クリスマスの夕日と共に想いも沈ませた。
クリスマス要素は一切ないけど、クリスマスの日のお話。
いつからだろう? あの黒猫を探すようになったのは。
いつからだろう? この気持ちを持て余すようになったのは。
『なぁ、イヴ』
「何?」
『いつになったら名前で呼んでくれるんだよ』
「なんで?」
最近、今まで以上に俺を相手にしてくれなくなった黒猫のイヴ。
……こないだ見つけた公園に何かがあるって事くらいは分かってるんだ。
『俺とイヴの仲じゃねーか』
「そんなに親しくなった覚えはないよ」
少しイライラしてるのか、尻尾の動きが変わってきた。これ以上はアウトだな――――そんな事を思いながらその場から飛び去った。
また、何も伝えられなかった自分に溜息が出る。
『アーテルって呼んでもらいたいのになぁ』
誰にも聞こえない音で自分の名前を呟いた。
同族ではない事に距離を感じる。きっと種族が問題ではないと思うんだけど……くっそ、あの公園に何があるんだよ。イヴに声をかけずに付いていった事もあるが、近づくと気付かれそうで公園の中には入ってない。
(あれは……イヴ?)
ハロウィンの日に人型になったイヴを見つけた。いつもと違うイヴに疑問を感じつつも人型も可愛くて思わず声をかけた。
『おい、イヴ』
夕暮れ時に間に合わないのかイヴは俺を無視して足を速める。
『今日は行かないほうがいいぞ』
俺の方など見もせずにいつものように公園に向かうつもりらしい。確か……あの公園は……
『イヴ、行くなって!!』
視界を遮るように羽を動かせば、少しだけ俺を見たイヴ。
そういえば夕暮れ時にいつも公園に向かっていた気がする。だが、ハロウィンにあの公園はマズい。闇の鎌を持った番人が思いっきり力を振るう日だ。
『今日はいつもよりも人ならざるモノが多いんだ、やめとけ』
俺の声など聞こえないかのようにイヴは公園に駆け込んだ――――
そこまでは覚えている。
驚いた顔、解けた呪い、連れ去られた好きな人。
2人の会話は聞こえなかった。だけど連れ去られたイヴはとても嬉しそうで……俺は自分が本当に何もしてなかった事に後悔した。
なんで想いを伝えなかったんだろう?
なんでもっと親しくなれなかったんだろう?
なんで? なんで? なんで……
(俺、けっこう本気だったんだなぁ)
しばらくは茫然として何もしたいと思わなかった。けれど、このままではいけないと出かけたクリスマスの市場であの2人を見かけた。
とても幸せそうに何かを見てる2人を。
『イヴ、そいつは……』
クリスマスのカラフルな中で目立つ黒。俺もアーテルなのにな――あぁ、でも。
『イヴが幸せならそれでいい』
俺はイヴに気持ちも伝えてない、だから何も言えないんだ。
黒猫とカラスだからと同族じゃないからと線引きをしたのは自分。
クリスマスの夕日と共に、カラスは黒猫への想いを沈ませた。
黒猫の幸せを願いながら――――
25日以内にアップできませんでした……
ちょっと悔しい。