第三話 サンドリヨン
遠い異国に、不幸な女の子がおりました。
母御は小さい時に亡くなり、代わりにお家にやってきたのは若作りで二人も子供がいる派手な女でした。
そして、父親もすぐに亡くなり。
女の子は継母に厳しくしつけられ、掃除や洗濯、食事の支度までさせられておりました。
そのうえ、暖かい絹の衣服などは与えられず、いつも薄い木綿の衣服を纏っていました。
冬になると、寒くて寒くて仕方ありません。
火の消えた暖炉の灰で体をぬくめるのが、少女の習慣になっておりました。
そんなわけでいつも灰まみれの女の子を、人はいつか、「サンドリヨン(灰かぶり)」と呼ぶようになっていました。
「ちょっと、サンドリヨン。掃除してって言ったでしょ?」
上のお姉さんが言います。
「私、ちゃんとお掃除しました」
サンドリヨンが弱々しく返事をします。
「だったら、なんでこんなに汚れているのよ。やり直して」
サンドリヨンが掃除をしていると、今度は下のお姉さんがやってきました。
「サンドリヨン、あたしの服ちゃんと洗ってくれたの?」
「洗いました」
サンドリヨンが弱々しい声で言います。
「だったら、なんでこんなに汚れているのかしらね。もういいわ。自分でやるから」
下のお姉さんは、上のお姉さんよりもちょっと親切なのかも知れないとサンドリヨンは思っていました。
「サンドリヨン!」
そこに、継母の悲鳴が聞こえました。
「なに、これ」
それは、サンドリヨンが精一杯作ったシチューでした。
「お気に召しませんでしたか?」
「お前の味覚は確かなのかしらね。こんなものを作るなんて」
なんという事でしょう。
サンドリヨンが何をしても、きっとお姉さんやお母さんは認めてくれないのです。
「お母様。私、お母様の所へ行きたい……」
サンドリヨンは、寝る前にいつもそんなことを呟いておりました。
さて。(べべん)
この国には年頃の王子様がおりまして。(べべべん)
お妃候補を捜す舞踏会がありまして。(べべんべんべん)
お姉さまたちは舞踏会へ。サンドリヨンは悲しくひとり残され、そこにぃぃ魔女がぁぁ現れぇぇぇ。
あわれ、悲しきサンドリヨン。
魔女にすがってお願いしまする。
「わたしも、舞踏会に行きたいの」
魔女が杖を一振りいたしますと、現れましたる、カボチャの馬車。
「これで、行っていらっしゃい」
魔女の言葉に、サンドリヨン。
「でも、こんなに灰まみれの格好では行けないわ」
ならばと魔女はもう一振り。
サンドリヨンは美しい貴婦人になり、見事に王子の心を射止めたのでぇぇありました。
おそまつ。
さて。
サンドリヨンがお城に嫁いだ後のお家では。
「いっちゃったねぇ」
と、上の姉が言いました。
「これで、いつも灰だらけの部屋とはお別れか」
「いつも灰まみれの洗濯物ともね」
と、下の姉も笑います。
「灰の味しかしなかった料理ともさ」
と、しかめつらで継母も答えます。
「あいつ、家事は最低だったよな」
と、上の姉が笑います。
「だから、私はいつも自分でやってたわ」
と、下の姉が威張ります。
「自分でやった方がよっぽど綺麗に仕上がったもん」
それでも妹をしつけなければとがんばってはみたのだ。姉のように根気よくしつけることは出来なかったが。
「お妃様なら、食事とか作らなくて良いだろうしね」
と、継母は苦笑します。
「こっちはこっちで、気楽にやろうや」
「賛成」
こっちはこっちで幸せに暮らしているようです。
第三話 おしまい
教訓「衛生管理は徹底しましょう」




