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猫屋敷の少女3

 零は、町に来るまでとは違う居心地の悪さを感じていた。

 それは、店を出てから零、頭から、調合室の桜が離れないでいた。

 それと同時に、桜のことに興味がわいていた。


 がしかし、零はどう喋りかけていいかわからなかった。。。


 元々、零は人付き合いは、好まなかったが苦手と言う訳ではなかったし、

 ある程度の、当たり障りのない会話をしておけば、問題なく人間関係をやり過ごせてきた。

 しかし、嫌われている人間には別である、嫌われている人間には関わらない、それが零の方法である。

 そして、今恐らく尋常でないくらい嫌われているであろう桜に、話し掛けると言う行動を取ろうとしている。

 そんなこんなで、考えあぐねていた、零に桜の方から喋りかけてきた。

「里美さんからお昼を食べて来るように言われてお金を預かっているのですが、何か食べたいものはありますか?」

「え、いや、特には…この町の事も良く知らないですから、島峰さんの好きなもので良いですよ。」

 そう言うと、桜は少し考える仕草をして。

「わかりました、少し歩きますがいいですか?」

 それを聞いて、零が頷くと、桜はまた慣れた足取りで歩き始めた。

 しかし、早い花屋に行くときより、格段に速くなっている、零を振り切ろうとしてるのではないかと思うくらいだった。

 零も今回は必至であった元々体力に自信のある方ではないうえに、リュックにはさっき調合した肥料、そしてこの桜の速度である、もはや見失わないのがギリギリである。

 やっとのことで、桜に追い付くと目の前には小汚い定食屋が立っていた。

「このお店ですか」と聞くと、「はい」といつも道理の最低限の返事が返ってきた。

 零は、この店がお勧めと聞いて、もしや本当に嫌がらせのために選んだのではないかと思ったが、物おじせずに入っていく桜に吊られて入って行った。

 中は、そこまで、汚い訳ではなく、いたって普通の大衆食堂と言った感じだった。

 桜がテーブル席に座ったので零は桜の体面に座ると、桜はぶっきらぼうに零にメニューを差し出した。

「あ、ありがとう、お勧めのメニューとかある?」

「お好きなものをどうぞ。」

「そ、そっか~、じゃあサバの味噌煮定食にしようかな。」

 そういって、桜にメニューを手渡すと、桜はメニューを見ずにメニュー立てに戻すと、

「店長、サバの味噌煮定食と豚カツ定食お願いします。」

 そう言うと、店長らしき強面の男の人が「あいよ」とだけ言うと裏の方へ消えて行った。

 しかし、さっきの島峰さんの注文の仕方といい、無表情のといい、これから、ゴングが鳴ってフードファイトでも始まるんじゃないか。。。などと零は思いながら、取り合えず話題を作るために話し出した。

「島峰さんは休みの日何してるんですか?」

「部屋にいます」

 うん、知ってる殆ど出てこないもんね。

「好きな食べ物とかありますか?」

「豚カツです」

 そうだねさっき頼んでたもんね。

「嫌いな食べ物とかありますか?」

「サバです」

 さっき僕それ頼んじゃったね。

 最早、会話と言うより、一問一答形式の尋問と成り果てた桜と零の会話は、零の心が折れることによって終結した。

 無言になった二人の間に、店長が注文を持って来た。

「あ、すいません、ありがとうございます」零がそう言うと、店長が無言でサバの味噌煮定食を置き、桜の方にも豚カツ定食を置いて無言で去ろうとする店長に桜が呼び止める。

「ちょっと待ってください。」

「なんだい。」

 ギロリと強面の店長の眼差しが桜を睨みつける。

「豚カツがいつもより、2切れ多いです。」

「サービスだ。」

「ありがとうございます。」

 その言葉を聞くと、店長は奥へと姿を消していった。

 その一連の行動を無表情で行う二人の様子は、シュールを飛び越して最早、ホラーであった。それを見ていた零が、おもむろに口を開いた。

「もしかして、島峰さんって余り感情が顔に出ないタイプですか?」

「はい」

「余り、雑談も得意では無いタイプ。」

「はい」

「ぷ、あはははははは」

 零は今までの、緊張の糸が切れた様に笑い出した。

 それを見て、桜は驚いたような不思議な様な顔で零見つめた。

「いや、すいません一応確認していいですか?僕、島峰さんに嫌われている訳じゃないんですよね。」

「はい、私は木ノ島さんを嫌ったことなんてありませんが?」

「いや、てっきり島峰さんに嫌われてるものだとばっかり。」

「そんなことはないです!!」

「この前、踏み台を持とうとしてよろけた時に、支えて睨まれたのは?」

「緊張すると、顔が強張って睨んだ様に見てしまって、すいません。」

「今日、部屋の扉を勢い良く締めたのは?」

「部屋を見られるのが恥ずかしくて、驚かせてしまったならすいません。」

「ここに来るまで、すごい速さで来たのは?」

「木ノ島さん此処の料理を食べてもらえるのが嬉しくて、つい速足になってしまって、私と里美さん意外の人と来るのが初めてではしゃいでしまいました。すいません。」

 これ以上、言うと本当に嫌われそうなので零はそれ以上の質問をするのをやめることにした。

 桜に嫌われていないことに気付いて、気が抜けた様に笑っている零を見て、今度は、不思議そうに桜が聞いてきた。

「正直、零さんの方が私を苦手とされているのだと思っていました、度々避けられている節がありましたので…、でも勘違いだったようですね。」

 零はギクリとした。

「いえ、そんな」

 元々、零は自分を嫌ってそうな人間や、自分が嫌いそうな人間に対して、関わらない、無関心と言った処世術をっ取って来ていたので、桜の避けられていると言う感覚は間違っていなかったのであろう。

 その事に、気づいた零は自分がとても卑怯な人間に思えて来た。

 さっきまでとは、打って変わって零の顔が暗くなっていくのに桜は気付く。

「大丈夫ですか?木ノ島さん顔色が悪いようですけど、私何かまた言ったしまいましたか…」

「いえ、そんなことは…」

「そうですか…」

 少しの、静寂が流れたのち、零はふと桜の顔を見た。

 桜の顔には零でも分かるくらい不安の表情が見て取れた、そして、自分がとても愚かしいことに気付いた。

 ここまで来ても、自分のことに捕らわれて、目の前の少女を不安にしていることに。

「島峰さん!!」

「はい!!」

 零は誤って声のボリュームを間違った。

「すいませんでした。僕は正直、島峰さんの事を余り仲良くなれそうな人だとは思えなくて、一方的に避けていました。今日調合室の桜さんを見て、圧倒されました、何て言っていいかわからないんですけど、すごく、貴方の事が知りたいとそう思いました。だから、友達になってください!!」

 そう言うと、零は深く頭を下げた。零にはそれ以上の言葉が思いつかなかった。

 零は不安で仕方なかった、桜は今どんな顔をしているだろう、飽きれているだろうか、それとも嫌悪の表情をしているだろうか、それはそうだ、自分から勝手に避けておいて今度は、友達になってください、だなんて虫のいい話である。

 そんな不安に、苛まれながら頭を下げていると桜の声が聞こえた。

「木ノ島さん、ここの定食どれも凄く美味しいんです。でも、里美さんがよく言ってました仲のいい人達と食べる食事が一番美味しいらしいです。だから、木ノ島さんとも美味しい食事が食べたいです。

 だから、顔を上げて、私にも少しづつで良いので、木ノ島さんの事を教えてもらえませんか?」

 桜が話し終わった後に、零がゆっくり、頭を上げると、そこには、初めて見る桜の笑顔があった。























「友達になるに当たって一つお願いしてよろしいでしょうか…」

「どうぞ、何でも言ってください。」

「あの、その、零さんとお呼びしても宜しいでしょうか…」

「か、構いませんよ、桜さん。」

「…はい」

「た、食べますか…」

「…はい」

「…」

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