13:煌めいているのはあなたですよ!!
昼食の後は、お土産に添えるメッセージを書くことになり、それはクラウスも手伝ってくれる。私がメッセージをカードに書き、クラウスはそれを封筒にいれる。宛名を私が書くと、クラウスはその封筒をお土産に添え、マリやエラに渡す。二人はオルガ配下のメイドに案内され、部屋を出て行く。お土産を届けるためだ。
この流れ作業をしているうちにティータイムとなり、一旦休憩。
アイス皇国の名物という蜂蜜のケーキが登場した。それはミルフィーユのようなケーキで、蜂蜜を練り込んだ薄い生地の間に、クリームと砕いたナッツやクルミがサンドされていた。全体に仕上げのように蜂蜜がたっぷりかけられており、砂糖は不使用。でもとっても甘くて美味ししい!
このケーキで元気を回復し、再びメッセージを書き、お土産配りがなんとか完了し、晩餐会に備え、ドレスに着替えることになった。
ドレスはクラウスがこの日のために用意してくれたもので、身頃からスカートの三分の二までは白藤色。裾から三分の一はジューシーな葡萄色が、ぼかしのように入っている。オーバースカートは、珍しいラメ仕様の糸で、小花が刺繍されており、さらに花びらを模したビジューが散りばめられていた。その色は濃淡のある紫とピンクで、キラキラと煌めきを放っている。
身頃には、胸元を中心に立体的な小花が飾られている。
いつものマーブル模様の紫の宝石は、ペンダントにして身に着けた。髪はハーフアップにした左右のサイドを編み込みにし、後ろで銀細工の髪飾りで留めている。そして白い毛皮のふわふわのケープを羽織って完成だ。
「うんんん! セシルお嬢様、とっても素敵です! 白いふわふわケープも、そのドレスに良く合っています!」
「ドレスもセシルお嬢様もどちらも完璧ですよ。クラウス様も一目見て、華やぐような笑顔になると思いますわ」
着替えを手伝ってくれたマリとエラは両手をあわせ、ハイタッチして喜んでいる。そこへクラウスがやって来た。
「セシル嬢……! なんて美しいのでしょうか。まるであなた自身が宝石になったかのように煌めいています」
クラウス!
煌めいているのはあなたですよ!!
浅紫色の瞳が嬉しさでキラキラしているのは勿論、その装いが洗練され、それはもうため息が出るような麗しさ。
なんて、なんて、なんて、素敵なのかしら!
私にあわせ、白藤色のテールコートを着て、ホワイトシルバーのマントを羽織っている。マントの裏地はタイと同じロイヤルパープルで、そのメリハリが秀逸! ベストは藤色に銀糸のアラベスク文様が、刺繍で表現されている。
アイスシルバーの髪を揺らし、そばに来たクラウスは、私の左手をとり、優雅に口づけする。
あ、また私の左手ばかりが寵愛を受けている……!
もはや自分の手に嫉妬するというシュールな状態が、デフォルトになりつつある。
「セシル嬢をエスコートできる幸運を、神に感謝したい気持ちです」
「そんな大袈裟ですわ」
「まさかこのアイス皇国で、愛する女性をエスコートできるなんて……。わたしはとても幸せです」
なるほど。
そう言われてしまうと……。
89歳の未亡人女王と結婚させられるかもしれなかったのだ、クラウスは。
それを思うと……。
クラウスが今、ここまで感動してくれる気持ちはよく分かる。
「クラウス様、晩餐会へ参りましょう」
ジョセフの声にクラウスは「そうだね」と答え、そのまま私をエスコートして歩き出す。
「セシル嬢、この離れは一応廊下で皇宮とつながっています。でも廊下に屋根が一部ない場所があるのです……。よって馬車で皇宮の正門に向かうことになります。不便な離れで申し訳ないです」
クラウスのその表情から、私はすぐに察することができた。
離れは完全に独立した作りにする場合もあれば、渡り廊下でつながっていることもある。廊下でつなげる場合、屋根をつけるのがほとんど。だって屋根がなければ雨の時、困るから。
それなのに一部で屋根がないのは……。間違いない。皇妃がそうすることを要求したのだろう。予算の都合だの、適当な理由をつけて。
それにしても、屋根がない場所が一部なら、今日は雨も降っていない。気にせず廊下を使ってもいいのに。ふわふわの毛皮のケープを着ている。ドレスのスカートは重ね着しており、一番下にウールのものを履いている。タイツだって履いていた。
防寒対策はできているから、歩きでもいいのに。
そう思っていた。しかし……。
「あっ……!」
正面入口の二重の扉を出ると、薄暗くなった夜空から、花びらのように降ってきている物が見える。
……雪だわ!
「クラウス様、雪が!」
「ええ。一足先に冬が始まっているアイス皇国ですが、この冬では初となる雪が降り始めました」
思わず手で雪を受け止めようとすると……。
「ウッド王国はあまり雪が降らないのですよね。ここでは雪が降らない日の方が、冬は少ないですから。雪遊びは沢山できますよ。降り始めの数日は無理ですが、そこを過ぎるともう辺り一面雪景色。そうなったら雪遊びをしましょう。今は体が冷えてしまいますから、馬車へお乗りください」
クラウスは優しくそう言うと、私を馬車へと乗せてくれた。





























































