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シスコン・クッキングバトル

※生きることは、食べることという物語です。

『……うわあああ! 可愛い! セラフィナそっくりだ!

いや、セラフィナより少しツンケンしてて……』


セラをジロジロと見て。


『そこがまた最高にそそるじゃないか

マイ・スウィート・リトル・シスター!!』


アイオロスはホログラムの体でセラの周りを高速回転し、

感涙にむせびながら叫んだ。


「てことは、あいつグリードのコピーってことじゃないか!」


シオンが呆れた声を出す。


「ちょっと!気安く回らないで、このバグまみれの亡霊!」


「マスター……。敵の熱量が、私の冷却システムを突破しそうです。

……。この男の瞳に宿る『妹への歪んだ執着』は、マスター同様、

三〇〇年経っても腐敗していないようです」


ネメシスが呆れたように告げるが、

その隣でさらなる異変が起きていた。


「『……嗚呼、……時空を超えて響き合う、……双子のシスコン

貴様……名乗らずともわかるぞ。……貴様もまた、

妹という名の女神を崇める、……孤独なる使徒コピーなのだな……!』」


グリードが漆黒のオメガから飛び降り、

アイオロスに向かって両手を広げた。


『おっ、わかるか、オリジナル君!そうなんだよ!妹ってのはね、

世界が滅んでも守り抜くべき唯一の聖域なんだ!』


そして、シオンを睨み。


『それをどこの馬の骨とも知れない『テリヤキ野郎』に預けるなんて、

お兄ちゃんは認めないぞ!』


「そうだ! 断固として認めん!セラフィナを……いやセラ嬢を、

このような味覚の暴力に晒す男など、万死に値する!」


三〇〇年前のシスコンAIと、現代のシスコン騎士が、

がっしりと(ホログラム越しに)握手を交わした。


「おい、話が進まねえよ!アイオロスだっけか、

麦をよこせ!俺たちはそれで世界を救うんだ!」


シオンが調理台を叩く。


『いいだろう!だが条件だ!この倉庫に残された

「三〇〇年前の最高級食材」を使い、俺とこの騎士君が納得する

「究極のバーガー」を作ってみせろ』


さらに、


『もし失敗したら……セラフィナのコピーであるセラは、

一生このダンジョンでお兄ちゃんと一緒に

「三〇〇〇ピースのセラフィナ・パズル」をして暮らしてもらう!』


「嫌すぎるわよ、そんな引きこもり生活!」


「シオン、私からもお願いします。

……この『お義兄様(笑)』を黙らせなければ、

私の精神衛生回路が永久に汚染されます」


続けて。


「……さっさと、彼らの歪んだ情熱をテリヤキで焼き尽くしてください」


ネメシスが冷たく言い放つと、調理台の上に見たこともないような

見事な霜降りの肉と、黄金に輝く

「幻の小麦粉(の残りカス)」が並べられた。


「よし、やってやろうじゃねえか!セラ、

精密演算でコネるのを手伝え!世界一臭い缶詰の次は、

世界一うるさいシスコンどもを黙らせる究極のテリヤキだ!」


「……。了解、マスター。。……あなたの「味」への執念に、

私の「妹としての意地」を上書きします。アイオロス、見ていなさい」


と、睨みつけ。


「……。あなたの古臭い愛情表現なんて、

今の私たちには「隠し味」にもなりません!」


かくして、シードボルト最深部では、三〇〇年前のシスコンAIと、

現代のテリヤキ馬鹿、そして冷ややかな妹が火花を散らす。


史上最高に迷惑で香ばしい「料理対決」の舞台へと変貌したのである。


「セラ、火力を固定しろ。三〇〇年前の『レシピ』なんて知るか。

……今、ここで生きている俺たちのための味を作るんだ!」


シオンの叫びに呼応し、

セラフィオンの精密マニピュレーターが銀光を放つ。


調理台の上に置かれたのは、

アイオロスが保管していた「旧時代の伝説の素材」だ。


まずシオンが手をつけたのは、シードボルトに眠っていた

希少な『古代小麦』の粉だった。


セラが計算した「最適水分量」を無視し、

シオンは自らの手のひらで粉と対話する。

 

「『……。……白き粉雪が、……シオンのたなごころで、

……命の胎動を始める。……練り上げられたそれは、

……やがて太陽を呑み込んだ……黄金の月となるのだ……』」


グリードがオメガの装甲の上で陶酔するように詠い上げる中。


生地はセラフィオンの指先による「超高速・定温発酵」を経て、

ぷっくりと膨らみ始めた。


オーブンに入れられたそれは、香ばしい「焼きたてのパン」という、

この三〇〇年の暗黒時代には存在しなかった幸福の香りを放ち始める。


表面はパリッと張り詰め、中は雲のように柔らかい。


それはまさに、これから始まる饗宴の「土台」であった。


続いて、


戦場に甘美な「暴力」が解き放たれる。シオンが特製の醤油、

煮詰めた蜜、そして隠し味の果実酒を熱した鉄板に注ぎ込んだ。


――ジュワッ!!


五感を麻痺させるような、芳醇で暴力的な香りが立ち昇る。


それは「甘み」と「塩気」という、相反する二つの魂が

火の上で激しく抱き合う音だ。

 

「セラ、さらに煮詰めろ!

ソースが糸を引き、鏡のように俺の顔を映すまでだ!」


「了解、マスター。……。粘度三〇〇〇パスカル・秒。……。

このソースはもはや、液体ではなく『黒い宝石』です」


セラの精密な熱制御により、ソースは深い琥珀色を通り越した。


漆黒の輝きを帯びる。それは、どんな絶望をもコーティングして

「旨味」に変えてしまう、テリヤキの魔力そのものだった。


しかし、シオンたちがそうしている間にも、都市崩壊まで

三〇日を切ろうとしていた。


そんな中、リナたちは他の市民を元気づけていた。


「シオン、早く帰って来て。このままじゃ、みんな……。」


リナ・アスカールはただひたすら、シオンたちの帰りを待ち続けた。

明日へ続きます。

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