35:いざ出陣!
翌日。
昨日の夕方に雪はちらついたが、積もることはなかった。
でも霜が降りていたので、窓から外を見ると、庭園が白っぽく見えている。一瞬、雪が積もっているのかと思ってしまう。
アイス皇国は本当に、冬本番に向かっているわね。
そんなことを感じる朝の目覚めだった。
そんな目覚めの後は、クラウスと朝の幸福な紅茶タイム。
その後は……。
身支度をして朝食となる。
朝食の席に行くのは、昨日に続き、緊張してしまう。
キリル殿下は口止めという理由で私にキスをしようとしたのだ。それは未遂で終わっているが、そんな行為をされては、いやでも意識してしまう。
だっていまだ婚約者であるクラウスとさえ、私はキスをしていない。彼の寵愛を受けているのはいつも私の左手なのだから。
とはいえ、私が変にキリル殿下を意識してしまうと、クラウスは気になってしまうだろう。
ここはもう、アレしかない。
伝家の宝刀、私のお家芸、無我の境地モード!
ダイニングルームについてからは、無我の境地モードを発動した。
おかげでキリル殿下に対しては、視線を向けても胸の下しか見ておらず、完全に眼中にない状態にできたと思う。
しかも昨日のように皇妃が爆弾発言をすることもないので、実に平和に朝食の席は終わった。
今日はアイス皇国に来て、4日目だ。
初日に皇妃による洗礼を受けたものの、今のところ皇妃からは、先制パンチ以外の嫌がらせは受けていない。それは私のシュガークラフト作戦が功を奏しているのか、それは分からないが、とにかくうまくいっている。
むしろ皇妃の息子二人と第四皇子とひと悶着あり、私は右往左往することになっていた。
ただ……。
そのひと悶着を通じ、いろいろ分かったこともあった。
皇太子も第三皇子も第四皇子も、みんな心に傷を負っている。
この三人が傷を負うことになった原因は……皇妃だ。
皇太子の政略結婚を支持したのは皇妃。第三皇子に愛を与えなかったのも皇妃。第四皇子が心に闇を抱えるきっかけも皇妃。クラウスだって……皇妃のせいで“氷の貴公子”となり心を閉ざしていたのだ、私と会う前までは。
そう考えると今は平和だけど、やはり皇妃には何かある。
皆が言う「証拠」がないだけで、本当は……。
ともかく。
今は穏やかだが、午後にはお茶会がある。
皇妃に誘われたお茶会が。
平和ボケなんてしている場合ではない。
気持ちを引き締める。
今日は一日クラウスが公務だったので、朝食の後は、イワンのアトリエに行った。そこでお昼まで肖像画を描いてもらう。昼食の後は、皇妃のお茶会の時間まで、ウッド王国から結婚式に招待する人のリスト化を行った。
アイス皇国として招待したい、ウッド王国の要人のリスト化は、既にクラウスがしてくれている。よって私は家族や親戚や友人などで、招待したい人をまとめればよかった。
「セシル様、そろそろご準備されますか?」
羊皮紙から顔を上げ、時間を確認すると、確かに着替えをした方がよさそうだ。
「マリ、エラ、お願いしても?」
「「おまかせください、セシルお嬢様!」」
二人は笑顔でドレスを用意し、着替えを手伝ってくれる。
選んだドレスは、淡い青みがかったラベンダー色のジャガード生地に、多彩な色の花がデザインされているもの。身頃には立体的な花も飾られ、とても華やか。集めた情報によると、皇妃はお茶会で最大限のオシャレをして参加することを求める。オシャレをしている=敬意を払っている、という方程式が成立するからだ。
髪は後ろでまとめ、いつもの紫のマーブル模様の鉱石のついた髪留めを飾った。
後はイヤリングをつけ完成。
「とても幻想的で素敵ですよ、セシルお嬢様!」
「おとぎの国のお姫様みたいですよ、セシルお嬢様!」
マリとエラに褒められ、気持ちも上がったところで、いざ出陣だ。
エスコートしてくれるのはトニー。
クラウスは、ジョセフを私の護衛も兼ねて付き添わせることも考えた。でもジョセフだと、皇妃をとても警戒しているとあからさまに出てしまう。そこでトニーで落ち着いたわけだ。
隊服姿のトニーは、昨日のキリル殿下の一件もある。今日は失敗しないと気合い十分だった。
ということで既に渡り廊下を歩き終え、皇宮についている。そして廊下を結構歩いたと思うのだが、まだお茶会の会場となる部屋に着かない。
「トニー、まだお茶会の部屋に着かないのかしら?」
「着きましたよ、セシル様!」
その大きな扉は、部屋の扉にしては大きすぎる……と思う。
でもトニーは扉をノックして、扉は内側から開かれ、中を見た私は度肝を抜かれることになる。
「な……、こ、これは……!」















