51:エピローグ
クラウスが小さな箱を取り出した。
濃い紫の正方形の小さな箱。
「今回、鑑定のために提出し、AAA+(トリプルAプラス)を獲得したアモリティアで作りました」
箱の中には入っているのは、アモリティアで作られたイヤリング!
ホワイトゴールドで雪の結晶を表現し、その結晶にアモリティアが飾られていた。
「アモリティアは第二皇子クラウスが発見し、妃セシルに捧げた愛の宝石です。受け取っていただけますか?」
「クラウス様……!」
宝飾品は揃えてコーデすることが多い。イヤリングとペンダントをお揃いにしたり、髪飾りとイヤリングとペンダントでトータルコーデしたり。
アモリティアのイヤリングは欲しいなぁと思っていたので、これは実に嬉しい!
「ありがとうございます!」
「つけていただけますか?」
「もちろんです!」
箱からイヤリングを手に取った瞬間。
これがダイヤモンドと同価値の宝石として認められたことを思い出す。
「ク、クラウス様、これはダイヤモンドと同価値ですよね? あっさり受け取っていいのでしょうか?」
「セシル嬢は謙虚ですね。あなたは皇族の婚約者なのに。これぐらい贈られて当然とならないところが、セシル嬢らしい。そんなセシル嬢が、わたしはたまらなく大好きですよ」
いきなり卒倒しそうな言葉を囁いたクラウスは、私の代わりにイヤリングを手にとり、耳へと手を伸ばす。優しく耳に触れながらイヤリングを付けてもらうと、もう鼻血を吹き出し倒れそうになる。
「とても似合っていますよ、セシル嬢」
「そ、そうですか。嬉しいです。あ、ありがとうございます」
クラウスがあまりにも私の顔……多分、イヤリングを見ているはずだけど、もう嬉しいのと恥ずかしいので大赤面! 意識が吹き飛びそう。
それなのに!
ク、クラウスが私の顎を持ち上げた!
し、しかもお顔が……あの美貌の顔が、ち、近い!
いや、ち、近づいている!?
本能(?)で目をつぶったが、ふわりとマグノリアの香り感じ、額に温かさを感じた。
え、えーと。
クラウスの唇はふっくらとして柔らかそうで、こんな触感ではないと思う。
これは多分……。
うっすら目を開け、理解する。
おでこにキスをしたわけではない。
自身のおでこを私のおでこに、つけただけだ!
唇へ口づけをするわけでもなく。
額へキスをするわけでもなく。
おでこ……いや、これは……新しいクラウスの寵愛の形。
「おでこキス」と命名しよう!
未婚の男女の不用意な接触は禁止……だけど、おでこキスぐらいは許してもらえるよね?
婚儀まであと8ヶ月。
それまでいろいろお預けだけど……。
「セシル嬢、そろそろ離れへ戻りましょうか」
「はい!」
恐ろしい元皇妃は、アイス皇国からいなくなった。
母国で幽閉された彼女が、自分の罪と向き合い、更生することを願うばかりだ。
そして皇妃がいなくなった今、クラウスが妹のナスターシャ姫や母親を思い出した時、しっかりサポートしたいと思っている。あとはもう彼の良き妻・妃となるべく、日々精進あるのみだ!
愛するクラウスと共に、私にはなんの縁もゆかりもないアイス皇国へやって来た。そしてそこで待ち受ける皇妃に、戦々恐々だった。だが実際には皇妃もそうだが、皇子と皇女も曲者揃いで……。いきなり彼らから洗礼を受け、この先どうなるのかと思った。同時に皇妃のとんでもない悪事に気が付いた。
その後はみんなの協力を得て、皇妃を追い込み、アイス皇国から追い出すことができた。
戦争を回避するため、皇妃を完全に断罪することはできなかった。でも彼女はもう二度と話せず、右手で羽ペンを持つことはできない。そして母国で一生幽閉されて暮らす。十五名の命を奪った対価としては足りないのかもしれないが、皇妃にとっては生き地獄が続くはずだ。
「セシル嬢、さあ、中へ」
「ありがとうございます、クラウス様」
私の手を取り、エントランスホールへクラウスが歩いて行く。
まだまだ至らないところが私にはある。
でも愛するクラウスがそばにいてくれる。
クラウスはいつだって私の良き理解者で。
私もクラウスの良き理解者でありたいと願っている。
だから大丈夫。
クラウスと私は、絶対に幸せになります!
♡*・Conquering obstacles,
困難を乗り越え
their joyous destiny unfolds.
必ず幸せになります ・*♡
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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