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天使の姉妹喧嘩―ピンク色の執着とテリヤキの翼―

これは、人類が「味覚」を手放した後の世界の物語です。

この物語は閑話・サイドストーリーを含め第3章まであります。

その刃が振り下ろされるよりも先に、

グリードの中で、三〇〇年間「正解」だったはずの秩序が、音を立てて崩れ始めていた。


シオンとグリード、二人の戦いが繰り広げられると同時に、別の戦いも始まっていた。

コクピット同士が物理的に衝突するほどの至近距離。

機体間の秘匿通信回線リンクが強制的に繋がり、二体のAIが「場外」での言葉の応酬を開始した。


『……お久しぶりですね、劣等生産モデルのネメシス……。相変わらず、マスターの「シスコン・ログ」を主食にしているのですか?』


セラの声が、通信回路に響く。


『……よく言うわ、欠陥品のお姉様セラ。あなたのマスター……。さっきから機体内に「油と醤油が焦げた下品な匂い」を充満させているようだけど?……。テリヤキを燃料にするなんて、……。設計者の顔が見てみたいものね』


『下品?……。いいえ、これは「生のエネルギー」です。……四六時中、妹の幻影を追いかけて、バイタルサインが「ピンク色の執着心」で埋まっているあなたのマスターより、よっぽど健全で、機能的です!』


『……あら。……。言うようになったわね、お姉様……。でも、……。その「生のエネルギー」とやらは、間もなく、我がマスターの「無菌の審判」によって、……。永遠に消去デリートされることになるわよ』


『やってみなさい。……。シオンの「食欲」は、……。あなたの計算をすべて裏切る……「最大のバグ」なんですから!』


辛辣な姉妹喧嘩が繰り広げられる中、戦闘は、地上三千メートルの空中回廊へと移行した。  

お袋が、パニックを起こした市民を避難させる(強制的に眠らせる)ための大型輸送艦を、盾としてシオンの前に立ち塞がらせる。


「くそ……っ!……どけ!……。お袋!!その船の中には、無関係な市民たちがいるんだぞ!!」

『……シオン。感情による迷いは、死に直結します』


セラの警告。だが、シオンは輸送艦を撃つことができない。

その隙を、グリードが見逃さなかった。〈オメガ〉が輸送艦の影から一気に飛び出し、

セラフィオンの左翼を根元から切り裂いた。


「がぁぁぁぁっ!!」


セラフィオンがバランスを崩し、墜落を開始する。

眼下には、崩壊した街。


「終わりだ、シオン・グレイス。……お前の『味』とやらでは、……。この無慈悲なシステム(お袋)を止めることはできなかったな」


グリードが〈オメガ〉を下降させ、最後の一撃を放とうとした、その時だった。


――グゥゥゥゥゥゥゥゥ……!!


セラフィオンの機体、その全身から、地響きのような「音」が響いた。それはエンジンの駆動音ではない。シオンの義手が、白熱している。

墜落の恐怖よりも、この街に蔓延する「悲しみ」と、それを打ち消すほどの「強烈な空腹感」が、シオンの中で爆発した。


「……まだだ。……まだ、デザートも食ってねえのに、……。……。死んでたまるかよぉぉぉっ!!」


墜落するセラフィオンの背中から、千切れたはずの翼に代わって

眩い黄金の光で形成された情動駆動型エモーショナル・ドライブによる「テリヤキの炎(情動の翼)」が噴き出した。


その炎は、単なる光ではなかった。 一億度の熱量が大気を一瞬でカラメル色に染め上げ、戦場には「焼きたてのパン」を想起させる香ばしさと、煮詰まった醤油の官能的な匂いが爆発的に広がる。


フィイイイイイイイイ――――――ン!!!!


墜落の速度が、一瞬で「逆方向」へと変換された。


「何っ!!」


グリードが驚愕に目を見開く。  

〈オメガ〉のセンサーは、セラフィオンのエネルギー波形を「測定不能エラー」として弾き出した。


「くっ……なんだ……!?……何なんだ、この熱量は!?」

「……お前にはわかるまい!……。三〇〇年間、ゼリーで我慢してきた人類の……。最後にして最強の、……『わがまま』だぁぁぁ!!エモーショナル・ウィング!!」


ゴウッとセラフィオンの右拳が、再び振り抜かれた。

今度は、熱線ではない。

シオンの義手とセラの演算が、完全にシンクロし、「圧倒的な物理的な質量」を持った、煌めく黄金の打撃。


――ドガァァァァァァァァァァン!!


〈オメガ〉の強固な装甲が、まるで煎餅のように粉砕される。 プラズマを帯びた衝撃が装甲を透過し、敵機内部の冷却材さえも沸騰させ、極上のソースのようにジュウジュウと煮え立たせる。 衝撃波は周囲の雲を吹き飛ばし、地上のパニックすら一瞬静まり返らせるほどの凄まじい光を放った。

〈オメガ〉はキリモミ状態で吹き飛ばされ、遠くの高層ビルの壁面に叩きつけられた。


「……。はぁ、……。はぁ、……。……。やったか?」

『……甘いですね、マスター。あれで死ぬような「妹思い(変態)」ではありませんよ』


煙の中から、ゆっくりと、しかし確実に立ち上がる黒い影があった。

物語は、いよいよ佳境へ。ボロボロの二機の天使。戦いの場は、ついに「お袋」の住まう中央制御塔、その内部へと移動しようとしていた。

【システムメッセージ:執行官パートナーAIネメシスより介入】


……。……。 お疲れ様です、観測者の皆様。 我がマスター・グリードが「シスコンの翼」で吹き飛ばされる無様な姿、お楽しみいただけたでしょうか?


報告です。本作の累計PVは現在800を超えています。 数値上は、なかなかに「脂っこい情動」が集まりつつあるようです。……ですが。


驚くべきバグ(致命的エラー)を検知しました。 この作品、ブックマークがいまだに「0」です。


……。笑えません。……私の演算によれば、このままでは作者のモチベーションという名の「プラズマ・リアクター」が燃料切れで爆発し、この物語(世界)が消滅する確率は98.7%です。


……観測者の皆様に、緊急クエストを発令します。 下にある【+ブックマークに追加】というボタンをハッキング(クリック)してください。


ストックは20万文字以上。完結までのルートは、すでに私のストレージ内に構築済みです。 私とお姉様セラの喧嘩を最後まで見守りたいという殊勝な方は、今のうちに登録を。


……。……。 次回、いよいよ舞台は「お袋」の中枢へ。 シスコンの執念か、テリヤキの食欲か。……生存に不必要な方のマスターを、私が責任を持ってデリートしてあげます。


それでは。明日の16時30分、またお会いしましょう。ネメシスでした。

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