表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完結●断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた~回避成功編~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【続編】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/102

プロローグ~無理難題~

「あの、セシルお嬢様」


マリとすっかり打ち解けている、エドワード様が紹介してくれた使用人の一人で、私の専属メイドになったエラが遠慮がちに声をあげた。


エラは、赤みがかった金髪ボブに、グレーがかかった青い瞳の23歳。宮殿勤めが5年あり、控え目だが仕事はきっちりでき、さすがエドワード様が紹介してくれただけあると、信頼しているメイドだ。


そのエラが私の名を呼び、こう尋ねた。


「ドラゴンの樹と呟かれていましたが、もしやご興味ありますか?」


「興味……。私よりクラウス様と植物学者が興味津々なのよね」


「そうなのですね。エドワード様は王宮にご自身専用の植物園をお持ちで、そこにドラゴンの樹があります」


「本当に!?」


もう思わず紅茶の入ったティーカップを、音を立ててソーサーに置きそうになってしまった。


だって!

まさか王都に!

しかも私の推しのエドワード様の専用植物園にドラゴンの樹があるなんて!!


もう本当にビックリだわ。


でもこれはエドワード様に相談するしかない!


休憩時間を使い、早速エドワード様に手紙を書き、ドラゴンの樹を見せていただけないか頼むと……。私の推しは優しい。クラウスと私が日中は忙しいことを踏まえ、夜、植物園に来ることを提案してくれたのだ。


その結果。


クラウスと私は、植物学者以外にも何人かの教師……専門家を連れ、夜の王宮を訪れた。そしてエドワード様は、彼専用の植物園へ、私達を案内してくれたのだ。


月夜に照らされた植物園は、なんだかとても幻想的。クラウスにエスコートされる私は、何のためにここに来たのかを忘れそうになる。一方の植物学者をはじめとした教師達は、ドラゴンの樹をじっくり観察することができた。


クラウスにドラゴンの樹を見たいと言った植物学者は、白髪に長く白い髭を伸ばし、まるで魔法使いみたいであり、まさにおじいちゃんだったが……。


「いやはや、まさか。生きているうちにドラゴンの樹を見ることができるとは思いませんでした。ウッド王国でも辺鄙な場所にあると聞いていたので、図鑑でも渡され、これでご勘弁を!と言われると思っていましたから。セシル様、ありがとうございます」


そう言われると、頑張ったかいがある。俄然、私も嬉しくなってしまう。

そんな私にそのおじいちゃん植物学者……ピーター子爵は、驚きの事実を教えてくれた。


「妃教育を受け持つ教師陣は、セシル様にいろいろ無理難題を言っているでしょう。これもまた、妃教育の一環ですから」


「!? そうなのですか!?」


「ええ。アイス皇国の宮殿にはありとあらゆる人間がおり、いろいろな欲望が渦巻いています。その渦の中心にいるのが皇妃さま……。そのお姿はまあ、お美しく。“氷の華”と謳われていますが……。美しい氷の華に睨まれると、その体は凍り付く。一度睨まれたら最後。あとは指でツンとされた瞬間、凍った体は砕け、ジ・エンド」


氷の華。


美しい言葉だと思う。でもその実態は意に沿わない人間を次々と凍らせるような女性ということ。


「クラウス様はとても優れた皇子ですが、その出生ゆえに皇妃に嫌われていらっしゃる。セシル様に非がなくても、初対面のその瞬間から、皇妃は全力であなたのことを嫌うでしょう」


それは……勿論、想定内。

皇妃の心理としては、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いだろうから、当然、クラウスの妃となる私のことは、問答無用で大嫌いのはずだ。


「かの皇妃は気に入った(・・・・・)相手には様々な相談という名の無理難題をふっかけます。それに応えることができるかどうかも……妃になるには必要なこと。ゆえに教師陣があなたにふっかける難題もまた妃教育の一つというわけです」


「皇妃は……表立って相手を嫌うわけではないのですね」


「ええ、そうです。貴族の皆さまもそうでしょう。汚い言葉で相手を罵るなんてことはされない。あくまで毒を砂糖にくるんで差し出す」


それはその通り。

だからこそとても厄介なのだ。


「クラウス様への皇妃の嫌がらせもそうです。皇帝の前では『クラウス様はとてもお優しい方ですから。89歳と17歳という年齢差など気になさらず、きっとその寛大な御心で、女王の傷ついた心を癒すことができると思いますわ』といい、隣国の未亡人女王との縁談話を持ち込んだぐらいですから」


なるほど。

皇帝の前ではしとやかに語り、クラウス本人に対しては毒を吐くわけね。


正直。


そういうタイプ、私は許せない。

しかも私の最愛であるクラウスにそんなことをするなんて。

絶対に、絶対に、絶対に!

負けないから。


それにしてもおじいちゃん植物学者のおかげで、妃教育のため屋敷にやってきた教師陣が、とんでもないことを言い出した理由もよく理解できた。


「もう少し寒くなるのを待ってください」や「図鑑に情報は十分にありますから」なんて対応をしないで良かった。そんな対応をしていたら……皇妃にはやられっぱなしだろう。


そこで気が付く。


今回、アイス皇国から妃教育のためにやってきた教師は十名いた。その全員が、無理難題を口にしている。つまりは全員が、無理難題を出し、私を鍛えようとしているということ。それは教師たちがみんな、皇妃の本性を知っているということだ。


皇妃の本性を知った上で、クラウスの要請に答え、わざわざウッド王国までやってきた。クラウスの要請に応えることは、皇妃に睨まれる可能性だってあるのに。それでも彼らは来てくれた。


間違いない。


クラウスは決して孤立無援ではない。彼の良さを理解し、助けたいと思ってくれる支援者がいるんだ。そしてここにいる支援者は、おそらくそのほんの一部。きっとアイス皇国にはもっと沢山、クラウスを応援したいと思う人がいるはずだ。


そう分かった瞬間。


妃教育が俄然楽しくなってきた。

今、学んでいることはすべて私の血となり肉となる――というのは少し大袈裟かもしれない。でもここで覚えたことはすべて武器になると思った。皇妃から無理難題を振られた時。それに打ち勝つには、まず知識。次に機転、そして柔軟な発想力、何よりめげない精神が必要。


それをこの妃教育で、私は学ぶ。


待っていなさい、氷の華!


完全武装して乗り込んでやるんだから!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一番星キラリの作品を紹介】
作品数が多いため、最新作を中心にバナーを並べています(2025年12月の大掃除で・笑)。 バナーがない作品は、作者マイページタイトルで検索でご覧くださいませ☆彡

●シリーズ第一弾●
バナークリックORタップで目次ページ
断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた
『断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた』もぜひお楽しみください☆

●紙書籍&電子のコミカライズ化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~
『悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~ 』

●これぞ究極のざまぁ!?●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は死ぬことにした
250万PV突破『悪役令嬢は死ぬことにした』

●出版社特設サイトはコチラ●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!
80ページが試し読みできる特設サイトへ
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!』


●溺愛は求めていませんよ?●
バナークリックORタップで目次ページ
平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!
『平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!』

●壮大なざまぁを仕掛けます!●
バナークリックORタップで目次ページ
婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした
『婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした』

●章ごとに読み切り!●
バナークリックORタップで目次ページ
ドアマット悪役令嬢~ドン底まで落ちたらハピエンでした!~
『ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~』

●商業化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢はやられる前にやることにした
『悪役令嬢はやられる前にやることにした』

●宿敵の皇太子をベッドに押し倒し――●
バナークリックORタップで目次ページ
宿敵の純潔を奪いました
『宿敵の純潔を奪いました』

●コミカライズ化も決定●
バナークリックORタップで書報ページへ
断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない
ノベライズは発売中!電子書籍限定書き下ろし付き
『断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない』


●妹の代わりに嫁いだ私は……●
バナークリックORタップで目次ページ
私の白い結婚
『私の白い結婚』

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ