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完結●断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた~回避成功編~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【本編】

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43:幸せな時間

鶏肉を取り分けたお皿に、さらに冷製のテリーヌ、豆のサラダ、焼き立てパンを配り、見事なワンプレート料理が完成したのだが。


私は……利き手が使えない。左手でぎこちなくフォークを手に持とうとすると。


「セシル嬢、あなたにはわたしが食べさせますから」

「え、でも……」

「わたしは食べるのが早いですから。あなたが一口食べている間に三口は食べられます」


そ、それは、そうなのかもしれない。

でもクラウスは皇子なのに、私に食事を食べさせるなんて。


「この役目はジョセフやトニーに譲るつもりはありませんから」


クラウスは浅紫色の瞳をキラキラ輝かせ、私を見ている。どうやら私に料理を食べさせることを……すごく楽しみにしている――と分かった。


「で、では、お願いします……」

「勿論です」


こうして会場内に用意されたテーブルに全員で着席し、夕食タイムとなった。


スライスした鶏肉をガーリックオイルにつけ、少しだけ岩塩をつける。それをクラウスは「さあ、セシル嬢、口を開けていただけますか?」と私の口元に運ぶ。


「は、はい」と口を開け、パクリと食べると。とても美味しい……! 私が味わっている間に、確かにクラウスは自身のお皿の料理を優雅な手つきでパクパク食べている。


「次は豆のサラダはどうですか?」

「はい、お願いします」


クラウスは満面の笑みで私の口へサラダを運んでくれる。私が口の中にサラダを頬張るだけで、さらに嬉しそうになった。もはや“氷の貴公子”という名は返上した方がいいのでは?と思うぐらい、豊かな表情。


私と目が合うと、とろけそうな笑みを浮かべ、「セシル嬢、お味はどうですか?」と尋ねる。「お、美味しいです」と答えると、「それは良かったです」と自分が褒められたような笑顔になった。


もう、なんだかすごく甘い……。


気づくとジョセフやトニー達騎士は、感無量という顔になっている。これはさっきトニーが言っていた、アンニュイな表情とため息を漏らしていたクラウスを知っているから、今のこの幸せ満点の姿を見られることが、堪らないようだ。


クラウスは限りなくご機嫌。彼の護衛騎士達は感涙。私はとんでもなく幸福。


幸せな夕食の時間を過ごした。


食後はそのまま演劇を観ることになった。10分程の寸劇を上演しているので、舞台前のベンチは適度な入れ替わり立ち代わりがあり、少し待てば座ることができる。3本ほど観劇した後、花火の打ち上げが始まった。


救護室のそばの噴水広場まで戻り、そこで花火を鑑賞することにしたが、さすがにベンチは満席。しばらく立ち見で花火を見て帰ることになった。


「セシル嬢、手は痛みませんか?」

「塗り薬とお薬が効いているようで、大丈夫です」

「それは安心しました。では馬車まで戻りましょう」


もうクラウスは、私が手を怪我しているからと、甘やかし放題になっている。馬車が待つ場所へ着くと、馬車に乗るためということで私を抱き上げ、座席へとおろしてくれた。


よくよく考えると、救護室まで抱きかかえてくれている。クラウスは間違いなくスリムに見えるのに、ちゃんと筋肉があるようだ。


そこはさすが、騎士としての訓練を受けていただけあるわね。

思わず感心してしまう。


馬車に乗り込むと、クラウスは自然な流れで私の左手を握りしめた。


「セシル嬢の手はとても小さいですね。爪はピンク色の貝殻のようです。シルクのような触り心地で……。こうやって触れていると、とても幸せな気持ちになれます」


いきなりの全力投球の褒め言葉に、目が回りそうになる。


「そ、それは、そんな風に言っていただけて光栄です。……クラウス様の手も、とても透明感のある肌で、触れ心地がいいですよ」


「ありがとうございます。アイス皇国は冬の間は乾燥するので、手にクリームを塗るのが皆、当たり前なんですよ」


「そうなのですね」


クラウスはそう言うと、自身のテールコートのポケットから、小さな容器を取り出した。コインサイズのその容器を開けると、私の手を取る。


「夏ですからクリームは不要なのですが、習慣になっているからなのか。つい、つけてしまうんです。……香りが気に入っているからかもしれません」


私の左手にクラウスは、そのクリームを少しとってのせると、マッサージするようにして塗ってくれた。


「この香りは……」


クラウスに抱きしめられた時にも感じた、マグノリアの香りだ。とても優雅でエレガントな香りで、彼のイメージにピッタリあう。


「わたしが気に入っている香りです。香水もこの香りのものを使っています」


「クラウス様のイメージに、ピッタリ合っていると思いますわ」


「今の言葉、とても嬉しいです」


クリームをしまったクラウスは、再び私の手を握る。

お腹もいっぱい。

素敵な香りに包まれ。

隣では最愛の人が手を握ってくれている。


幸せ……。

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