水槽
息を吐く
金魚のような空間で
わたしのいのちが泳いでいる
泳ぎの知らないメダカのような
目であちこちを見る
水槽という光の中で
人は生きている
その意味のない意味に
さも当然のように
暮らしている
明日は暴落する太陽
昨日は脱落する気流
気圧の谷に挟まった
その景色に驚いた日本列島は
呻いている
そして葉桜は美しい緑で
自分の名も知らない
小鳥がか細い足で
掴まる枝の震えに
まだ見たこともない
響きの連なりを聴く
金魚のような音感で
公園から道端へと
流れていく
それは
舞い散る
悲しい音の羽根