5、 対戦、バトル。その①
5、 対戦、バトル。その①
「うらあああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!」
闘神祭トーナメント、第一回戦。巨大な木々を思わせるような棍棒でオレめがけて振り回してくる。
今ひとつ、力も魔法もないオレにとって、これを食らったら致命傷は避けられないだろう。
「私と出会った時、聖剣を抜いた時に得たチートスキルを今こそ使いましょう!!」
「ああ。そうだな」
大きく息を吸って、深呼吸をすると、オレは聖剣アーディを抜いた時に感じた力を再び胸の内から掘り起こさせる。
相手を一撃で倒すイメージと意識を持って構える聖剣に投影させる。
その瞬間、聖剣から大きな光と共に肩や腕にみなぎる力を感じる。
「《オーバーキル》!!!」
チートスキルの名を呼んだ一秒後には、大きなゴブリンが持っていた棍棒は縦に真っ二つに光に引き裂かれ、それと同時にゴブリンの顔めがけて、聖剣の光が襲う。
その速さ、たった00.2秒。ゴブリンも目を見開いて、避けることもできずそれをくらう。
この時、オレは勝利を確信した。
「ぐあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!! 熱いッッ!! 熱いッッ!!」
「デス・ゴブリン、戦闘不能! 勝者! 勇者ローブ!!」
わああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!
「さすが!! 勇者様ああああああああああああああああ!!」
「勇者の風格は伊達じゃないわ!!!!」
闘技場の観客席から大きな歓声が上がる。宣言した通り、たったの3秒で対戦相手との決着を無事つけた。ホッと安堵のため息が溢れる。
「やりましたね! ローブ様!! これで一歩、シーア姫に前進しましたよ!!」
「そうだな。 このまま、着実に前に進んで行こう」
「クソがあああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!」
顔を光で焼かれたデス・ゴブリンが負けた怒りで暴れ狂い、大きな素手をこっちに向かって闇雲に振ってくる。
こっちもそれを避けながら、次の策を考える。会場は大混乱だ。
「デス・ゴブリン。 お前の負けだ。 潔く負けを認めたらどうだ?」
「うるさい!! うるさい! うるさい!! オレ様はこんなチビっこい奴に負けるはずがない!! チートスキルだかなんだか使いやがって!!」
「ローブ様、今度こそ!」
「ああ」
《オーバーキル》!!!
チートスキルを再びゴブリンの腹に放つと、ゴブリンは致命傷を負い、後ろに倒れるようにして、地面に沈み込んだ。
「やったか…」
「……」
返事がない。どうやら、ゴブリンの悪あがきもこれで終わったらしい。
闘神祭、第一回戦を突破したオレらは、再び控え室に招かれ、休憩と食事をとり、次の日の第二回戦に臨んだ。