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団栗と転移

 リスの死後、小人は絶望していた。

 小人の友達はリスだけであった。

 リスは、孤独な小人が心を開けた、ただ一人の友人であった。人じゃないけど。


「ああ、リス……どうして逝っちまったんだ……」


 そんな小人を見て不憫に思った(ぼく)が彼に救いの手を差しのべた。


『小人よ、もしリスに会いたいのなら、このオレンジ色の玉を七つ集めなさい。さすれば願いは叶うでしょう……』


 そうしたら、小人は確証もないのに、健気にも玉を六つ集めた。

 そして今、彼は最後の一つを手に入れようとしていた!



「はあっ、はあっ……く、なかなかやるな……」


 ボロボロの格闘着を(まと)った小人は宙に浮き、敵を睨み付ける。

 その視線の先には腕が四本、目が三つの、これまたボロボロの格闘着を(まと)った人間。


「お前がはじめてだぞ……あの技を受けて平気だったのは……」


 小人の背後には、謎のエネルギー波によって破壊された壁。

 彼らは今、武闘大会の優勝争いをしていた。


「次で……決まる……」


 そう言ったのは謎の解説者である、長いヒゲとサングラスが特徴的な男。


「小人……負けないで……」


 祈るように手を組んで小人を応援する、なにやらヒロインらしき女性。

 小人は冒険を通じて孤独癖を克服していた。


「いくぞ!」

「おう!」


 互いに相手へ向かって突進した二人。


「俺たちの戦いはこれからだ!」

「俺たちの戦いはこれからだ!」



 優勝したのは小人だった。

 ついに小人は玉を七つ集めた。

 そろそろ僕も降臨しなければいけない。

 小人の前に降り立つ。


『小人……小人……聞こえていますか……?』

「ええ、聞こえていますよ。これで、リスに会えるんですよね」


 小人は七つのオレンジ色の玉を差し出した。


『ええ、これさえあれば、僕の願いが叶います。ありがとうございます。お礼に異世界に送ってあげます』

「あっ、玉の力で転移するわけじゃないんだ……」


 どうでもいいところにこだわる細かい些末主義者小人の周りに集まる仲間たち。


「小人……どうしても行っちまうのか?」

「行かないで、小人!」

「お前は強くなりすぎた……この世界はもう、お前には狭すぎるのかもしれん……」


 発言は三者三様。

 小人は引き留められるとは思っていなかったのか、少しためらいながらも、しかし、決意は曲げず、異世界へ行くことを宣言する。


「みんな、ありがとう。でも、僕は異世界へ行かなければいけない。果たさなければいけない約束があるんだ……」


 こうして、小人は異世界転移した。リスの好きだったどんぐりをお土産に持って。

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