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第九話
暗闇が覆う夜の街並み。日本の首都、東京の、ある路地裏で――……。
「……いや……っ……!やめて!来ないで!!」
走るのに不向きな高いピンヒールで必死に何かから逃げる若い女性。辺りは人通りのある賑やかな通りと、住宅街の境、ちょうど人気のない裏道。
「……いや……!!誰か!!助け……っ……」
空気を切る音。女性の悲鳴は途中で途切れた。女性を襲う覆い被さる黒い影。しばらくすると、何かを啜る音が聞こえてくる。その影の間から覗く女性の顔は恐怖と絶望で目が見開かれていた。
その光景を少し離れた物陰から眺める人影がある。その人物は目の前の凄惨な光景を目にしても女性を助けようとはしない。むしろ愉悦を表すかのように、唇の端を歪につり上げた……。
しばらくして、その黒い影たちが去ったあとには、恐怖と苦痛に顔を歪めた憐れな女性のこと切れた身体が冷たい地面に横たわっているだけだった……。