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第一話 はだかの王様

 むかしむかしあるところに、ちょっぴりメタボな王様がおりました。

 ちなみに、相手が偉い人だから「ちょっぴり」なのです。これが普通のお父さんだったら「かなりメタボ」かも知れません。


 ある日、王様の元に異国の商人がやって来ました。

「王様、ごらんください。この絹織物のなんと軽やかなこと。まるで羽のような肌触りでございましょう」

 商人が取り出した織物は、しかし王様の好みのものではありませんでした。

「もっと格調高いものはないのか?」

「ならば、これはいかがですが?」

 商人が金糸と銀糸でまんべんなく刺繍をした豪奢な織物を取り出します。

 しかし、それも王様の好みではありません。

「もっと軽い生地はないのか?」

 商人が取り出すものはどれもこれも王様のお気に召しません。腹が立った商人は、王様を騙してやろうと考えました。

「それでは、こちらはいかがでございましょう。羽のように軽く、裾模様の豪奢な事。しかもこの生地は何と、利口な者にしか見えません」

 商人がもったいぶって取り出した生地に、そこに居合わせた皆があっと驚きました。

 王様も驚きました。

 商人は手に、何も持っていなかったからです。

「そなた、わしを馬鹿にしているのか!」

 王様の顔が怒りの為に真っ赤になりました。

「なにをおっしゃるのです、王様。この素晴らしく美しい布地のどこがお気に召さないのでございましょう」

 商人は、この布地は利口な者にしか見えないと言いました。

 王様はお利口ではないのでしょうか?

「まぁ、なんと美しい」

 と、最初にそう言ったのは王様のおめかけさまでした。

「わたくし、このように美しい絵柄を見たのは初めてですわ。しかもその布地の柔らかそうなこと。触ってよろしいかしら」

「どうぞどうぞ」

 と、商人がおめかけさまに渡します。

「まぁ、想像したよりもっと軽いわ。まるで空気のよう」

「どれ、わたくしにも見せてごらん」

 今度はおきさきさまが手に取ります。

「ほんになんと美しく軽い生地であることよ」

 すると、まわりにいたご家来たちが一斉に布地をほめたたえはじめました。

「何と美しい布じゃ」

「何と立派な刺繍じゃ」

 王様は困ってしまいました。

 自分だけが利口ものではないようです。

「解った。ではその布でわしの衣装をこしらえるがよい。出来ばえが良ければ十分なほうびを取らせよう」


 商人が王様の衣装を持ってお城を訪れたのはそれから十日ほどたった頃です。

 商人は王様をはだかにして衣装をまとわせてくれるのですが、やっぱり王様に見えません。

「空気のように軽い布なのだな」

「もちろんでございます。これ以上に軽い布地は世界の何処を捜してもございません」

 でも、ご家来たちやおきさきさまは「何とお似合いであることよ」と王様を誉めてくれます。

「ならば、この素晴らしい衣装を国民に披露しよう」

 と、王様が言いました。

 国民の中には、自分と同じようにこの衣装が見えない人間がいるかも知れないからです。

 王様はご家来を引き連れてお城の外にでました。


 おふれがまたたく間に広まります。

 すぐに家を出て控えなさい。王様がそれはそれはすばらしい衣装をお披露目してくださる。それは利口な者にしか見えないのだと。

 それを聞いた国の人々は王様の到来を今か今かと待ちます。

 そこへ、王様が馬に乗って現れました。

「おお、なんと素晴らしい」

「そしてなんと美しい」

 賞賛が飛び交います。

 王様は自分だけが利口でない事を知って、とてもなさけなく思いました。

 すると。

「おかあさん、おかしいよ。王様、どうしてはだかなの?」

 ひとりの子供が大きな声でそう言いました。

 周りがざわめきます。

「おかしいよ。はだかの王様だ」

 また、別の子がいいました。

「はだかだ」

「はだかだ」

 と、ざわめきが広がっていきます。

 おきさきさまも、ご家来たちも、国の人たちも、ざわめきます。

 みんな、自分が利口でないことを誰かに知られないために、見えない布地を誉める振りをしていたのでした。


 王様は悪い商人を捕まえて牢屋に入れました。

 そして正直な子供をお城に呼び、たくさんのご褒美をくれました。

 正直な子供は嬉しくなって、王様にもうひとつ本当の事を教えてあげました。

「王様、お腹まわりのぶにょぶにょ、何とかした方がいいと思うよ」

 王様は顔を顔を真っ赤にして怒り始め、かわいそうにばか正直な子供も牢屋に入れられてしまいました。

                                  第一話 おしまい

教訓 馬鹿正直はばかをみる

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