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第四話 白雪姫

 むかしむかし。

 ある国に少しお年をとっておりましたが、たいそう美しいお妃様がおりました。

 王様とお妃様の間には、長い間子供が生まれませんでしたが、二人はそれはそれは幸せに暮らしておりました。

 そんなお妃様がついにお子さまを授かりました。国中は、大にぎわいです。

 ある雪の日に、お妃様が言いました。

「雪のように白く、黒檀のように黒く、血のように赤い子が生まれれば良いのに」

 感性を疑います。普通の親なら、「可愛い子が生まれれば良いのに」って思いませんこと、そこの奥様。

 という意見は置いといて。

 生まれた赤ん坊は、雪のように白い肌と黒檀のような見事な黒髪、そして血のように赤い唇を持った可愛らしい女の子でした。

 でも、体の弱いお妃様はその子を産むとすぐに死んでしまったのです。

 王様はたいそう悲しまれましたが、生まれた女の子をお妃様の分まで愛すると決めました。

 女の子は「白雪姫」と名付けられました。

 黒檀姫や赤血姫でなくて良かったね。

 さて、白雪姫が三歳の時にお城に新しいお妃様がやってきました。

 そのお妃様は前のお妃様より若く、とても美しい人でした。

 そして、真実を告げる魔法の鏡を持っていたのです。


 お妃様は毎朝、鏡に問いかけます。

「鏡よ鏡。世界で一番美しいのは誰?」

「それは、あなたです。王妃様」

 それを聞くと、その日一日を頑張る事ができるのです。

 王様は新しいお妃様がお城に来る少し前から体を壊し、めったに外に出る事はなくなりました。だから王様の仕事は全部お妃様に回って来ます。

 連日の食事会でも、何も食さなくても微笑む事が出来ました。

 舞踏会でも、足が美しく見えるけど踊りにくい靴を履き、見事なステップを踏む事が出来ました。

 美しさの秘訣は、粗食と決して欠かさない毎朝のストレッチ。そして、肌に良いと言われるスッポンの血のパックです。

 それを侍女に見られ、一度は恐ろしい噂が流れたりもしましたが、王妃様はスッポンパックを止めることはありませんでした。

 だって、真実を告げる鏡が「世界で一番綺麗」だと言ってくれるのですもの。

 そうやってお妃様はストレスの多い仕事の中で世界一の美しさをずっと守っていたのでした。


 白雪姫が七歳になった頃。

 お妃様はいつものように鏡に話しかけます。

「鏡よ鏡。世界で一番美しいのは誰?」

 鏡は真実を答えます。

「王妃様。ここではあなたが一番綺麗。でも世界で一番美しいのは、白雪姫」

「白雪? あんな、普通の小娘が?」

 顔立ちは可愛かったけど、幼児体型のぷよぷよ。あんな小娘に私の何処が劣ると言うの?

 そういえば忙しくて、長い間顔も見ていなかったわね。

 お妃様は晩餐会を抜け出して白雪姫の様子を覗きに行きました。

 そこには幼児体型から脱却し、美しくなった女の子がおりました。

 ああ、おしろいもつけていないのに白く美しく、張りのあるあの肌。

 口紅もさしていないのに真っ赤な、あの唇。

 勿論白髪などあるわけがない漆黒の髪。

 それは今のお妃様にはどうしても手に入らないものでした。


 その日から、お妃様は鏡に語りかけるのを止めました。

 白雪姫の名前を聞くのがいまいましかったからです。

 晩餐会も舞踏会も、気が乗りません。

 それでも、お妃様はこれではいけないと思いました。

 だって、外交は大切なお仕事です。

「白雪姫を殺して来て」

 ある日、お妃様は樵にそう命じました。

「森で殺して来て、その肝を私に持って帰って来なさい」

 白雪姫さえいなくなれば。

 私は、また輝ける。

 お妃様はそう思っていたのでありました。


 さて。

 王妃様に命令された樵は困っていました。

 白雪姫は、まだ七歳。

 自分の娘と変わらない歳の女の子を殺すことなんか、絶対に出来ません。

 だから。

 森に置き去りにすることに決めました。

 そうして、勝手に飢えて死んでくれ。

 俺のせいじゃない。俺が殺したんじゃない。

 樵は猪を一頭殺し、その肝を抜き取ってお妃様に差し出しました。

 勿論、嘘がばれれば命はありません。

 だから、樵は祈りました。

 置き去りにした白雪姫が飢えて死ぬ事を。


「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰?」

 久し振りに、お妃様が魔法の鏡に語りかけます。

 鏡はすぐに答えました。

「王妃様、ここではあなたが一番綺麗。でも、世界で一番美しいのは白雪姫」

 王妃様は樵が嘘をついた事を知り、その首をはねました。

 そして、白雪姫の行方を捜します。

 七人の小人と一緒に森の中で暮らしている事を知り。

 商人に化けてリボンを売りに行ってそのリボンで首を絞めたり。毒のついた櫛を頭に刺したり。

 まぁ、色々やって最後には毒リンゴを食べさせて見事白雪姫を殺したのでありました。


「世界で一番美しいのは、王妃様」

 ようやっと手に入れたその言葉を噛みしめ、お妃様は仕事をがんばりました。

 隣の国の王子様の結婚式の招待状が届いたのは、そんな時です。

 結婚式に出席したお妃様を待っていたのは、ちょっぴり幸せ太りした白雪姫でした。

 そして、お妃様の前には真っ赤に焼けた鉄の靴が。

「お義母様。よくぞいらっしゃいました」

 にっと笑う白雪姫。

 ほら、ごらん。

 お妃様も笑います。

 王族なら、外交をする時には笑います。

 でも、あんたのその復讐に満ちた笑顔より、覚悟を決めた私の笑顔のなんと美しい事よ。

 だって。

 鏡は今日も言ったもの。

「この世で一番美しいのはあなたです」と。

教訓:若さに勝つのは、執念と意地!(何かが違う)

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