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完結●断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた~回避成功編~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【続編】

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2:紅葉の楽しみ方

「気球、ですか?」


「ええ、そうですよ。セシル様。アイス皇国は針葉樹林が多く、永久凍土に着地することになっても困るでしょう。でもウッド王国は違う。平原や平野も多いわ。風向きを考え、山の方へ向かわなければ、上空から紅葉を堪能できると思いますわよ」


実に斬新な提案をしてくれたのは、アイス皇国から妃教育のためウッド王国に来てくれたナンシー男爵夫人。


黒髪はいつもしっかりアップにし、ぽってり唇に真紅のルージュをのせている。目元に目立つほくろがあり、そのおかげでとても色っぽい。腕も首もほっそりしているのに、胸が大きい。今日もダークパープルのドレスを着ているが、胸の大きさが際立っている。


そんな彼女は歴史学が専門だったが「別に歴史が好きだったわけではないの。男爵家なんていつもお金はかつかつ。でも歴史を学びたいご子息ご令嬢は多いから、お金になるのよ。それにね、家庭教師はティータイムや食事に招かれることも多い。給金も良く、食べるのに困らないって最高よ」という本音を明かした上に「アイス皇国の歴史を知る。それはそれで面白いわ。でも現代の方が好き。楽しいのよ、新しいことって」と言ったのだ。


つまりこてこての保守的な歴史学を教えながら、自身は自由人。そして今、気球という空から紅葉を楽しむという画期的なプランを、ティータイム中の私へ提案してくれたのだ。


クラウスは国王陛下に呼ばれ、王宮へ出向いていた。ここ一年間、クラウスは忙しくしており、国王陛下が大好きなナイン・メンズ・モリスの対戦相手になることが少なかった。ようやく私の妃教育がひと段落し、そしてクラウス自身も課題を終えたことを知ると……。


ちょいちょい声がかかるようになり、クラウスは王宮へ足運ぶことになった。


そうやって足を運んで帰って来る時は、必ず豪華なお土産を持って帰ってきてくれる。それは国王陛下の私へ気遣い。妃教育に追われ、婚約者であるクラウスとゆっくりしたいであろう私から、クラウスを奪ったことへのお詫びというわけだ。


まさか国王陛下にこんな気遣いをしてもらえるなんて、もうビックリ!


でもこれもそれもクラウスが、国王陛下に気に入られていることが大きいと思う。


ということでこの日も、丁度ナンシー男爵夫人とのお茶が終わってしばらくしたタイミングで、クラウスが帰宅した。クロカッス色のドレスを着た私は、エントランスに彼を迎えに行く。


「セシル嬢、ただいま戻りました」


王宮に出向いたクラウスは、かっちりした白藤色のスーツを着ている。ロイヤルパープルの厚手のマントを纏った姿は惚れ惚れとする美しさ。


高貴なオーラが全開で、素敵……。


「クラウス様、おかえりなさいませ。今日の勝負はいかがでしたか?」


「うん。今日は陛下に勝ちを何度かとられたけど、その分、ご機嫌になってくれてね。珍しいお土産をもらったよ」


クラウスが後ろを振り返ると、トニーが巨大なカボチャを持ち、ジョセフが持つ籠にはいっている果物は……。


「これ、アケビ……ですよね? どうしてこれを?」


するとクラウスは驚いた顔で私を見る。驚いていても、上品なのよね、クラウスは。


「セシル嬢、もしや妃教育で学んだのですか? いや、アイス皇国でもこの果実どころか、この植物は生息していません。こちらの果実は東方から伝来したもので、エドワード殿下が妹と二人、温室で栽培していたそうなんです」


そこでクラウスの表情が悲哀を帯びる。


「二人で育てていた時は、あまり実らなかったのに、妹が亡くなってからは……。まるで寂しそうにするエドワード殿下をなぐさめるかのように、大量に実を付けたそうです」


うーん、今の話には涙腺が刺激される。

クラウスの悲しみ、エドワード様の気持ちを思うと……切ない!


「今回、珍しい果物ということで、殿下が国王陛下に献上し、陛下がわたしにお土産でくださったのです」


そ、そうなのね。

アケビは……小学生の頃の秋の遠足で見つけて食べたことがあったのだけど。どうやらウッド王国にもアイス皇国にもない果実なのね。


「そうなのですね。多分、妃教育で学んだ……のかしら?」


「! クラウス殿下、おかえりなさいませ。……護衛騎士殿がお持ちのその籠の果実は!? 初めて目にしましたぞ。新種ですか!?」


おじいちゃん植物学者……ピーター子爵がエントランスへやってきた。

王宮から戻るクラウスが、国王陛下からのお土産で、珍しい花や植物を持ち帰るので、最近はこうやってエントランスへ来ることが増えていた。


「ピーター子爵、こちらはアケビと呼ばれる東方伝来の果実だそうです。大変珍しいもので、ウッド王国にもアイス皇国でも見られない植物で、温室でしか育たないと聞きました」


クラウスが優雅に答えると、ピーター子爵は「何と! クラウス殿下、どうか余命少ない私にお一つ譲っていただくことは、可能ですか?」と尋ねる。クラウスは「ええ、お持ちください」と快諾し、籠の中のアケビをいくつかピーター子爵に渡した。


どう考えてもアケビについて私に教えるなら、植物学者であるピーター子爵だろう。でもその彼がアケビを知らず、私が知っているという、ちょっとやらかしてしまった状況だった。でもクラウスは、特にその後、私を追及することはない。そこで私は、アケビの件にこれ以上触れられないようにすべく、クラウスの興味を別に向ける作戦をとることにした。


作戦……なんていうほどではない。元々クラウスに聞くつもりだったこと。そう、それは……。


「クラウス様。紅葉を楽しむ件ですが、今日、ナンシー男爵夫人から面白い提案を受けたのです。上空から紅葉を楽しむ、気球に乗ることを提案されたのですが……」

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