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熱砂の洗礼と黄金のスパイス

※第三章:テリヤキ・エクスプロージョン編スタートです。

「――あ、あちぃ……。

ハバラ・アーキのネオンが恋しくなるぜ」


シオンはセラフィオンの

コクピットの空調を最大にしながら、

目の前に広がる終わりのない赤茶けた砂漠を睨みつけた。


極地の氷壁を越え、

ハバラ・アーキの地下迷宮を抜けた先。


そこはかつて「オリエント・セクター」と呼ばれた、

灼熱の太陽と砂嵐が支配する死の大地だった。


「マスター。……。

外気温度は四十五度を超えています」


続けて。


「ハバラ・アーキで手に入れた

『伝説のスパイス』に含まれるカプサイシン成分が、

この熱気と共鳴して私のセンサーを刺激しています」


セラが、

不機嫌そうにマントで自分を仰ぐ。


彼女の足元には、

ハバラ・アーキの最深部でゼノンから託された宝。


原子レベルで保存された「黒胡椒」の代替種子と、

究極の味を記した禁書目録の断片が大切に保管されていた。


「『……。灼熱の風が、……今……騎士の誇りを砂へと変える。

……ネメシス、私の〈オメガ〉が……股間の駆動系から

……異臭を放っている……!』」


漆黒の〈オメガ〉の肩に立ち、

相変わらずポエムを詠むグリードだったが、

その姿は哀れだった。


ハバラ・アーキでネメシスの

メイド服姿という「萌え」の

深淵に呑まれた彼は、いまだにその後遺症で

鼻血の跡が乾ききっていない。


「自業自得だ、ポエム野郎!

……それよりセラ、例の『反応』はどうだ?」


「……。肯定イエス、マスター。

この砂漠のどこかに、アイオロスのデータにある

『第二の聖遺物スパイス』が

眠るオアシス都市……『カリー・ハーン』が存在します」


そして。


「ですが……。何かがおかしい……。

熱源感知……。空から、……何か来ます!」


セラの叫びと同時に、

燃え盛るような太陽を背にして、

一機の巨大な影が飛来した。


それはかつての「お袋」の兵器とも、

カイザーの天使装甲とも違う、

全身を金色の装甲で固めた異形の機体。


その肩には、

ハバラ・アーキの「黄金のM」さえも凌駕するような、

禍々しくも神々しい「巨大なスプーン」が担がれていた。


「――止まれ、テリヤキの侵略者ども!

ここから先は、我が主『砂漠の王』の食卓である!」


スピーカーの音がする。


「甘辛い軟弱な香りを持ち込む者は、

千のスパイスの刑に処す!」


スピーカーから響くのは、

熱砂を焦がすような傲慢な声。


「……面白いじゃねえか。

セラ、準備しろ」


「はい!」


「テリヤキの次は……この砂漠をカレーの匂いで

塗りつぶしてやるぜ!!」


少年と天使の新たなる食の聖戦が、

今、熱砂の波間に幕を開ける!


「――止まれと言っているのだ、

テリヤキの侵略者ども!」


金色の装甲機体が担いだ「巨大なスプーン」が、

陽炎を切り裂いて振り下ろされる。


「マスター……。

砂漠の熱気で脳細胞が沸騰した個体と遭遇しました」


一拍。


「黄金のスプーンなどという

非効率な武装を自慢げに掲げるあたり、

知性は期待できませんね」


「そうだな」


「速やかに「除菌」という

名の破壊を推奨します」


セラの冷徹な声が、

セラフィオンのコクピット内に響く。


「へっ、言ってくれるじゃねえか!

セラ、回避だ!」


セラフィオンが砂を蹴って跳躍する。

しかし、金色の機体がスプーンを地面に突き立てると、

装甲の隙間から黄色い粉末が爆発的に噴出した。


「喰らえ! 千のスパイスの刑、

第一段階! 『ターメリック・バースト』!」


「ゴホッ、ゲホゲホッ!

なんだよこれ、カレーの匂いがしやがる!」


「……。マスター……機体内部に侵入した粉末を解析。

……これはウコンです……」


「ウコンって、お前!?」


「お肌には良さそうですが……。

肝臓の心配をする前に……」


続けて。


「あなたのその「無防備に叫ぶたびに粉を

吸い込むバカな口」を塞ぐべきですね」


セラの毒舌がシオンの肺を突く。


そこへ、背後から聞き覚えのある

エンジン音が近づいてきた。


「――おーい、シオン!

派手にやってるじゃん!」


砂煙の中から現れたのは、

巨大な多脚貨物船。


ハバラ・アーキのジャンク・マーケットで

腕を磨いたリナ・アスカールだ。


「リナ!?

なんでこんなところに!」


「ハバラ・アーキで仕入れた

『三〇〇年前のおまけシール』と『レアカード』の相場が、

この先にあるカリー・ハーンで高騰しててさ」


隣りで見ていた弟妹たちに、


「……ほら、ニナもタクも、挨拶しな!」


貨物船の窓から、

弟妹たちがレアカードを旗のように振っている。


「マスター。絶望的な状況に……。さらに「守銭奴の姉」と

『カードゲーム中毒の子供たち』が合流しました」


セラの報告。


「私の演算によれば……あなたの胃に穴が空く確率は、

今この瞬間、百二十%に到達しました」


「うるせえ! リナ、援護しろ!」


「オッケー! おまけシールの輝きを喰らえーっ!」


リナが射出した

「ホログラム・レアカード弾」が黄金の機体の視界を遮る。


その隙にシオンは、

ハバラ・アーキで手に入れた黒胡椒のスパイスを

セラフィオンの掌にセットした。


「テリヤキの甘辛さに、

この『伝説の刺激』を加えてやる! どけよスプーン騎士!

俺たちはその先にある『カリー・ハーン』に用があるんだ!」


砂漠の王が支配し、

水よりもスパイス水が重宝される狂った街。


シオンたちは、リナたちの商隊と共に、

熱砂に霞むオアシス都市の門を潜ろうとしていた。

次回へ続きます。

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