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撞木鮫ランポストそのニ

小さい頃は自分が世界の全てだと思ってた。今から思うとつくづく下らない幼稚な話になるけど少しだけ話をさせて下さい。

私には姉がいました。快活で物怖じせず何時も父と母を笑わせて家族を明るくしてくれた大切な人、人の間に入って接点を見つけてはくっつけてくれる、人付き合いが好きな姉でした。

しかし、父と母である夫婦の間だけはどうにもならなかった様でそれぞれの親に引き取られたからは会う機会は徐々にではありますが減ってゆき…

最近では姉はいなかった、家族構成を聞かれる時に一人っ子ですよ言う事が多い私の高校生活です。


今はともかく全知全能だったと思い込んでいた私は色んなことに手を出しました。

兎に角一つのことを感覚的に遊び半分真剣さ増し増しで成功してしまった人を見てしまったのでそれこそ「万能人でも目指すのか」って言われました、別にレオナルド・ダ・ビンチは目指していません。

とにかく質より量でした、うんと…茶道と柔道に社交ダンスを少々といった感じ…?

後はまぁ…向かないと思って早々に離脱したのもあったな〜。


学校という環境の中で「あの子の妹さん」という分かりやすい物差しは、私には大きすぎて…量を増す為に詰め込んだボロも直ぐに崩れてしまって…

「夕凪さんってお姉さんとあんまり似てないね?」

ナニソレ、私はあの人の下位互換かなんかに見えんの? それセンセイとしてどうなの?


あの人は何が楽しくてあんなにこの人は人に笑いかけるんだろうと、ずーーーっとずーーーーっと、

一晩考えても分からずに途轍もなく途方も無く近くて遠い存在だって思えた。


逃げ出したくてもすぐ側で屈託のない、裏表もない笑みを浮かべるその人を拒絶まではしないけれど劣等感にどっぷり浸かるのが嫌で振り返ってあの人の姿に怯える様になったのは多分割と最後の方だった気がします。

私の家族なのにどうしちゃったらこんな関係になるのか私自身よく分かっていなかったりするのです。

それが少しずつ変わったのは多分最近になってから、劇的ではないけど何か少し歯車の噛み合わせが変わった様な気がしてます。

気温があっち行ったりこっち行ったりするからなのでしょうか…それとも若気の至り?

始まりはこんな感じです。

「ゆうちゃん、ゆうちゃん!なんかね、今日変な人見つけた!!」


…はぁ、私の姉の話には文脈が無いのが常々ですがかれこれ二、三年連絡してない相手にそれは…どうなんですか?

流石の私も返答に困りましたので適当に「お久しぶりですね何かあったのですか」と返しました。


少し前までも「石の上にも柿八年」とか「犬も歩けば蛇を出す」全く、語彙力が底抜けて子供っぽいやり取りしてましたから心配ではあったんですけど…何があったんでしょうね、犯罪に巻き込まれなきゃいいんですけど。


返信をしていくうちに姉の言う変な人の正体は、漫画の様に海に向かって走って叫んでいた人らしい事が分かったのです。

何それこわい…すっごく変な人ですねと返信したら「その変な人と連絡先交換なう☆」とか訳のわからない返しが来ました。

何をしたらそんな展開になるのか私にはさっぱり分からなかったけど久し振りに会話をするきっかけが来たのでそこからポツポツと連絡とやりとりをする様になっています。


どうやらまた姉はその天才というか感覚派な部分を駆使しているらしく戦果を報告してきたり、旅行気分で散策してる写真を送ってきたりと楽しんでいる様子…

何なんですかねほんとに私は絶賛スランプアラレちゃんだっていうのに…そんなのってあんまりですよ。

私が凹んでいる時に限ってあの人元気溌剌オロナミン…ま、腐るのも根っこまでやられてしまっては堪りませんからこれくらいにして切り替えましょうか。


覚えている方はどうもお久しぶりです、覚えてない方は第一話へバックしてくださいな?

私です、葛西夕凪です。モノローグが長い?気のせいです、是非ここまでの文字数を数えないで下さい。意味ないですから。


さて、私は本日土曜日につきまして学校は半ドン…働き方改革から取り残された化石の様な学校なんですが本当に成績と出席日数関係無かったら絶対に行かないんですけどね…


「葛西さん今日は続きするー?」

「あぁ、ごめんなさい今日はちょっと予定あるからパスで、少し用事あるから……水曜日には下書きだすって先生に言っておいて下さい」


黒板の文字を追うのも11年目になるといい加減飽きてしまいますよ、90分2コマだなんてその様な時間があれば私にはもっと建設的な事をしますよ。ジャム瓶描いたり、りんご描いたりしたいです。もちろん鉛筆で濃淡つけて描くんですけど難しくて難しくて…


それはそれでいいんですけど、私には人に会う用事があるので一度帰宅し…ました。

「…ただいま」

日中は基本的に母は仕事なので家に帰っても誰もいないけどいいじゃない、そういう気分なので。


「洗濯物はお早めに取り込んで…お昼ご飯なんか用意…してないか、仕方ないからなんか食べに行こっと」


仕舞い込んだ羽をゆっくり伸ばして私は服を着替える。制服なんていう校則の拘束を脱ぎ捨てて早く自分の服に着替え…でもあの人制服姿しか私を見たこと無い…私服のセンスとかみる人だったら下手に服も選べないし…

あぁ水曜日までに次の作品の下絵を描かなくちゃいけない、お題は日用品、自分が普段使っているものらしい。

コンクールまでの練習作で部内コンテストを約二回開催するけどまだ題材も決まってない…どうしよう、

「うーん、やるべきことは…沢山あるけどどれから手を付けたら良いのか分かんない…」


たまにあるぼやけた半透明な灰色は多分漠然とした将来的な不安じゃなくて今この時の自分に対する意識の事だと思う。

考えたらいけない代物なのだけど、傷ついたり弱ったりするとそれ少しずつ思考の中で膨らんでいって逸らそうと他の事を考え始めた時にはもう手遅れで…

何にも手につかなくなっちゃう状況に、私はまだ相応しい表現方法をつけられないままでいた。


「さてと、制服姿がかえって見つけてもらえそうだって話はしたから…えっと集合する時間をそうすると微妙な感じに設定しちゃったなー。 でも今更集まる時間変えるのも気が引けるーー」


そんなに悩むこと無いと言えば無いんですけどなんでかなー?

結局悩まずに動くのが一番早いので集合時間の前にお茶でも飲んで軽食食べてれば良いんですよ。


私はお気に入りの白いヘッドホンと赤いエナメルの肩掛けポーチを持ってほわわんと空の家を後にするのでした。


続く

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