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テリヤキ・マヨネーズ聖戦/前編

※生きることは、食べることという物語です。

※今回はギャク多めに味付けしました。

黄金の麦の収穫を終えた

シオンたちが次に向かったのは、

「伝説の調味料」が眠る街。


旧首都エリアの地下に広がる

エラー・コードたちの聖域。


『ハバラ・アーキ』だった。


地上は相変わらず

ナノマシンの雲が空を覆っているが、

この地下街だけは違っていた。


エーテル・ラインから

盗み出した膨大な電力により、

色とりどりの古びたネオンサイン

が眩いばかりの光を放っている。


まさに不夜城の様相を呈している。


「……何だ、この街。

目がチカチカするぜ」


シオンが呆れたように呟く。


街の至る所には、

朽ち果てた「黄金のM」を象った看板が鎮座し、

人々がそれを「豊穣と素早い食の象徴」として

拝んでいた 。


さらには、祭壇に祀られた「家庭用ゲーム機」を

自由の魔法の箱として崇める者たちまでいる 。


「マスター、見てください。

あそこにあるのは聖典『同人誌』です」


セラが通りの向こうを見る。


「過去の人々の剥き出しの

情熱が記された禁書……」


「……解析するだけで

私の倫理回路にバグが生じそうです」


セラが、興味深そうに

(しかし引き気味に)露店を指差した。


そこへ、フリルとリボンを身に纏った

一団が近づいてくる。

ギルド『メイド喫茶・レジスタンス』の面々だ 。


かつて彼女たちは

監視ドローンの目を盗んで逃げてきた人々に

「名前」と「萌え(情動)」を取り戻させる、

この街の情報交換所を営んでいた。


「お帰りなさいませ、ご主人様!」


みんな揃って頭を下げる。


「伝説のテリヤキ・ソースのレシピをお探しと

お見受けします。

……ですが、その前に」


メイド長がネメシスをじっと見つめる。


「何ですか?

その無遠慮な視線は、除菌しますよ?」


「……。ネメシス! お前、

その……。その「メイド服」という

旧時代の戦闘正装……試してみる価値が

あるのではないか!?」


グリードが鼻の下を伸ばし、

ガタガタと震えながら進言した。


「『……漆黒の騎士も、……今、

……萌えの深淵に呑まれる……。ネメシスよ……。

お前がそのリボンを纏う時、……。

世界は……真の安寧を得るだろう!』」


「却下です。

……マスター、己の美学はどうしたんですか?

……不潔です。万死に値します」


ネメシスは冷たく言い放つが、

メイドたちの執拗な「お着替え作戦」に捕まり、

ギルドの奥へと連行されていく。


数分後。


渋々ながらも、フリルたっぷりのメイド服に

着替えさせられたネメシスが姿を現した。


「……。……ぐはぁっ!?」


その破壊的な「萌え」の質量を前に、

グリードは鼻血を噴水のように噴き出し、

そのまま後方にぶっ倒れた。


「……おい、死ぬなポエム野郎!

目的地はまだ先だぞ!」


シオンの制止も虚しく、

聖地ハバラ・アーキの洗礼は、まずシスコン騎士の精神を

崩壊させることから始まったのである。



鼻血を出して昏倒したグリードを

「オムライス」の魔法の呪文で蘇生させた一行は、

ハバラ・アーキのさらに深部、古い工場跡地を改造した

巨大な厨房へと辿り着いた。


そここそが、エラー・コードの長、

ゼノンが君臨する「マヨネーズ神殿」である。


神殿の内部には、エーテル・ラインから引き込まれた

電力で唸りを上げる巨大な攪拌機が並び、

鼻を突くような酸味と濃厚な油の香りが充満していた。


「――来たか。テリヤキという名の

『野蛮なソース』を信奉する放浪者よ」


巨大な調理台の奥から、

白衣の胸元をはだけさせた、

巨漢、アイアンシェフ・ゼノンが姿を現した。


彼は恭しく掲げたボウルから、

自作の「エーテル・マヨネーズ」を、

配給用の味気ない合成食料へと芸術的な手つきで

振りかけていく。


「見ていろ。

これが『浄化デコレーション』だ」


ゼノンがマヨネーズをかけた瞬間、

泥のような配給食は輝きを放ち、

信徒たちがそれを「魂の料理」として

涙を流しながら貪り始めた。


「マヨネーズの配合比率は国家機密級」


ゼノンは胸をはる。


「これこそが、おマザー・レグナスのナノ・シードによる

精神管理を打ち破る『情熱の潤滑剤』なのだ」


「マスター、解析しました。

このマヨネーズ、卵黄と油の乳化速度が、

私の論理回路を加速させる特殊な周波数を発しています」


とセラの声。


「……悔しいですが、

これはただの調味料ではありません」


メイド服姿のままのネメシスが、

頬を赤らめて報告する。


一方でシオンは、自らの腰に下げた

「秘伝のテリヤキ・ソース」の小瓶を

強く握りしめた。


「潤滑剤だぁ?

笑わせんな。そんな白いドロドロで

世界が救えるかよ!」


シオンが不敵に笑う。


「 魂を震わせるのは、肉を焼き、醤油を焦がし、

腹の底から『生きてる』と叫ばせる

テリヤキの熱狂グルーヴだけだ!」


「ほう。ならば証明してみせろ。……。

この神殿の奥にある、

旧時代のスパイスが眠る宝物庫」


ゼノンが挑発する。


「そこへ辿り着きたければ、

私のマヨネーズを超える『情熱』を、

その調理器ロボットで示してみせろ!」


ゼノンが合図を送ると、

工場のクレーンが巨大なフライパンを吊り上げ、

戦場キッチンの中央にセットした。


「望むところだ!

セラ、火力を上げろ! ハバラ・アーキの連中全員に、

テリヤキの匂いで『萌え』以上のバグを植え付けてやる!」


ハバラ・アーキの支配権と、

伝説のスパイスを賭けた「味覚の聖戦」の火蓋が、

今、切って落とされたのである。

※明日へ続きます。

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