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DNAジャパニーズ  作者: violet
15/22

提携

事務レベル、現場レベルの会合は、世界各国で行われている。

汎用型ワープシステムの建設は一大プロジェクトである。

出発側と到着側の連携も必要であり、管制システムの構築も必要である。

そこには新規企業の創設にからんだ利潤が生まれる。

ワープゲートの建設はどんなに大きなものでもケックステクノロジー傘下の建築会社が請け負う。

箱ものは競争入札であるが、中のワープゲートは違う。

ゲートは精密機械の結晶とも言える電磁ゲートなのだ。

ただしワープゲートはデザインも何もかもが各国共通になり、かなりのパーツが秘密保持の為、建設現場ではなく、工場で生産される。



倫太郎はイーシャンマネジメント本社を訪ねていた。

「わざわざ来てもらってすまないね。」

「いえ、私もお話があったものですから。」

「ああ、娘の婚約者だ、心配はいらない。二人にしてくれるか。」

リーライが4人の秘書に席をはずさせた。

秘書の方は4年前に突然連れてきた息子に、今度は娘の婚約者だ、しかもケックステクノロジーの社長だ。驚きを隠しているのはさすがにイーシャンの社長秘書。


倫太郎が勧められたお茶に手をつける。

「いい香りですね。」

だろう、と言わんばかりにリーライが方眉をあげる。

「お話というのは?」

倫太郎の問いかけにリーライが切り返す。

「君の方は?」

「結婚式の日程です。

私達はもちろん、鷹司、二条、イーシャンでも調整が必要かと。」

「ああ!それはいい話だ。何としても調整して合わすよ。ヴァージンロードを一緒に歩くからね。」

二条聡は美鈴と一緒に歩いているから、もういいだろう。

リーライ・イーシャンの顔付きが変わる、それは獰猛な経営者の顔色である。

「こちらの話は楽しい話ではない。」


リーライがソファに深く背を預け息を吐く。

「きっと君は逃げないという確信の元に話をしている。」

「何故に?」

「君が社長就任してから、ケックステクノロジー保安部が強化され、犯人検挙率があがったからだ。

君は。」

リーライ・イーシャンはそこで言葉を止めた。

「君が、ワープシステムを憎んでいる、からだ。」

リーライを見つめる倫太郎は眼を逸らさない。


「憎んでるというのは表現ではないかな、悲しんでいる、が近い。」

貴方の方こそです、と倫太郎は問う。

「ワープシステムは人類の未来の為に必要な科学技術であったが、何故に日本人が犠牲になるのか。

優遇はされている、だが、被害が大きすぎる。

特別など必要なかった。

それとも成功するにはDNAジャパニーズが不可欠だったのか、それなら成功しなければよかったとさえ思うのです。」

倫太郎の言葉は本心だ、ケックステクノロジー社はそれで巨額の富を得ている。

染色体の中の膨大なDNAでゲノムでもなくジャパニーズと呼ばれる塩基対。


「私が憎んでいるのは、美鈴を被害者にしたことだ。

何故に私の横に美鈴がいない。」

リーライにとって大事なのは美鈴とユージン、沙羅だけである。


「私はこれから掃除をする、それにはケックスも巻き込まざるを得ない。

まず伝えておこうと思ってね。」

「巻き込まれるとは?」

「何故に美鈴が誘拐されたかということだよ。

何故、私の個人アドレスに連絡がきた?

それだけ言えばわかるだろう。」

「つまり、美鈴さんは貴方の敵対する誰かが犯人グループを使って誘拐させたと?

それを貴方はやっと駆除できると。」

「すぐに美鈴を迎え入れたかったが、こここそが危なかった、ユージンを入れる時も悩んだよ。

だが、ユージンはイーシャンの血が流れている。」

14年かかった、やっとだとリーライは言う。


リーライが浮かべる笑みに冷気を感じるようだ。

「汎用型ゲート管理システムのために新しい会社を立ち上げる。

資金は10億ドル用意した。世界規模のリクルートが始まる。

この金は蟻を集めるための蜜だ。

隠れていた巣穴からでてくるんだよ、美鈴の件で私を引きづり落とす事を失敗して隠れていた。

あっちこっちの巣穴から出てくるんだよ。

やっとだよ、やっと叩きつぶせる。

ケックスとは共同開発となっている事も多いからね、彼らも接触してくるだろう。」

「私も彼らの情報が欲しいですね。

何故に彼らは美鈴さんの誘拐を犯人達に指示できた?

ケックステクノロジー保安部が追っても掴む事ができなかったシンジケートを知っている?

純血日本人をターゲットにした犯罪組織が繋がるシンジケートがあるというのです。」


「美鈴が私に子供の事を知らせてきたはずの連絡は途切れていた。

私は、美鈴が日本で私を待っていると思っていたのだよ。」

私を道化師にした奴らを許せるはずないだろう。


「ユージン・イーシャンはイーシャングループの次期総師であると同時にヨーロッパ、東アジアを牛耳るチャイニーズマフィア、蛇黒の次代だ。そこには知られてはいけない情報も集まる。」

つまり、リーライ・イーシャン、貴方がドンなのですね。

そしてユージンもそれを覚悟していると暗に言っている。


「大分潰してやったがね、ケックス保安部が追ってたシンジケート自体が機能していないから分からないのだろう。」

「だから、美鈴さんも沙羅も売り先がなく、貴方の渡す身代金が重宝されていたと。」

リーライが方眉をあげる。

「美鈴が私の目が届かないうちに売られることのないように当然の事をしたまでだ。」


「私に接触してくる人達は怖い人のようですね。」

「そんな事ないさ、ただの欲張りで用心深い人間さ。

残念な事に、相応の能力はある。簡単にはボロをださないし、潰せない。」

純血日本人を犯罪ターゲットにする組織を潰すことができる。

日本警察も外務省も一生懸命だが、企業ならこそ動けることもある。

富裕国と貧困国の差は大きい。

貧困層の人口は増えていて、教育環境さえ揃ってないとこも多い。一攫千金を夢見て犯罪に手を染める人間は増えている。


「新たな業務提携ですね。

私達は利権が一致している。

イーシャン総師、貴方も私も美鈴さんを殺し、沙羅やユージンを苦しめた人間を許しはしないという事です。

ケックスは巻き込まれるのではない、参加するのですよ。」

「私の仕掛けた餌に大物達が喰いついている、確実に釣り上げるまで獲物に合わせて欲しい。14年で体力は落としてあるから、長い時間ではないだろう。」



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