絶対零度の牢獄を打ち破れ!
※第一章第一話にセラのアクションイラストを追加しました。
※イラストはセラフィオンのイメージです。決してガ〇ダムではありません。
セラフィオンの右腕が氷柱のように折れた。
鈍い破砕音とともに、白銀の装甲片が吹雪の中へと散る。
砕けた破片は日光を反射し、氷の墓標のように地へ突き刺さった。
「この、野郎!!」
シオンの怒声がコクピットを震わせる。
衝撃がシートを伝い、背骨を打つ。
折れた右腕の断面から白い霧が噴き出し、
凍結した神経接続が火花を散らしていた。
「損傷深刻。右腕機能喪失」
「言われなくても分かる!」
「痛覚リンク、遮断しますか」
「切るな!感じてろ!俺の腕だ!」
「理解不能です」
「うるせぇ!」
「展開補助肢、三基。強度、二十三%」
セラは即座にサブアームを展開する。
セラフィオンの背部装甲が開き、
三基のか細いマニュピレーターがせり出す。
それは主腕の代わりには程遠い、応急の骨だった。
「応急処置だろうが何だろうが動け!」
「動きます。あなたが諦めない限り」
「上等だ!」
「全機、絶対零度の牢獄、展開!」
ヘルバイラの声が、吹雪を切り裂いて響き渡った。
それは宣言というより、刑の執行を告げる鐘の音だった。
直後、『アイス・ナイン』の九機が同時に散開し、
滑るような軌道でセラフィオンと〈オメガ〉を包囲する。
雪煙が巻き上がり、赤い光が滲む。
「来るぞ……!」
「既に包囲半径固定。逃走経路なし」
「言い切るな!」
白い嵐の中で赤い光が交錯し、
やがて九つの機体が正確無比な等間隔で静止した。
「こいつら、何か仕掛ける気だぞ!」
「もう仕掛けています」
「早ぇよ!」
セラが即答する。
その声は冷静だが、わずかに演算負荷が滲む。
次の瞬間、九機の胸部から放たれた光線が互いを結び始めた。
一直線ではない。曲線でもない。
空間そのものを縫い合わせるような幾何学的な輝きが、
九つの頂点を持つ光の輪を形成する。
「綺麗だな……最悪だ」
その中心――シオンたちがいる空間の温度が、
目に見えるほど急激に落ちていく。空気が凍る。音が鈍る。
世界が、ガラス細工のように硬直していく。
「マスター!外部温度急降下!
マイナス二百七十三度へ到達寸前!絶対零度域です!」
「おい待て、物理法則どうなってんだよ!」
「法則を凍結させています」
「そういうの嫌い!」
関節部に霜が走り、装甲表面が白く曇る。
視界の端が白く凍りつく。
「動きが重い……!」
「内部循環も凍結開始」
「冗談だろ、心臓まで凍るぞ!」
「あなたの心臓は既に脂質過多です」
「今言うな!」
「プラズマ・リアクター、全力解放!
グリード、エーテル・カノンは使えるか!?」
「無論だ!だが何をするつもりだ!」
「俺に向かって撃て!」
「は?」
「俺もお前に撃つ!」
「何だと!?凍傷で脳まで凍ったか!」
「いいから砲口を向けろ!タイミングが命だ!」
〈オメガ〉が躊躇する。その一瞬を、ネメシスが奪った。
「エネルギー対消滅による瞬間的熱量爆発。
理論上は成立。ただし誤差〇・一秒で両機蒸発」
「ロマンだろ!」
「ロマンで死ぬ気ですか」
「セラと姉妹なんだろ?タイミング任せた!」
「雑な信頼ですね」
「嫌いか?」
一瞬の沈黙。
「……嫌いではありません。お姉様?」
「合わせるわよ。いい?ネメシス」
「十、九、八……」
吹雪の中、二門の砲口が互いを狙う。
光が凝縮され、凍結空間が軋む。
「五!」
「四!」
「三、二、一――ファイヤー!!」
閃光。
二つの巨大エネルギーが衝突し、中心で歪む。
次の瞬間、世界が白に塗り潰された。
キィイイイン――!
金属が悲鳴を上げる。装甲が焼ける。
凍り付いていた空間が一瞬で沸騰する。
光球が爆ぜ、爆風が『アイス・ナイン』の陣形を弾き飛ばした。
「やったか!?」
「隊列崩壊率三十四%。撃破ゼロ」
「ちっ!」
「そんな奇策、いつまでも通用しない!」
ヘルバイラが叫ぶ。
崩れた隊列が、再び整列する。冷静。正確。感情なし。
「機械みたいに立て直すなよ……!」
「機械です」
「そうだけど!」
囲いは再構築される。
「もう一度いけるか!?」
「不可能です。あと一回で蒸し焼き」
「蒸すな!」
「マスター、目的は勝利ではありません。
シードボルト回収です」
「分かってる……分かってるけどな!」
囲いは狭まる。光の輪が再構築される。
「……なあセラ。あいつら、読んでるんだよな?」
「肯定。あなたの思考は熱量過多で目立ちます」
「悪かったな」
「否定はしません」
「だったらさ」
シオンは、コクピット横のストレージを乱暴に開けた。
「俺たちの思考を読ませてやればいい」
取り出したのは、冷めたテリヤキバーガー。
「……マスター」
「腹減ってるだろ?」
「戦闘中です」
「だからだ」
「ネメシス!味覚情報を逆流させろ!」
「非論理による上書き。理解」
「グリード、食え!」
「何故だ!」
「いいから!」
「……『死の淵で黄金の肉を――』」
「短縮!」
「食う!」
二人は同時にかじりつく。
冷えている。だが、濃密な甘辛ソースは健在だ。
醤油と砂糖の刺激が脳を打ち、肉汁が広がる。
「うめぇぇぇ!!」
「……甘い……脂が……!」
「幸福パルス最大!」
「送信!」
九機が震えた。
赤い光が乱れる。
「何この感覚!?」
「脳波パルス遮断!」
ヘルバイラの号令の元、すぐに『アイス・ナイン』が編隊を組み直す。
「だめか!?」
「いえ、一瞬ですが敵の動きに乱れが起こりました!効いています!」
「何秒だ!」
「三秒!」
「十分だ!」
「グリード!もう一度だ!ネメシス!最初の三秒に全エネルギーを集中させろ!」
「了解!」
再びかじる。
「やっぱうめえええ!」
「脂質、暴走!」
「幸福パルス全力再送信!!」
わずか三秒、
『アイス・ナイン』の隊員たちの脳に幸福パルスが逆流する。
「なんだ!この感覚は!!脳が、脳が焼ける!」
「こ、これはっ!!この刺激的な感覚は何だっ!!」
「やめろ!――美味い……!美味いではないかあああ!!!」
「隊列、維持できな――ああああ!」
『アイス・ナイン』の編隊が同調崩壊する。
「今だ!」
セラフィオンが加速する。
「テリヤキ・ストライク!」
「技名を叫ばないでください」
「今さらか!」
一閃。爆炎。
吹雪の中、九つの炎が舞う。
「こんな、こんな負け方なんて……ありかもおぉぉ!!おかわりぃぃ!」
ヘルバイラの断末魔の声が雪原に消えていった。
静寂。
焦げた匂いと甘辛い残香。
「見たかよ」
「味覚逆流、危険です」
「でも勝った」
「左腕神経麻痺」
「今言うな!」
通信が入る。
「……胃が重い……」
「生きてるな」
「……甘い……」
「お前もかよ」
その時。
レーダーに異常反応。
巨大な単一波形。
セラの声が静まる。
「マスター」
吹雪の奥。
氷の地平線の向こうで、何かがゆっくりと立ち上がった。
「……まだ終わっていません」
白い嵐の向こうから、
重く、低く、地面を踏みしめる振動が伝わってくる。
「冗談だろ」
「いいえ」
「カロリー足りねぇぞ……」
「補給を提案しますか」
「今はやめろ」
吹雪の奥で、影が完全に姿を現す。
「マスター」
「分かってる」
「第二ラウンドです」
「上等だ」
凍りついた世界の中で、白銀は再び立ち上がる。
まだ、終わらない。
読者の皆様へお願い、
作品をより良くしたいと考えています。
読みにくい点や改善点があれば、率直に教えていただけると嬉しいです。
完結まで火・木・土、16:30更新。20万字以上のストックあり(内12万字公開中)
次回も命を懸けた戦いを描きます。最後まで見守ってくれると嬉しいです。
※今回は生成AIの限界を感じました。
プロンプトで細かい指示出してるのに、一番カッコイイ出来上がりがガ〇ダム似って……。
50案ぐらいボツにしました。




