第五話 因幡の白ウサギ
むかしむかし、隠岐の島という所にいたずら好きのウサギがおりました。
海を渡った先の大きな国に行って見たかったウサギは、考えます。
そうだ、海に住む鮫を騙してやろう。
ウサギは鮫に話しかけます。
「鮫さん鮫さん。あんたたちの一族と僕の一族では、どちらの方が数が多いか知ってるかい?」
鮫は、歯をむき出して笑いました。
「そんなこと、知るわけがないだろう。馬鹿なことを言っていると、食ってしまうぞ」
「だからさ」
と、ウサギはひるまずに答えます。
「今、僕が数えてあげるよ。鮫さんの一族を集めて、並んでごらんよ」
言われて、鮫は仲間を呼びました。
島から大きな国までずらっと一列に並びます。
ウサギはその上をぴょんぴょんと飛びながら渡って行きました。
後一歩で、海を渡りきります。
「ばかだな。僕、海を渡りたかっただけなのに」
嬉しくなったウサギは、ついつい本当の事を言ってしまいました。
その呟きを聞き取った最後の鮫がウサギを捕まえてしまいます。
怒った鮫たちに、ウサギは毛皮を剥がれてしまいました。
あまりの痛さに泣くウサギの元に、神様たちが通りかかりました。
十一月。この国に神様たちが集まる日でした。
「海水を浴びてしばらく風にあたっていればよい」
ひとりの神様がそう言いますと、他の神様たちが大笑いします。
ウサギは神様が言うように海水を浴びました。
すると体中が痛くて痛くてたまりません。
遅れて通りかかったオオクニヌシという名の神様が優しくウサギに語りかけます。
「可哀想に。今すぐにあちらにある小川で体を洗い、小川のほとりに生えているガマの花粉にくるまれればおまえの体はすぐに治るだろう」
ウサギがその通りにすると、たちどころに怪我が治り、元の美しい白い毛が生えて来ました。
さて。
こういう話には真似っこがつきものでありまして。
白ウサギの美しい毛並みに憧れた黒ウサギ。
さっそくに話をききつけて真似をします。
鮫を呼び寄せ、最後に「実は嘘をついていたのだぞ」と告げると、怒った鮫たちは黒ウサギの毛皮を剥いでしまいました。
それはそれは、想像を絶する痛みです。
この後、海水を浴びて風にあたり、小川で体を洗わなければならないのですが、痛くて痛くてそれどころではありません。
その時になって、黒ウサギは思いました。
「俺、なんでこんなことしてしまったんだろう」
教訓:いたずら、まねっこは程々に




