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DNAジャパニーズ  作者: violet
13/22

家族

冷たい保管室に嗚咽が響いている。

何人かの子供は身元が確定され親子の対面になった。

生きている子も生きていない子も。


崩れかけた子供の指を握り、声もだせずに泣く両親。

せめてもと持ってきた服に着替えさせている。

「おかえり。」



倒れた母親がいた。

取り返してくれてありがとう、と礼を言った父親がいた。

今夜は一緒に寝ます、と言った父親もいた。



助けられた子供達もこれからが大変である。

身体は医学によって治療ができるが、心の傷は簡単にはいかない。

3人のうち親元に引き取られたのは1人だけだった、残りの2人は別のラボから売られてきたらしい。

2人には戸籍が作られ養子先を探すことになる。


ほとんどの場合、子供を無くした親の元に引き取られる。

子供と親双方にカウンセリングが付き、それぞれが人生をやり直すことになる。



沙羅は病室に面会にきていた、もしかして自分のいたラボから売られた子供かもしれない。

もう4年も前に崩壊したラボだが、あり得ないことではない。

この子達は自分であったかもしれない、自分が生きているのはリーライ・イーシャンの交渉術のおかげなのだ。

3人の子供は順調に回復していて許された範囲の面会も可能だった。

「美味しいケーキなのよ、もう食べれるまでに回復したと聞いたので。」

「ケーキ、そんなもの食べたことない。」

ラボで生まれ育った子供はたくさんの事を知らない。

「昨日の夕飯に小さいケーキがついてたよ。」

「あれね!美味しかった。」

ラボからきた二人が会話を始めた。

もう一人の子供は親がみつかり、別の部屋で親と一緒にいる。

沙羅が二人に言う。

「私は沙羅。あなた達と同じように、両親が誘拐されてそこで生まれたの。違法薬物をもってゲート通過しようとして保護された。両親はもういない。」

二人の表情が変わる。

「いつ出れたの?新しいお母さんができたの?怖くない?」

「おじいちゃんが見つかったの、今は一緒に暮らしている。」

沙羅がにっこり微笑んで答える。

「痛いことはしない?」

不安がいっぱいなのだろう。

沙羅が同じ境遇と聞いて親近感を持ったのかもしれない。


「怖いのね?

そうだよね、今まで痛いことがあったものね。

上手くできなかったらどうしよう、って思っている?」

沙羅の問いかけに、うん、と頷く二人。

「きっとね、新しいママも思っているよ。

上手くできなかったらどうしよう、って。

上手くできなくってもいいのよ、上手くできるってどういう事かわからないもの。」

「おねえちゃん。」

注射針の刺され過ぎで血管が固くなった細い腕が枕の下から絵を出してきた。

「昨日、ワンちゃんが来たの。かわいかった。」

描いたのと見せてくれる。

アニマルセラピーだ、二人の言葉が増えたと看護師が喜んでいた。

「すごく上手ね、看護師さんに許可とってあるから、ケーキ食べよう。」

「どうやって食べるの?」

環境のいいラボなどない、何も知らないに違いない。

「これラップっていうの、こうやって外すのよ。これは保冷剤、食べられないの。」

沙羅がお手本をしながら教える。

沙羅は母親が一緒だったので、いろんな事を教えられていたし、リーライからの差し入れもあった。

「看護師のお兄さんが教えてくれたの。」

ベッドサイドにあるボタンを操作してお茶を入れている。

「ここは毎日ご飯があるし、1日に3回もあるんだよ、すごく美味しい。ケーキも美味しいね。」

衰弱した体に負担をかけないように食事は少しづつなのに、こんなに喜んでいる。



沙羅の面会の映像は、二人の新しい親候補にも送られた。

「私、寝てばかりじゃ駄目ね。この子にいろいろ教えてあげたい。」

子供が誘拐され殺された女性が夫に笑いかけた。

何年ぶりかで笑顔を見た夫が、

「そうだね、絵本を買ってこよう。モニターよりも触れる本の方がいいだろう。」



別の家庭でも映像に食らいつくように見ていた。

「この子が弟になるの?

サッカー教えたい、試合一緒に見に行こうよ。」

「そうだね。」

目の前で妹を事故で亡くした兄が閉じこもった部屋から出てきていた。

「学校に戻るよ。いっぱい勉強して教えてあげる、この子何も知らなそうだもん。」

「ご飯一緒に食べよう。」

「手洗ってくる。」

洗面所に向う息子の背中を見つめる母親も傷は癒えていない。

でも新しい予感がする。



お互いを大事に思う気持ちがあればスタートができるのだ。

「早く会いたいね。」



「早く会いたいね。」

「すぐに会えるよ。」

「会いに行こう。」



「ママって呼んでくれるかな。」

一歩が踏み出された。







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