第2話 就職
俺はとりあえず朝食を食べ終わった後、騎士団詰所を出た。
(さて・・・これからどうするか)
そんなことを考えていると、あの騎士に呼び止められた。
「お前の車、ここに運んでおいたぞ。お前さえよければ、少し見せてくれないか。」
俺は
「はいよろこんDE☆」
と言って承諾したのだった。
駐車場に着くと、そこには俺のGR86が置いてあった。
運転席に座るとシートベルトを締めた。
そしてエンジンをかける。
キュルルル・・・ブロロロロッ!
軽快な音を立ててエンジンは始動した。
(よしっ、かかったぞ!)
俺は心の中でガッツポーズをしたのだった。
そんな俺の様子を後ろから見ていたその騎士は驚いていたようだ。
しかし、すぐに冷静になったようで俺に聞いてきた。
「お前、その車どうやって手に入れたんだ?俺が知っている車と見た目がだいぶ違うようだし。」
まあこの辺の車はどれも馬車から進化したばかりの初期のものばっかだしな。
無理はないか。
「俺が買ったんですよ。もっとも、俺がいた世界では一般的なスタイルだし、この車は時速240キロまでしか出ないけど、時速500キロ出る車もあるくらいなんですよ。」
俺のその言葉に、彼は衝撃を受けた。
「240キロ!?少なくともわがマーロ王国の最高速度保持車でさえ時速100キロなんだぞ!」
まあ、驚くのも無理はないか。
「ちなみに、この車は日本という国にあるトヨタのGRブランドで、俺の世界じゃかなり人気のスポーツカーなんですよ。」
俺が自慢げに言うと、彼はさらに驚いていたようだ。
「お前の世界って凄いんだな・・・」
俺は苦笑いしながら答える。
「まあね」
するとその男は言った。
「そういえばまだ名前を教えてなかったな。俺の名前はヴェネーノだ。」
「ヴェネーノさんですね。よろしくお願いします。」
俺はぺこりと頭を下げる。
すると彼は言った。
「おう!これからよろしくな!」
そして俺たちは握手をしたのだった。すると、
「お前にぴったりな職業を教えてやろう。」
と、ヴェネーノは言った。
「俺にぴったりな職業?」
俺は首を傾げる。
そんな俺の様子などお構いなしに、ヴェネーノは続ける。
「ああ、お前にとって最適な職業があるんだよ!」
(ほう?一体どんな職業だろう?)
と俺が考えていると、彼は言った。
「それは・・・俺が案内する。異世界人の職業案内も、騎士の仕事だからな。」
そういい、ヴェネーノは俺のGR86の助手席に乗り込んだ。俺はヴェネーノに聞いた。
「やっぱ異世界といえば勇者ですよねぇ」
そう聞いたら彼はこう言った。
「何言ってんだお前。勇者が必要になる異変は起こっちゃいねぇよ。」
「そっすか・・・」
まあ、当然だよな。
俺はそんなことを考えながらクラッチを切り、アクセルを踏み込んだ。
ブォンッ!!
音を立ててドリフトでターンし、駐車場を後にしたのだった。
しばらく大通りを走ると、なんだか俺のGR86がとても速いスピードで走っている気になった。
時速100㎞も出てないけど。するとヴェネーノは俺に言った。
「なあ、颯太。この車って凄いな」
その言葉に俺は笑顔で答える。
「へへっ!そうだろ!」
(まあ、異世界人だからね・・・)
そんな会話をしながら走っていると、ある建物に着いたようだ。そこには一軒の建物があった。
その建物の隣には当時のような見た目の自動車が駐車されている。
まあここは異世界だし。こまけぇこたぁいいんだよ!
そんなことを考えていると、ヴェネーノは
「ここは自動車競走の本部だ。お前なら間違いなく優勝できると信じているからな。」
と言い、俺の肩をポンッと叩いた。
「え?俺この世界でそんなにスピード出したした事ないんですけど・・・」
俺は不安になったが、彼は笑顔で言った。
「大丈夫だ。さっきあんなに飛ばしていたからな!」
まあ・・・それなら安心かな?
そんなやり取りをしながら、その建物の中に入っていったのだった。
「ここがマーロ王国自動車競走協会だ!」
(へぇ~)
俺は心の中で呟いた。
そしてヴェネーノが窓口のおじさんに話しかけた。
「やあ、ロッキー。」
その言葉におじさんは反応する。
どうやらこの小太りなおじさんはロッキーという名前で、協会の理事長のようだ。
「ん?ああ!ヴェネーノじゃないか!」
どうやら知り合いのようだ。
そして俺はその会話に混じった。
「あの・・・どうも初めまして・・・」
俺がそう挨拶をすると、彼は言った。
「おお!君がその異世界人か!よろしくな!」
そういい俺と握手する。
まさかこれが複数国家をまたぐ路上最速伝説の始まりになるとは、誰も想像していなかった。