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魔王、やめまぁす!  作者: ている
コーマとリリー
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第4話 鳥の名は

「コーマお前…いったいどこに行っていたんだ!!」


村に戻った俺は当然、親父にしこたま怒られた。

こんなにも本気で怒鳴られたのは、この10年間で初めてだった。


めちゃめちゃ怖かったのと同時に心配してくれたという温かさも感じて、なぜか涙が出た。


闇の魔王は泣かないのに、光の魔王は泣くのかって?


泣くに決まってんだろ!足の小指をぶつけただけで泣くぞ!インドアなめんな!


反面、リリーの母であるマーガレットさんにはめちゃめちゃ感謝された。

あと、「あの子の将来も安心ね」なんて言って、生暖かい目で見られた。


いやもらわんよ?なぜなら…


冒険者王に、俺はな(略)!からだ。


    ◇


「あ゛~~…」


そして、次の日。


勝手に森に行った罰として、兄貴の畑仕事を手伝わされていた。


幸い、筋肉痛に回復魔法は効くようになった。ただし治す際になぜか激痛が走る。

練度が足りないのかな?


最悪だー。痛いのやだよー。

けど、ちょっと筋肉が増えた気がする。超回復ってやつかな?ウホッ


でもこれじゃ、今日も筋肉痛だ。痛いのヤダヤダヤーダダヤーダ


「ははっ、普段から身体を動かさないからそうなるんだ」

「う゛~~…?」


ゾンビのようにゆっくりと、声のした方に首を向けると、そこには筋肉ムキムキのイケメンが鍬を片手に俺の方を見ていた。


このムキメンは、俺の兄貴のソーマ。

自分の所が終わったみたいで、どうやら俺のところも手伝ってくれるみたい。優しい!


「お前に任せてたらいつまで経っても終わらんだろ。ほらどけ、邪魔だ」

「ぬ゛~~…!」


何…?邪魔だ、だと?それは強者のみ許される台詞だ!我は魔王!

この光の魔王にできぬことなどない!


「ぼ~~…!」


見てみろ!もうこんなに!…終わってないけど。


「気合だけは十分なんだけどな…。よくお前がリリーちゃんを連れ戻せたな」

「み゛ゅ゛~~…」


そりゃ防御魔法を使って、獣やらなんちゃらトカゲやらを弾き飛ばしたからね。余裕よ余裕。

ぶっちゃけ、リリーを探して森を歩くのが一番辛かった。


「……何言ってるかわからん。やっぱりお前、ちょっと休憩しろよ」

「お゛っ…」


あれ、通じてなかった?シンクロ率が足りなかったかな?


    ◇


そのあと、畑仕事を(兄貴が)とっとと終わらせたので、晩飯を食ってガッツリ寝た。


畑から帰る前に、兄貴に剣の練習に誘われたけど、丁重にお断りした。

兄貴のスパルタ特訓なんかに付き合ってたらコーマッチョメンになっちゃうし。


(びくんびくんっ…ぱらららー)


再び蘇った筋肉痛を回復魔法で討伐し、ベッドで睡眠。

昼まで、いや夜まで寝る予定。起こす者みな傷つける予定。ちっかれたー…


…あれ、明日ってなんか予定があったような。ま、いっか!忘れた!


    ◇


(あさちゅん♪…あさちゅん♪)


「うーん…」


朝。スズメ(?)が鳴く声と窓から入ってくる光で目が覚める。

でも、昨日の疲れがまだ残ってる気がするなー。


昼まで、いや、夜まで寝る。なんか布団もあったかいし、良い感じ

…あれ、なんであったかいんだろ。


「うーん…?」


目をつむったまま、手を動かしてゴソゴソする。


(ふにゅっ)


すると、手が何か柔らかい物に当たる。

抱き枕かな?この世界にもそんなのあったんだなー

おら!こっちこいやぁ!存分に抱いてやらぁ!


「ひゃっ…」


んー?抱き枕を抱き寄せた瞬間に、リリーの声が聞こえた気がする。

起こしに来たのかな?


今日は寝てたいから隠れないとなぁ。といっても、身を隠す物は何もない…。


いやあるじゃないか、抱き枕が!コーマくん必殺!抱き枕ガード!!


(ぐいっ)


「は、はわわわわ…」


必殺!といっても抱き寄せただけだけどねー。あーねむ。


「うーん…すんすん」


なんかコレ、温かいし良い匂いがする。

妙に安心するような、懐かしいような、夢の中で会った、ような…。

コーマくんは魔法少女だった!?


交わした約束はよく忘れるけどね。


つーか…リリーの声が抱き枕から聞こえたんだよなぁ…これ、アレだよなぁ…


俺は冷や汗をかきながら、ゆっくりと目を開けたーーー


「えへへ、コーマ、結構積極的なんだね」


デデドン!そこにはリリーの綺麗なお顔が目の前にあった!

朝チュン確定!判決!死刑!


「いぃやぁぁぁぁぁ!?」


俺はバッ!とベッドから飛び出し、素っ頓狂な声を上げた。


そして驚愕の事実!俺たちはなんと服を!…着てるんかーい!!


    ◇


「約束、忘れてたでしょコーマ」


目が覚めた俺は、村の人気が無い場所まで向かっていた。

隣には、頬をぷっくりと膨らませて、ご立腹のリリー。


今日はリリーに魔法を教える約束をしていたんだけど、すっかり忘れてた。

ご機嫌取らなきゃー!


「怒った顔も可愛いよ(キラッ)」

「馬鹿にしてるでしょ」


残念!キメ顔で誤魔化そうとしたけど、バレちゃった。

親父譲りのイケメンフェイスも幼馴染には通じないらしい。


リリーも美少女だしイケメン耐性でもあるのかもしれん。

ま、いいや。そこまで怒ってはないっぽいし。


「時間も無いし行こうぜー」

「もう…わかったよ」


(ブォン)


俺はリリーにも透明化魔法を使って、森に向かう。


魔法の訓練だけなら家の中でもできるんだけど、リリーは魔力の制御ができないし。


お漏らし…じゃなくて、暴発の危険があるからね。


    ︙


「ここら辺でいっかー」

「うん」


村からそこそこ離れた場所まで進んだところで、俺とリリーは腰を下ろした。

さぁ始まります今回のお題は!?


「第一回、リリーの魔法をなんとかしよう大会~!」


いっえーい!パチパチ!ぱふぱふ!ぼんぼんぼん!


「……」


ジト目である。ハイテンションな熱も凍る勢い。


そこは「いえ~い!」って返してほしかったなー!オーディエンスの熱も冷めちゃうよ?


はい、せーのっ


「時間もないんでしょ?早くしようよ」

「はい…」


返ってきたのはマジレスである。

泣きそう。今日の為にコーマくんが八時間も寝て考えたんですよ!?

全く、リリーは真面目だなー。俺も真面目モードでいっちゃうぞ!


「ふぅ…こほん。それじゃあ始めるけど、覚悟はいいな?」

「う、うん…」


急に真面目な顔になった俺にリリーは、一体何をさせられるのか…と、びくびく震えた。


「うーん…?」


本来であれば魔力量に耐えられる訓練をする…んだけど、一昨日の魔力放出を見ている限りだとどうやら問題ないみたいだ。


少なくとも今の俺と同等、もしくはそれ以上まで耐えられるかな。

けど、制御が全く出来ない。


我慢はできるが、出す時は全力。100か0かの状態だ。

調整する為の蛇口がなく、オンオフのみのスイッチ、みたいな感じ。


分析終わり。方針は決まったな。


「じゃあまずは、全力で魔力を解放してみろ。こんなふうに…なっ!」


(ドンッ!)


俺は魔力を全力で解放。

迸る魔力波で、元の世界で言うところのスーパーサ○ヤ人みたいになってる。


髪は金色にならないけどね。


「す、すごい…」


迸る俺の魔力波を見て、リリーは口をぽかーんと開けていた。


フフフ、そうだろうそうだろう、光の魔王は凄いんだ!!

見せてやろう!リセットされてから、この10年毎日休まず培った俺の魔力制御を!


「ここから少しずつこの放出を緩めていく。この状態を100としたら、まずは50ができるように調整する。はっ!」


(ボッ)


「わ、すごい、一瞬で…」


クックック…あの闇の魔王(推定)に褒められていると思うとテンションが上がるな!好きなだけ見るがいい!


「これができたら75、25、更に細かく10、20、30…、更に更に1、2、3、4、…」


「あ、あの、コーマ…?」


「0.1…、0.01…、0.001…、0.0001…、0.00001…、0.000001…、0.0000001…」


なんだ闇の魔王よ!今は話しかけるでない!

さすがにこのレベルの魔力制御は、俺でも集中力が必要なのだぞ!


「細かすぎて逆によくわかんない。誤差」

「……」


んー!まだリリーにはこの魔力制御の凄さがわかんなかったかな?

ほら、ここの魔力の薄さとか芸術だよ?すごくない?


誰だぁオタクキモイって言ったやつぁ!ぶっ飛ばしてやる!

あっ。


「…まずは50から頑張ろうか」


リリーの顔には「この魔法オタクめ…」と書いてあった。さすがに可愛い幼馴染はぶっ飛ばせないなぁ…


そういえば、前世で側近に「凄すぎて逆にキモイ」って言われたことがあったな。

ぶっ飛ばしてやる!!

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