予感しながらも、

震える指先でシオンの計器を調整し続けている。

  

「勝手なこと言うな! テリヤキが不適切だってんなら、

この宇宙の法則のほうが間違ってんだよ! セラ、しっかりしろ!」


シオンが叫んだ瞬間、

昇降機の天井が外部からの衝撃でねじ切れた。

次回へ続きます。

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