雪解けマグノリアその1
小さな桃色や白い花がひっそりと控えめな自己主張をしている、側から見て女子高生と話しながら歩くのは果たしてセーフなのかが心配だが俺たちはご飯屋さんを探してふらふらしているのだった。
「ご飯…どうしましょっかね?」
返答がない、先から葛西さんが黙ってるのはさっきの四択問題を俺が答えるのを待っているからだろう。ま、さっぱり分からずこうして困り果ててるわけですが…何この間。
「はい、選択問題なので番号と理由を述べてくださいね?」
葛西さんはそんな調子である。 何その記述式テストみたいなやつ、そして何故口調が柔らかくなったのかは俺にはよく分からなかった。
「あー、俺こういうのは勘で当てるタイプなんだけどな…正解は何と無く一番目ではない気がするぜ? 確か共通一次だと四択の問題はだいたい三番目の選択をするといいって昔のhow toにあったけれどまさかそんなヤマ勘で当たるわけないからねー」
さて、答えなくては始まらないようなのであるがこのままよくあるチェーン店で牛丼といういつもの休日パターンでは気乗りしないし芸がない。ここはどっか喫茶店で彼女には軽食を食べてもらって俺自身はスパゲッテぃでも良いだろう。
「それじゃぁ俺はその四択を三番目の選択を選ぶよ、勘ではなくて、あの国はなんか戦争ばっかりなイメージがある。 近代しか知らないけど」
目に見える形での殺し合いの無い今のこの国だと城なんてのは観光地か心霊スポットにしかならないしな
「そうですか、それでは三番目の答えを選んだ吉川さん…先ほどの問題の答えは…」
立ち止まって正解を待つという変に緊張感を漂わせ俺は固唾を飲んで小岩さんを見守る。
「…吉川さんお見事です、大正解!!」
なんだろう久しぶりに少しだけ嬉しい…
高校生女子に知識試されている事を除けば普通に良い事な筈なんだけどなぁ…やれやれ、最近の子は色んなことを知っているんだな。
「えっと因みになんだけど四択に正解したら何かあるの?」
「そうですね…私にお昼を食べさせるというご褒美です、後で借りにできますよ?」
またこの子はちゃっかりしてるな、問題一つで昼メシを奢らせるつもりの様だ。 やれやれ…
「その代わりと言ってはあれですけれど何でもお願いを叶えましょう、もちろん私の力の及ぶ範囲内でですけどね」
「そりゃあ魔法のランプの魔人とはいかないだろうな」「アブラカタブラ〜ですか?」
「それはフェアリーゴットマザー?」
ひゅんと指を魔法の杖代わりに振ってもカボチャは馬車には変わらないのだが彼女は気にせずに進んで行く。
「成る程、吉川さん物知りですね…あ、お昼ご飯なんですがあそこのお店はどうですか?」
いやいや、今日のやりとりだけとっても知識のある方は一目瞭然じゃないか?
彼女が指差したのは皆さんご存知かもしれないハンバーガーショップだった。
「チェーン店…個人店とかでも全然構わないしむしろそっちの方を紹介してほしいかなって思ったんだけど駄目?」
駅前の大通りから一本入った道を歩いていたのだがまさか今日の小岩さんがハンバーガーの気分だとは思わなかった。
「この周辺は飲食店に限らずモノの値段が観光地価格ですから、いくら美味しいとは言っても笊蕎麦で1200円も取られたくは無いですよね?」
笊蕎麦でそんなに高いのか…何を使えばそんな原価になるんですかね。水が違うのか、水が。
「チェーン店というのはその味を波及させ、しかも安定した供給を実現させるのは凄い…のかもしれない
からあのお店にしようか?」
小岩さんは静かに頷くと俺たちはハンバーガー店へ入るのだった。
次回へ続く