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月の月見

作者: 蘆刈清正

卒業式が終わって、ノブとは別々の道を歩むことになった。あいつは東京に行くらしい。今日は2人でお茶をする。卒業式以来だ。

「こっちこっち!」

ノブが手を振っているのでそちらに近づき、向かいの席に着いた。別に今生の別れになるわけでもないだろう、今日もきっと他愛もない話しをして不毛な時間を過ごすのだろう。

そんなノブは切り出してきた。

「月面基地でお月見できるの知ってる?」

突飛な話に驚いたが彼は宇宙にかかわる仕事に就くと以前言っていたのを思い出した。

「へぇ、そんなのがあるの?ってか月に行けるの?」

するとノブは、

「これ見てみ」

アラブの富豪が大金をはたいて宇宙旅行をするという携帯ニュースを見せられた。一般人が月に行けるんだと感心していたら、ノブは月面基地の説明をしてくれた。

「月面には基地ができてきて、そこでの実務はウサギ型ロボットが行なっているらしい。月面には発電所もあって建物内部では普通に生活しているんだぜ。」

月面基地にウサギ型ロボット…。安直な気はしたが無機質なロボットでは気持ち悪いからあえてポップにしたのだろうと自分なりに納得した。そんな月面基地での名物がお月見らしいということだ。月で月見?地面に何か描かれているのだろうか、ナスカの地上絵を想像してみる。

「違う!違う!月の裏側って地球からは見えないだろ?その上空に人口の月があるんだぜ。地球からは観測できないから、あちらに行った人しか見れないレアなお月見ってこと。」

なるほど、そんなものがあるのか。死ぬまでに見てみたいなと思った。

月面に浮かぶ月のことを「月空の城」と言う。月の裏側から見ると欠けることがないから通称「ミチナガ」これは昔、藤原道長が詠んだ歌からとっているとノブがスラスラと教えてくれた。

「ミチナガはウサギを丸くしてお腹の部分が広くなっていて、そのお腹の部分にプロジェクションマッピングで様々なものが投影されるんだよ。ミチナガは多くの国が開発に協力したから各国が投影する内容を順番に担当している。日本担当の日はアニメキャラが映されたりするんだよ。」

アニメ好きの僕にとっては夜空に大きく映し出されたキャラクターを是非拝んでみたいと思った。またミチナガの下ではウサギ型ロボットのついたお餅が食べられるらしい。お餅なんか海外の人が喉につめたりしないだろうかと心配になった。そんな月面トークに花を咲かせていたら外はすっかり暗くなっていた。じゃあそろそろ帰ろうかと席を立った。お会計を済ませて外に出たら月が出ていた。とても綺麗だと思った。

月光に照らされたノブが呟くように言った。

「まぁ全部嘘やけどな…」

「え!?」

「ふふふ、今日はなんの日?」

「4月1日…そういうことか、でもとこから?」

「さぁ…」

こうして僕とノブの不毛な時間が過ぎていくのだった。




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