第二話 みにくいアヒルの子
ある所に大きな湖がありました。
それは綺麗な湖で、鳥たちや動物たちの安らぎの場になっています。
おや、何か騒ぎが起こっているようですね。
今年生まれたばかりのアヒルの雛たちが喧嘩しているようです。ちょっと行ってみましょう。
まだよちよち歩きの小さなアヒルの子が、ちょっと大きめのアヒルの子に向かって叫んでいます。
「くわっくわっくわっくわくわくわぁぁ!」
お母さんアヒルが慌ててなだめに入ります。
「くわぁぁ。くわっくわっ! くわぁぁぁぁ!」
え? 何を言ってるか解らない?
じゃあ、ちょっとみなさん落ち着いて。
はい。これを食べてね。その名も「ほんやく魚のすり身」!
この不思議アイテムを水鳥さんたちに食べさせると、水鳥さんの言葉が解るようになるのです。
え? 語呂悪すぎ? ほっといてください。気を取り直してもう一度。
よちよち歩きの小さなアヒルの子が、自分達よりもちょっと大きめのアヒルの子に向かって叫んでいます。
「なんでお前、俺の弟のくせにそんなにでかいんだよ」
別の子が言います。
「しかも、可愛くないよね」
「てゆか、不細工だし」
他の雛たちも頷きます。
末っ子のくせに一番からだが大きな雛は悲しそうにうなだれます。
「これこれ、そんなことを言うもんじゃないよ」
と、お母さんアヒルがなだめに入ります。
「確かにこの子はみにくいけれど、なんでこんなにみにくい子が私の子なのかって思うけど。私の子供だから仕方ないってお母さんは思う事にしたんだ。だからお母さんは、あんたたちにも鳥を外見で判断するようになって欲しくないと思っている」
おかあさん?
ちょっと言ってること矛盾してません?
「ああ、そうだったかいね。それにしてもどうして美しいこのワタクシからこんなにみにくい子が産まれっちまったんだろうねぇ」
お母さんにまで、そんなことを言われるみにくいアヒルの子は、心に一生消えないトラウマを負ったのでありました。
僕は、みにくい。
みにくいから、兄弟たちからのけものにされる。
自分は、他の兄弟たちより大きい。
大きいから、お母さんはいっぱい餌を与えてくれない。
もっと小さい子に大きくなってもらわなきゃって。
体が大きいから、本当は人一倍食べなければ生きて行けないのに。
みにくいアヒルの子は、笑い者。
いつも空腹で、切ない日々を送っておりました。
ある冬、湖の片隅に美しい鳥たちが降り立ちました。
長いしなやかな首と、純白の翼。
そんなに綺麗な鳥は見たことがなかったので。
みにくいアヒルの子はそっと近づいて行きます。
あなたたちの姿を、側で見たいだけです。それさえも許してもらえないなら、殺されてもかまいません。
生い茂る芦の隙間から美しい白い鳥たちの姿を見ているアヒルの子の元に、その美しい鳥がやってきました。
「ぼうや。会いたかったわ」
と、その鳥は言いました。
ぼうや? 僕はみにくいアヒルの子で……。
そう言うアヒルの子に、白い鳥は言います。
「水面をごらんなさい。何が写っている?」
そこには、美しい白い鳥がいました。
「あなたは、白鳥の子。私の大切なぼうや」
優雅な仕草で白鳥はそう告げます。
「でも、僕ずっとみにくいアヒルの子だって、苛められて……」
その言葉に、白鳥のおかあさんはおやおやと翼をすくめました。
「だから、卵のあなたに言ったでしょう。どの卵より早く孵って、他の卵は捨ててしまえと」
第二話 おしまい
育児放棄かよ!




