表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完結●断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた~回避成功編~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【本編】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/102

11:無我の境地モード

無我の境地モードを維持しているが、本当は失神直前。


それでも今、ここに推しと私しかいないから、必死に会話をしていた。でも、もはや自分で何を話しているか分からなくなっていたが……。なんだか恋愛の話をしていた気がする。どんなタイプが好きかとか、そんなことを。


そして気づけばこんな話をしていた。


「……亡くなった私の婚約者ナスターシャ姫は、とても可憐で美しく素直な女性でした。3歳で婚約者になり、8歳で我が国に来て、そこからは王太子妃教育に取り組み……。よく頑張ってくれていたと思います。幼い頃から一緒にいたので、私を変に意識することなく、友達のように仲が良く……」


エドワード様は、そこで深いため息をついた。


「彼女とはいつだって本音で話し合えました。私のいいところ、悪いところ含め、全部率直に話してくれて……。隣国の姫君。半ば人質のように婚約者となったと思ったのですが、そんなことはなかった。彼女は心から、私を愛してくれていたと思います」


そう言ってエドワード様が、さっきまでルイズ公爵夫人が座っていた場所を眺めている。そこには誰もいないのに。でもエドワード様には、そこに誰かがいるように、見えているのだろう。


美しい顔には、微笑が浮かんでいる。


その姿を見た瞬間。


理解出来てしまった。エドワード様の心にはまだ亡くなったナスターシャ姫が健在なのだと。1年の喪に服したぐらいでは、その存在が薄れていないのだと。


ゲームをプレイしている時のエドワード様は、ちゃんとプレイヤーが動かすヒロインを好きになってくれた。好感度上げをきちんとして、イベントこなすことで。


この世界でも、ゲームでやったような好感度を上げる行動をすれば、エドワード様はそのお相手の令嬢を好きになるかもしれない。そして実際、今、婚約者のいない彼のハートを射止めるため、多くの令嬢が奮闘しているだろう。


彼女達はでも、エドワード様の心に、ナスターシャ姫がしっかり残っていることに、気が付いているのだろうか?


「すみません。リヴィングストン公爵令嬢。ナスターシャ姫の……他の女性の話をこんな風にしみじみするなんて、失礼なことですね。申し訳ないな。どうして彼女のことを話すことになってしまったのか……。普段なら絶対にこんなこと、打ち明けないのですが」


私の推しは……泣きたくなるほど真面目だ。

1年の喪は明けた。

折しも舞踏会シーズン。

ここで新たな婚約者を見つけろと、側近や父親である国王陛下からも言われているのだろう。


「王太子様。私は構いません。1年の喪が明けました。今から気持ちを切り替え、新しい婚約者を見つけてくださいと言われても、それは……無理な話と思います。それでも王太子様という立場では、『一刻も早くお相手を』というのが周囲の意見でしょう。それならばせめて。今のように自然とお気持ちを話せる相手を見つけてください」


「リヴィングストン公爵令嬢……」


エドワード様の碧い瞳が潤んでいる。

ああ、推しが泣いてしまいそう。

でも涙は我慢しないのが一番なので……。


「涙は流した方が楽になれますから。ご無理はなさらないでください。きっと見つかると思います。ただただ愛して、私のことを!ではなく、王太子様の傷が癒え、心から愛していると言えるようになるのを待ってくださる令嬢が」


ついに推しの瞳から、美しい涙がこぼれ落ちてしまった。

どうもここ最近。

私はイケメンの涙を見る確率が高い。

貴公子クラウスも、綺麗な涙を落としていた。


「婚儀は王族という立場で、待ったなしで挙げる必要があるかもしれません。ただ、婚儀を挙げてもその先に進めない……という心境であることを打ち明けても、『大丈夫ですよ。私は待ちますから』という令嬢は……いると思います。何せこの国の妙齢の令嬢全員が、今は王太子様に夢中なのですから。一人ぐらい、心の広い令嬢もいらっしゃるでしょう」


なるべく最後の方は明るく言うことが出来た。

するとエドワード様は涙をぬぐい、いつものパーフェクトスマイルを見せてくれる。


「その言い方ですと、そんな令嬢にあなた自身がなってくれる可能性は……限りなく低いのですね」


推しの鋭い指摘にドキッとしてしまう。

でも……そうなのだ。

推しのことは大好き。

大好きだけどそれは見ているだけでいい……というタイプもいる。そして私はまさにそのタイプ。推し活をして気分が盛り上がる。仲間ができる。オシャレをする。ワイワイ皆で楽しむ。それで満足なタイプだった。


「私は……王太子様の隠れファンです。ずっと応援しています。幸せになっていただきたいと思っていますから」


「なるほど……。それは……残念。リヴィングストン公爵令嬢。あなたは他の令嬢と違い、とても落ち着いて私と会話をしてくれるから、気持ちが楽でした。もしかしたら……という気持ちが、私の中で生まれていたのですが……」


今の言葉に、脳内では狂喜乱舞。

でもここは無我の境地モードで乗り切るしかない。


これは……通勤電車の中で、どうしても乙女ゲームをプレイしたかった私が身に着けた奥義でもある。自室でなら、ゲームをしながらいくらでもデレ顔になれた。だが電車内でそんなのご法度。やれば変態と思われる。


では乙女ゲームを車内でやらなければいいと思うが……。やりたいのだ、仕方ない。その結果の無我の境地モード。一日や二日で身に着けたものではない。何年もかかり、会得した。だから大丈夫。


この、夢のような推しの言葉でも、私の無我の境地モードは揺るがない!


「そんな風に言っていただけて、光栄です。墓場まで大切に持っていきます」


「それはまた大袈裟な。……ただ、それではどなたなのかな。あなたの心を射止めるのは。……まさか」


「カール、とか言い出さないでください」


するとエドワード様はクスクスと楽しそうに笑う。


「ダメなのですか、カールでは」


「幼馴染みですから。そんな対象には見えません」


カールは……確かにカッコいいが、私からしたら旧攻略対象。そして絵師様だ。キッパリ言い切った私を見てエドワード様は「カールも可哀そうに」と言っているが、カールはむしろ、ホッとするだろう。


たかが幼馴染みの私とそういう関係に見られたら。


「今後も、リヴィングストン公爵令嬢。あなたさえ、嫌でなければ。またお茶をしてください」


「喜んで! いえ、失礼いたしました。はい、ぜひまたお声がけいただけると嬉しいです」


あやうく本性が出るところ……ではなく、出てしまった気がするが、なんとか軌道修正できた。何も気が付いてないエドワード様は「ええ、またお声をかけますから」と写メを撮りたくなるピカイチの笑顔だ。


こうして、推しとの夢のようなお茶会が終わった。

無我の境地モードで乗り切ったが、屋敷に戻ったら推しグッズに囲まれ、思いっきりデレよう。


そう心に誓った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一番星キラリの作品を紹介】
作品数が多いため、最新作を中心にバナーを並べています(2025年12月の大掃除で・笑)。 バナーがない作品は、作者マイページタイトルで検索でご覧くださいませ☆彡

●シリーズ第一弾●
バナークリックORタップで目次ページ
断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた
『断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた』もぜひお楽しみください☆

●紙書籍&電子のコミカライズ化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~
『悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~ 』

●これぞ究極のざまぁ!?●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は死ぬことにした
250万PV突破『悪役令嬢は死ぬことにした』

●出版社特設サイトはコチラ●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!
80ページが試し読みできる特設サイトへ
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!』


●溺愛は求めていませんよ?●
バナークリックORタップで目次ページ
平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!
『平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!』

●壮大なざまぁを仕掛けます!●
バナークリックORタップで目次ページ
婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした
『婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした』

●章ごとに読み切り!●
バナークリックORタップで目次ページ
ドアマット悪役令嬢~ドン底まで落ちたらハピエンでした!~
『ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~』

●商業化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢はやられる前にやることにした
『悪役令嬢はやられる前にやることにした』

●宿敵の皇太子をベッドに押し倒し――●
バナークリックORタップで目次ページ
宿敵の純潔を奪いました
『宿敵の純潔を奪いました』

●コミカライズ化も決定●
バナークリックORタップで書報ページへ
断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない
ノベライズは発売中!電子書籍限定書き下ろし付き
『断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない』


●妹の代わりに嫁いだ私は……●
バナークリックORタップで目次ページ
私の白い結婚
『私の白い結婚』

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ