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完結●断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた~回避成功編~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【本編】

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17/102

16:もう、お終いだ

「さあ、降りようか、セシル」


アンドリューの声が聞こえるが、既に嫌悪感しか覚えない。こんな男とこのまま婚約し、結婚することしかできないの?


馬車を降り、この建物の中に入ったら、もう、お終いだ。


断罪回避はできたのに!

今のこの状況は、どうにもできないの!?


考えて、考えて、私。


私がさらわれたことは、使用人たちは遅かれ早かれ気づいてくれる。エントランスを離れた場所から見ていたバトラーが、いち早く事態を把握し、動いてくれている可能性だってある。


我が家のバトラーは、まだ40代前半だが、とても有能。


すぐに従者に命じ、警察に連絡したはず。自身は馬車がせめてどちらの方面に向かうか、確認しただろう。


馬車は決してスピードを出していない。それなりの速さだが、目立つ速度ではなかった。しかも公爵家の馬車。人をさらう最中の馬車とは、誰も思わないだろう。


だが今は、深夜というわけではない。

この時間帯は、帰宅の時間だから、街の人は沢山いたはずだ。

ラングフォード公爵家の紋章がついた馬車を見なかったと聞いて回れば、目撃情報はゼロではないはず。


それならば今すべきことは時間稼ぎ。

この建物の中に入るのを少しでも遅らせれば、助けが来てくれるかもしれない。


そこで後悔の気持ちが沸きあがる。

時間稼ぎをするなら、馬車から飛び降りればよかった……?


速度はそこまで出していない。


いや、それでも走る馬車から飛び降りるなんて自殺行為。

しかも後ろ手に縛られている。

頭をガードできない。

石畳に落下すれば、首の骨を折ったり、頭を打ったりで、死亡していた。

だからここまできてしまったのは、仕方なかった。


「セシル、聞いているか? 途中からずっとだんまりだったけど、まさか寝ているのか?」


そうだ!

寝たフリ。

いや、意識を失ったフリをしよう。

馬車の中で私を抱き上げるのは無理だ。

一度自身が馬車から降り、私を抱き上げ、おろすしかない。


そしてアンドリューは、騎士のように体を鍛えているわけではない。もやしっ子というわけではないが、到底筋力があるとは思えなかった。私を馬車の中から抱き上げて降ろすのは、無理だろう。


方針が決まったので気絶したフリをすることにした。


「セシル、セシル」


アンドリューが何度か私の名前を呼んだが、無視する。

すると。

座席から身を乗り出したらしいアンドリューが、私の肩を何度かゆする。


結構な強さでゆすぶられ、でもそのまま目を閉じていると。


「……まさか、気絶した? でも……まあ、仕方ないか。公爵家の令嬢だから。こんな風にさらわれるなんて、慣れていないだろうからな」


当然だ。

公爵家の令嬢でなくとも。

慣れている女性なんているはずがない。


アンドリューは無言となり、何やら考えているようだったが。


あやうく出ない声を出し、身動きしそうになった。

アンドリューの手が胸の近くに触れている……!


この男、自分の初めてはボニーに捧げると言っていたのに。

ここにきて、考え方を変えたということ!?


というか、嘘、やめてよ……!


いよいよアンドリューの手が、胸に触れるかというその瞬間。


「アンドリュー様、降りないのですか」


御者らしい声がして、扉を開ける音がした。


「あ、ああ。降りるよ。……この女が気絶しているから、そっちから抱き上げて、おろしてもらえるか?」


「分かりました」


万事休す!


ガチャッ。


「うわぁ」

「ぐあっ」


驚いて目を開けると……。


私は御者が座る席に背を向け、床に座らされていた。私から見て左手の扉が開き、アンドリューは引っ張り出されるようにして、馬車の外へ消えていく。一方、私の右手では、御者の男が気絶し、倒れる瞬間だった。


気絶する御者を支えているのは……。


明かりがないので薄暗いが、その暗さでさえ、輝いているように感じてしまうアイスシルバーのサラサラの髪。すっと通った鼻筋に、形のいい唇。


御者を気絶させるという荒事をしているのに、なぜかそこに優雅さを感じさせるのは……謎の貴公子クラウス……!


「クラウス様、犯人は確保できました」


初めて聞く声。テノールの落ち着いたこの声は、間違いないだろう。


クラウスのそばに、アンドリューの体を楽々と担ぐ黒騎士が近づいた。


「ありがとうジョセフ、こいつも含め、拘束をしてほしい。ここにロープがありそうだ」


ジョセフ……黒騎士の名前が判明する。

そしてクラウスが改めて私を見た。


「……セシル嬢。ご無事ですか?」


薄暗い。

でも伝わってくる。

クラウスの瞳から私を心底案ずる様子が。

でも声を抑え、気持ちの揺れを静め、私に声を掛けてくれている。


大丈夫の意志表示で頷くと、クラウスの瞳に安堵が宿った。だがすぐに口にかまされている布に気が付き、外してくれる。


「ありがとうございます」


掠れた声でなんとか答えている間に、後ろ手に結わかれたロープを、クラウスは器用に解いていく。そのロープはすぐにジョセフに渡される。


私は自分の手首の皮がむけていることに気づき、そしてそこが痛むことをようやく自覚した。


無意識に拘束から逃れようと、手を動かし続けていたのだろうと推測する。ロープでこすれ、皮膚が裂けていた。


ビリッという音に驚くと。


クラウスは自身のハンカチを二つに裂き、そして「よろしいですか」と自身の手を私に向ける。私の手首に傷があると気づき、ハンカチを包帯代わりにしていると理解した。


遠慮がちに差し出すと、クラウスはハンカチを手で巻きながら話し出す。

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