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団栗への情熱

 ……。

 気がついたら異世界だった。

 森の中で目を覚ましたリスは安心した。森なら生きていけそうだ。しかし、どんぐりがないのなら生きていてもしょうがない。

 リスはヤケになっていた。


「はあ、どんぐりがないんじゃあなぁ……。かけっこだって、今の体じゃあ……」


 水面を鏡にして自分の体を見るリス。

 かつて強健だった脚は短く細く、腕はどんぐり一個抱えるだけで精一杯。

 彼は子供に戻っていた。


「まあ仕方ない。まずは生きることだけ考えよう。生き甲斐がないとは言っても、苦しいのは嫌だしね」



 そうして三年が経った頃、リスはかつてより強靭に育った肉体に驚いていた。

 久しぶりに水面鏡で姿を確認したときのことだ。


「な、な、なんだこれーっ!」


 かつての弱々しさは見る影もなく、筋骨隆々、泰然自若、凄まじい威圧感の巨大なリスがそこに鎮座していた。

 リスはその極太眉毛をくいっ、と上げて、目を大きく見開いた。


「こっ、これが……ぼくだというのか?」


 声も野太かった。

 思えばみんな、前世の時と比べて優しかった気がするけど、あれってこの見た目が理由なんじゃ……。

 リスは苦悩した。

 苦悩して、苦悩して、やがて開き直ってこの姿を利用することにした。


「この威厳があれば、森の動物たちを従えて、どんぐりを作る研究ができる」


 こうして、ドングリス・キングダムは建国された。



 幸い、この世界での優劣はかけっこで決まったので、血は流れなかった。

 威厳は関係なかった。

 身体能力(フィジカル)で圧倒した。

 逆らうものは、(みな)スタートラインに置き去りにした。

 風を切るのは気持ちよかった。


「ああ、これでどんぐりさえあればなあ」


 リスは玉座に腰掛けながら夢想した。どんぐりがあった前世の世界を。

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