表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/19

第二話


「……ふ……?……」


奇妙な声を上げて目を覚ましたルキア。原稿を仕上げて、そのまま机で眠ってしまったらしい。数日間身なりを構わなかったせいで、普段は艶のある金髪もボサボサだ。しかしそんなことは気にせず、ぼうっとした表情で窓の外を見る。大きな窓から薄っすら欠けた満月に近い月が見えた。壁に掛けてあるカレンダーも見る。そして自身の担当編集者である希林の言葉をぼんやり思い出す。


『今回もお疲れ様でした、棠月先生。ゆっくり休んでくださいね』


『うん〜ありがとう希林キリンくん〜』


希林キバヤシです……ちゃんとベッドで寝てくださいね。机で寝たらダメですよ』


『ん〜ふわぁ……ありがと〜希林キリンくんもお疲れさま〜』


『だから希林キバヤシです!……はあ……また三日後に来ますので、それまでよく頭休めといてください……では』


『りょうかい〜』


『僕はまだこれから車で三時間ドライブですがね……』という目の下にくっきりとクマを飼った担当編集者の呪詛のような呟きは、もうすでに机の上で意識の落ちたルキアには届いていなかっただろうが。


「まだ夜だから三日あるね〜。ゆっくり寝よう〜」


ズルズルと机から剥がれて、同じ部屋にある休息用のデイベットに横たわる。希林が用意してくれたであろう毛布にくるまると、途切れていた睡魔が再びやって来る。


「……おやすみ〜……」


その寝顔は月明かりに照らされてハッとする程美しい。しかし彼女は気づいていない。今は原稿が終わったその日の夜ではない、次の日の晩であることに……。つまり丸一日彼女は机で寝ていたのだ。彼女がその勘違いに気づいて希林にまた怒られるまであと二日ーー……。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ