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DNAジャパニーズ  作者: violet
19/22

突然変異

日本人が他民族と違うDNA、それは生命活動や容姿決定要因に関与しないDNA。

未だに人類としての必要意義が確認されていない突然変異の核酸。

それが島国の為、長い時間をかけて民族全般に広がったのであろう。

劣性遺伝なのに、何故、ここまで日本民族に広がっているのか、優性遺伝であった時代があるはずなのだ。

もしかして、今は変わってしまったRNAのような何かが関与しているのではと推測するしかない。

そして、それこそがワープシステムを通過できるDNAだとわかっている。

自分の身体で実験した開発者が日本人ではなく、他民族であったなら違っていたことは間違いない。


汎用型ワープシステムは開発され、ゲート工事も順調である今、この狂乱を私の時代で終わらせる。

倫太郎にとって、月輪が代々引き継いだ願いがある。



科学の進歩は恩恵ばかりとは限らない。

汎用型が普及すると別の事象が起こるであろう。

ケックスを手に入れれば他国の首都制圧もできる、密かにゲートを建造し、突然軍隊を送り込むのだ。

ゲートを通してミサイルを撃ち込む事もできる。

汎用型となれば、凶器を持った人間も通過できる。

ストッパーは人間の心の中にしかないのだ。

科学の進歩に人間の心は追いついているのか。





イーシャン本社に一族が集まっていた。

総会のシーズンになったのだ、今年はワープシステム参入にあたり、巨額の資金がグループ企業から捻出された為に配当を押さえ、準備金や連結勘定が大きくなっている。

リーライ・イーシャンが新株の準備をしているとの噂もあり、巨額の投資資金が集まってきている。


「ケックステクノロジーと提携を結んだというが、空港の管理がケックスに取られることになるのではないか。ワープシステムにおいて、あちらは100年の実績だ、イーシャンが対等にできる確証があるのか。

今回の投資は10億ドルを超える、いまだに代表も決まってない、どうする予定だ。」

ハオランが手に持つ端末を振りかざしながら、立ち上がる。

そこに追随したのが、リーライの姉にあたるチェンミーだ。

「私は2パーセントの株を相続している。代表の1人に名乗る権利があるわ。」


リーライが壇上の席から立ち上がる。

リーライは蛇黒を使って情報を流した。

それがここに戻ってきている、どれだけ経由して戻ってきたのだろう、楽しみで仕方ない。



それは、ハオランが誰と繋がっているかの証拠だ。

その繋がりの中に美鈴の誘拐を指示した上部組織がある、白人至上主義をあげる組織だ。

それと見せることなく、表面上は普通の人々として暮らしている、富裕層から貧困層までありとあらゆるところに。

彼等こそが日本人を蔑んでいるのだ、これを叩き潰さねば美鈴の敵を全部とれない。

彼等が協力したから鷹司と二条の警備も突破できたのだ。

鷹司か二条かの政敵がいたのだろう、それに誘導される形で犯罪は起こった。



ワープシステムを有色人種の日本人が開発したことで、彼等の危機感がたかまった。

古い選民意識を思うのは自由だが、愚かにも行動に移したのだ。

貧困国に日本人は金になると情報をながし、武器供給までした。

日本人のみがゲートを通過できることで、たくさんの日本人の収入は飛躍的に伸び、さらに貧困層との格差が生じた。

憧れや羨望は妬みと紙一重だ、貧困国の人々に武器と少しの援助を与えると日本人がターゲットになるのはすぐだった。

日本は金を取りやすい国の一つとなった。


初めは誘拐で身代金が中心だった。

ゲートを日本人しか通過できない状態が続く事で、異様な事件が増え始めた。

日本人の血を求める人々が現れ、それを供給するための誘拐に変わる。


はるか昔、日本人のDNAに起こった突然変異は、長い時を得て大きな光を浴びた、それは大きな影も作った。




美鈴、君がいない。

その影は君を巻き込んだ、君を影に引き入れた者がいる、君が戻ってくる事はないとわかっていても、止められはしない。

私の中の君はいつも笑っている、ケンカばかりだったのに。

ああ、でも10年間の君は可愛かった、私が行くと縋りついてきた。

私達には時間がなかったからね、ケンカする時間もなかった。

会えない時間は会いたい気持ちが高まるばかりで、会っている時間は愛する事に夢中だった。

私から美鈴を永遠に奪った奴を許す事などできようもない。


思い出の中の美鈴は美しすぎて、もう他の誰かに変わる事はないと、リーライ自身が知っていた。

そして、その犯罪がリーライと美鈴を再び結びつけたものであることも解っていた。


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