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団栗と宿命

 最初にかけっこをしてから数年が経った。

 小人は、長い髭とサングラスが特徴的な老人の修行によって鍛えられ、武闘大会で優勝したほどの男だ。その脚の速さはリスに負け続けていた時とは比べ物にならないほどに上がっている。

 そのため、リスとの競争での勝数は今や互角となっていた。

 これまで百三十五勝百三十五敗。百三十一勝まではリスが勝っていたのだが、小人の成長によって、今ではもうリスは勝てなくなってしまっていた。


「今日こそ、私の足の速さを見せつけてやろう!」


 片腕で大量のどんぐりを抱える余裕もなく、しかし栄養補給のため、どんぐりを片方の手で食べながらリスは言った。どんぐり虫が入っていた。

 リスは小人に勝つためにどんぐり虫入りどんぐりを食べていた。どんぐり虫は栄養満点だった。ドングリス国立どんぐり研究開発機構どんぐり研究所によると、どんぐり虫入りどんぐりを食べることが小人に勝つための最適解だった。

 彼は(ぼく)の言ったことをすっかり忘れていた。


「今日で勝ち越してみせる!」


 成長した小人は得意になることもなく、ある種の傲慢さすら顔ににじませなかった。負けているにもかかわらず、リスは少しも不快感を感じていなかった。

 もちろん、かけっこの時以外も前の小人と同じだったので、二人は仲良しのままだった。


「じゃあいくよ。よーい、ドン!」


 ドン!

 勢いよく駆け出したリスは車に跳ね飛ばされた。


「リッ、リス―ッ!」


 小人は駆け出した。ああ、だめだ。この様子ではリスはもう助かりそうにない……。


「こ、小人……」


 かすれそうな声でリスは小人に呼びかける。


「ど……どんぐり、もっと……食べたかった……ガクッ……」

「リッ、リスーッ!」


 こうしてリスは亡くなった。懐に大量のどんぐりを忍ばせたまま。

読んでくれてありがとう。

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