プラムの日向ぼっこ2
毎日同じ場所まで殆ど同じ目的でしか走っていなかった俺の自転車が久しぶりに快走していた。
本当こいつを整備したのは何年振りだったかな…
買ってから10年近くが経過しようとしているが滑り出しも良いしギアの切り替えも実に順調で小気味良い。
折角の休日だからと出掛けるのは実に有意義だとは思うんですが…まぁ、お相手がお相手なので事は慎重に運ぶべきなのは間違いない。
「吉川さーん、ボーッとしてると置いて行きますよー?」
お出かけのお相手さんがが女子高生とかこれ普通に不味い気はしてるんだよなぁ…
「目的地は伝えたあるので大丈夫だとは思いますけど何かあるのですか?」
いや、無いことは無い。 だけども君の気にする様なことじゃ無いから大丈夫。
「気にはなりますけど、余計な詮索はしないでおきますね」
そうそう、あんまり人の事を知りたがってもね。
他人は所詮他人だから距離を測る物差しは常に持っておいた方がいい。
葛西さんが指定したのはこの辺りの観光名所で有名なスポットの一つ、八幡宮にこれから向かうらしい。
ま、俺一度も来た事ないけどな!
いやいや、生活圏から微妙に外れるし知らない街の有名スポットとか知らないし行かないでしょ?
「画材も買いたいんですけどね、その前に何を描くか決めて置きたかったんです」
近くまで来たのは良いのだがここからは歩きで行くんですか葛西さん?
「そーなりますね、折角お宮さんに参拝しに行くんですから参道を歩いていきましょう」
車道の間に設けられた石畳みのの歩道が参道となっている様だ。赤く聳え立つ鳥居はそ広い参道に立っている。え、デカっ…
「観光客の方も今日はまばらですね」
まだ本格的に桜が咲くとか、紫陽花の季節じゃないから込み合っていないのかもしれませんねと葛西さんは話す。
ここから正面、視線を少し上げた先に八幡宮絵続く階段とまた鳥居が遠くの方に見える。
カシャリ
携帯のカメラのシャッター音がしたと思うと早速一枚葛西さんが写真を撮っていた。
「携帯ってよく考えると凄いですよねー、誰でも写真と動画が取れるんですから」
そもそも電話が持ち運べる様になってカメラの機能がついてまだそんなに経ってないと思うんだが…そうか、葛西さん達にとってはスマホは当たり前の時代…これがジェネレーションギャップか。
「そうですね…吉川さん、何枚か写真を撮ったら絵になりそうなものを見せますので選んでください」
俺が選ぶの⁉
「あくまで参考までにですけど、今度の絵画展のテーマが地域と郷土なので観光名所とか無難な景色を描こうかと思ってます」
地域と郷土ね…俺こっちの人間じゃないし絵とか素人なんだけど大丈夫?
「まぁ、そこはあまり考えない方向で考えてます、別に絵画展で金賞を取ろうとかそんな感じではないので」
折角絵を描くんだし絵画展で賞とかもらえるようにこう…何というか頑張ってみたりはしないのかなーって
葛西さんは少し考えてから素直に首を横に振った。
その真意についてはまた話すこととしよう、それではまた。