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性善悪説  作者: 板近 代
2/6

純音学

走れメロドラマなんて

くだらないジョークを言った君は

文学青年気取りで

私を抱き寄せた


それは本屋の帰りであり

君の浅はかさに呆れたけれど

好きになってしまったことだけは、本当だったという


君はどうせメロスしか太宰を知らず

好きな(うた)は、汚れちまつた悲しみに

不思議の国のアリスは未読だろう


……翻訳次第で景色が変わるから




走る気力もないなんて

あっさり私を振った君は

文学から音楽に

すぐに乗り換えた


そして本屋は閉店し

君は(あで)やかさに溺れたけれど

好きになってしまったことだけは、忘れられなかったという


君は銀河鉄道の夜に旅立つ

好きな詩が、ジャバウォックになるならば

鏡の国のアリスを読んでやろう


……点眼薬ごときで常識が変わるなら




どうすれば君は私を見た

どうすれば君は私を見た

おそろいに買ったヘルマン・ヘッセは

まだ一頁も読んでいない

車輪の下で(ひしゃ)げる君を何度も思い浮かべたのに


どうすれば君は私を見た

どうすれば君は私を見た

口ずさんでいたあの音楽(うた)

タイトルが今も見つからない




走れメロドラマなんて

くだらないジョークを言った君は

文学青年気取りで

彼女を抱き寄せた


その彼女に自分を重ね、私は恋を夢想した。

互いに触れず(けが)れぬまま、私は恋を終わらせた。

これが純文学でないのなら、私は君を諦める。

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